連載 第2回「社内SNS導入の落とし穴(その2)―定量的目標の甘い罠」

前回は、社内SNSを一斉展開した失敗事例を見ながら、社内SNS導入の鍵としてボトムアップの重要性をお伝えしました。今回は社内SNS導入時に設定しがちな定量的目標の是非についてお話しします。

社内SNS導入、もう一つの落とし穴

社内SNSの失敗事例として前回は一斉展開の落とし穴についてお話ししていただきましたが、もう一つ落とし穴があるそうですね。

はい。1つ目の失敗事例でも少しお話ししましたが、社内SNSの導入に当たって定量的な目標を置いてしまう失敗があります。あるお客様で実際あったことなのですが、1年間のブログ投稿に対する「いいね」の数を1万個以上にするという目標を立てました。一つの目安としてはありですし、一定程度モチベーションも上げることもできるのですが、この目標を「必ず月に100個以上の記事を投稿する」という細かい定量目標にしてしまうと、その定量目標を達成するために、なんとか100個記事を投稿「させよう」としてしまいます。

いわゆる「させよう病」ですね。

100個投稿するという目標が本来の目的とどうつながっているかは忘れ去られ、目標が目的になってしまうのです。100個の記事を投稿させるために、今月中に1人1回日記を書きなさい、という施策をとった会社さんがありますが、結局どうなったかというと、何の思いもこもっていない、価値のない内容ばかりが投稿されました。

社内SNSの本当の目的は何か

本当の目的は、社員同士がつながるとか、その人が何を得意にしているかがわかるとか、困っていることを助け合うとか、などだったと思うのですが、そうした目的にたどり着かなくことはありませんでした。昨日のランチはカレーでした、ということでも1個です。そんな投稿ばかりが集まって、目標達成となったのですが、翌月になったら誰も何も書かなくなってしまいました。

書けと言われて書いたことで、社内SNSは命令が来たら書く場所と認識されてしまいました。そうなるとユーザは能動的に使うことがなくなります。

コマンドアンドコントロールの世界ですね。

コマンドアンドコントロールでやるなら、日報を書くのと同じことです。日報であれば社内SNSを使う必要はありません。顔写真もプロフィールもいいねボタンも一切必要ありません。メーリングリストで十分でしょう。

定量的な目標から始まる血みどろの戦い

定量的な目標を置くとどのような問題が起きますか?

定量的な目標を掲げると、ユーザはそれにとらわれてしまいます。また、経営層に対して社内SNSの効果を説明するときに、定量化のキーワードを出してしまうと、地獄のような戦いが始まってしまいます。

目的が定まっていない中で、例えば1万記事を投稿しようという目標ができてしまうと、目標数値と戦う血みどろの争いになります。利用率が80%を切ったらこのシステムは終わりだとか、昼休みに使うユーザがいたらだめただとか、という戦いにもなります。そうした戦いが定量的な目標を置くと起きてしまいます。

ちょっと利用率が落ちただけで、システムの効果は出ているのかという戦いが起きてしまいます。本来社内SNSでは、小さく起きている価値のある事象が口コミで本当は広がっていくことに価値があります。数で見るとたった1つだけじゃないかということになり、意味がないという判断をされてしまいます。

社内SNSは積み重ねが大事

1個の記事をどう見たらいいのでしょう。

数値で見てしまうと終わりです。1個の価値ある記事をどれだけ広げるか、という視点が大事です。1個でいいんです。社内SNSは積み上げなので、最初は1個の記事でも1ヵ月で10個になります。次の月に入ってきたユーザから見れば、すでに10個も素敵な記事があるという状況になります。

そこを見れば、その社内SNSは価値があるじゃないかということになります。短期で見ると1個でも、1、2年、5年で見れば10個、20個、50個になっていきます。長く使っていけば、後から入ってきたユーザにとっては見る価値が十分にあります。

短い目標を設定するのはやめたほうがいいでしょう。1年の目標はぎりぎりあってもいいかもしれませんが、3年くらいのスパンで目標を立てるのがお勧めです。

社内SNSになじまない目標管理

社内SNSは「管理」というやり方にはなじまないのですね。

営業にも言えることですが、営業マンに「今月必ず3件商談を取ってこい」と命令すると、自分のために無茶をし始めます。いいから買ってくれと無理な交渉をします。ある本で読んだのですが、5000円自分の財布から出すから、頼むから1万円の商品を買ってくれということまでしかねません。

長期的に見るとそのお客さんとの関係はそこで終わってしまい、もともとやりたかった大きな商談や信頼関係は崩れてしまいます。

定量的な目標を置いたほうがいいこともあるのですが、そもそも社内SNSは社内の人脈を広げたり信頼関係を作って協力し合うという、長い時間のかかることを目的にしています。そこに短期的な定量的な目標を置いて管理すると、完全にちぐはぐになってしまいます。「今月の投稿は100個」というような目標管理はやめたほうがいいというのが私の経験です。

社内SNSの効果の見方

社内SNSで価値を生みたければ、どんな記事が投稿されているか、普段発言しない人が書いてくれた、といった質的な面に目を向けるべきなのですね。

そうです。小さな出来事1つ1つに目を配っていくとよいと思います。

どうもありがとうございました。

まとめ

  • 社内SNSは量で計るな、質を見よ!
  • 小さな出来事1つ1つに目を配ろう!

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