ブログサイト

ブログ

キャリアオーナーシップ経営AWARD 2026 エントリー内容の紹介 〜 AI時代にプログラマをどう育てるか

ソニックガーデンは「キャリアオーナーシップ経営 AWARD 2026」にて、中堅・中小企業の部で優秀賞を受賞しました。5月12日に東京ミッドタウン八重洲で開催された表彰式に出席してきましたので、あわせてご報告します。

このアワードは、個人の自律的な成長により企業の持続的な価値向上を目指す「キャリアオーナーシップ経営」を実践する企業を表彰するもので、ソニックガーデンは「マネジメントの変革」領域でエントリーしました。

本記事では、エントリーにあたって提出した内容をもとに、ソニックガーデンがどのような課題意識を持ち、どんな取り組みをしてきたのか、その全体像を紹介します。

背景:自律を前提とした組織が直面した課題

ソニックガーデンは創業以来、上司も部下もいない管理のないフラットな組織を運営してきました。プログラマの仕事は再現性のないクリエイティブな仕事であり、画一的な管理よりも、各自が自律して最適な手法を選択する方が生産性は高まるという考えに基づいた経営です。

一方で、この自律を前提とした環境は、経験の浅い若手にとっては「自由という名の放置」になりかねないという課題がありました。ベテランとの実力差が大きく、成長のステップが見えにくい環境では、非効率な試行錯誤を強いてしまう状況を招いていたのです。

さらに、生成AIの普及がこの課題を顕在化させています。かつて若手が実戦で基礎を身につけていた初歩的なタスクの多くがAIに代替され、現場で経験を積みながら育つ機会が社会的に減少しています。AIには代替できない高度な判断力や設計思想を持つプログラマの育成が、ますます困難になっているのです。

「いいソフトウェアを増やす」という理念を掲げるソニックガーデンにとって、この技術継承の断絶は放置できない課題でした。

コンセプト:「モダン徒弟制度」という解決策

この課題に対して、ソニックガーデンでは「徒弟制度」を現代的に再定義するというアプローチを取りました。

短期的な稼働率を追う「経済合理性」で考えれば、育成に手間をかけるより即戦力を採用する方が効率的です。しかし、理想の実現を優先する「理念合理性」に基づき、自律したエンジニアが育つ文化の継承こそが、持続的な企業価値の向上につながると考えています。

「モダン徒弟制度」では、マネジメントの役割を、人を活かす「上司」ではなく、技術と哲学を伝える「親方」に置いています。会社が成長を強制するのではなく、本人が「自ら育つ」という思想を根底に、「守破離」に基づいた成長のロードマップを構築しました。

取り組み:現場での実践と支える仕組み

エントリーでは、具体的な取り組みとして以下の3つを紹介しました。

親方と弟子の密着した現場実践と「親方ハウス」

弟子に対し、特定のベテランエンジニアを「親方」として任命します。全社フルリモートの体制下において、親方の居住地の近くに「親方ハウス(拠点)」を設け、一定期間は物理的に同じ空間で働く環境を整備しました。

対面でのペアプログラミングや日々のふりかえりを通じ、親方が弟子の振る舞いを細かく「観察」し即時フィードバックする体制を敷いています。育成で最も大事なのは「教える」ことではなく「観察する」こと。だからこそ、一緒に働ける環境が必要でした。

「キャリブレーション」による期待値のすり合わせ

現状の実力をベースに次期の役割を調整する「キャリブレーション」という仕組みを運用しています。

数値や序列で管理する評価は採用せず、不確実な「伸び代」も含めません。今できていることを認めて期待値を合意する。100点満点を目指すのではなく、各自が100%を発揮できる状態をつくるための対話です。この積み上げが若手の着実な成長と安心感を支えています。

経営層と組織による親方への支援体制

育成は正解のない高難度な仕事です。だからこそ、親方が孤立しない全社支援体制を構築しています。

経営層との定期的な「ふりかえり」による視座の共有に加え、人事が弟子のメンタルケアを並走。バックオフィスは「親方ハウス」の運営を含む事務面を全面的にバックアップしています。親方が技術と哲学の伝承に専念できるよう、組織一丸となってサポートする文化を仕組みとして定着させています。

成果:人が育ち、組織が変わった

この制度を通じて得られた成果は、当初の想定を超えるものでした。

まず、ジュニア層から、管理を必要とせず自走できる「自律型エンジニア」が複数誕生しました。以前は経験者採用に依存してきましたが、未経験からでも「型」の習得と親方の伴走によって、高難度な案件を完遂できるプロフェッショナルが育つ再現性を確認できています。

また、弟子を導く過程で、親方を務めるベテラン層にも大きな変化がありました。自身の持つ技術や判断基準を抽象化・言語化せざるを得なくなり、「技術の言語化能力」が飛躍的に向上。弟子の成長を経営的な投資対効果として捉える経験を通じて、視座が現場の一エンジニアから経営視点へと引き上がるという副次効果も生まれています。

さらに、現場での開発に強いこだわりを持っていたベテラン層が、育成を「技芸の伝承」という創造的な活動として捉え直すようになりました。マネジメントを「避けたい管理業務」ではなく、熟練者の新しいキャリアパスの一つとしてポジティブに捉える文化が醸成されつつあります。

おわりに:表彰式に出席して

管理のない組織でありながら、人を育てる仕組みをつくる。一見矛盾するようですが、「自律した個人が、それでもなお一緒に働きたいと思える場」をつくるためには、自律に至るまでの階段が必要です。モダン徒弟制度は、その階段をつくる試みです。

今回は4回目の開催で、このアワード自体がひとつの区切りを迎えることになりました。その最後の回に優秀賞をいただけたことを、素直に嬉しく思います。

       

モダン徒弟制度はまだ発展途上です。管理のない組織で、どう人を育てるか。この問いに向き合い続けることが、ソニックガーデンらしい経営だと思っています。

▶ お知らせ:「キャリアオーナーシップ経営 AWARD 2026」優秀賞(中堅・中小企業の部)を受賞しました

▶ キャリアオーナーシップ経営 AWARD 2026 公式サイト

この記事を共有する