第5回「社内SNS最初の一歩―運営事務局のメンバー選定の秘訣」

今日は社内SNSのコアメンバー選定の秘訣をご紹介します。2005年、2006年当時、社内SNSは社内mixiと呼ばれていました。公に予算を確保して組織的に社内SNSを運営することは難しく、必然的に草の根・ボトムアップ的な運営にならざるを得ない状況でした。

とはいえ、結果的に見ると、草の根・ボトムアップで社内SNSを進めた会社のほうがうまくいったという事実があります。

意外な結果ですね。詳しくお話をお願いします。

社内SNSが少しずつトップダウンに

2009年、20010年くらいから少しずつ社内SNSがトップダウン・組織主導で導入されるようになってきました。中心となったのは、情報システム部門や広報部です。予算も出て組織的な運営もできて業務時間中に社内SNSを運営できるという一見理想的な環境なのですが、なかなかうまくいかないという問題が出てきました。 こうした歴史を踏まえて見ると、社内SNSの導入の成功と失敗の分かれ目になるのが、コアメンバーの選定です。

最初が肝心ということですね。

はい。実は、失敗への道を歩みやすいコアメンバー構成があります。そこをお伝えしたいと思います。

ボトムアップ型、トップダウン型、ハイブリッド型、成功しやすいのはどれ?

社内SNSの運営メンバー構成には大きく分けて、ボトムアップ型とトップダウン型の2種類があります。そして、ハイブリッド版として3つめがあります。

ボトムアップ型

まず、成功しやすいと言われているボトムアップ型のコアメンバー構成です。ボトムアップ型のメンバーには運営に対する情熱、思いがあり、本人たちがやりたくてやっているというのが特徴です。また、メンバー構成が多様になる傾向もあります。経営企画部のような部門が主導で行うよりもボトムアップで行ったほうが、人事、総務、現場、経営など様々な部門から意欲のある人が入ってきます。そうしてできた運営メンバーそのものが、小さな社内SNSのような性質を持つようになります。

多様性は非常に重要です。半業務・半プライベートで社内SNSを運営する会社があります。現場、人事、経理、総務の各部門の多様なメンバーから運営メンバーが構成されていて、皆やりたくてやっているという特徴がありました。

「やらされ病」に陥るのが一番良くないケースですが、コアメンバーも「やらされている」ことがよくあります。上に言われたからという意識でいると、やらされ的な運営、マニュアル的な運営になります。ユーザーから問い合わせがあっても事務的に回答するだけ、といったことになります。

情熱を持った運営メンバーだと、問い合わせの理由を聞いたり、実際に会いに行ったりと、問い合わせを社内SNS普及のチャンスと考え、そこで人脈を作り、その人脈を社内SNSに乗せていこうとします。社内SNS運営が業務になってしまうと、オンラインですべて完結させよう、業務効率を上げようとして、問い合わせがあっても素っ気ない対応をしがちになります。こうした消極的な運営をしていると、運営する側と使う側の意識が離れていきます。たとえユーザーが会社を良くしよういう思いを持っていても、運営側の意識を上回ってコンフリクトを起こしてしまいます。

ボトムアップで運営をしていると、運営側とユーザーが同じ目標を持つ仲間になります(運営側はユーザーよりちょっと前に進んでいるかもしれませんが)。仲間になると、ユーザーも自分たちが社内SNSを育てていかなければいけないという意識を持ってくれます。パッションとミッションが同時に存在する状況になります。

反面、ボトムアップで社内SNSをスタートすると予算がないので、オープンソースのツールを使って運営を始めることになり、データが喪失しないか、セキュリティはどうか、情報漏洩の危険はないか、管理者は誰か、社外にアクセスしていいのか、といったことが気になります。

クラウドサービスを使うのが運用上難しい場合、自社サーバを立てることになると思いますが、自社サーバを立てられる会社はIT系やメーカーの情報部門など技術力があるところに限られてしまいます。技術力が十分にない会社がゲリラ的に社内SNSを始めるのは困難なのが実際です。

トップダウン型

トップダウンで社内SNSをスタートする場合は、予算を確保しやすく、承認も取りやすく、経営の協力も得られやすくなります。その反面、ユーザーの情熱は必ずしも伴いません。人事部が担当するとしたら、人事部主導の社内SNSになりがちです。

人事部が主導したら、社内SNSでの活動を査定されるんじゃないかと勘ぐられるかもしれません。そうなってしまうと、誰も怖くて社内SNSを使えなくなります。

ハイブリッド型へ

現在社内SNSをうまく使いこなしているパターンは、ハイブリッド型です。予算や承認についてはトップダウン型、コアメンバーの構成はボトムアップでというスタイルです。コアメンバーは半業務の活動として募ります。

ベストなのは社内改善活動、例えばオフィスの周りの掃除やボランティア活動などの中に、社内コミュニケーション改善業務として社内SNSを導入していくことです。システム運用は情報システム部が人と予算を出して行いますが、中身の運営はいろいろな部門の人が集まってやります。コアメンバーはお金や稟議、システムの心配をすることなく、どう場を盛り上げるか、どうユーザーと接するか、どう社内SNSを支えるかということに集中できるようになります。

ハイブリッド型のポイント

こうしたチームを最初にうまく作れるといいのですが、ここにジレンマがあります。そもそも社長が社内SNSを作れと言った段階で、例えばそれを情報システム部が受けたとして、そのミッションをボトムアップで共有することはもはや無理ということです。

ですから、社内にQC活動のような半業務の制度があれば、そこに社内SNSの運営を乗せていくことを模索するとよいでしょう。いきなり多くを求めるのではなく、とりあえず次回の活動のひとつとして社内SNSの運営を乗せてみて、そこに集まった人にコアメンバーを打診してみてはいかがでしょうか。 そこで引き受けてくれたメンバーは、必ず社内SNSを積極的に使ってくれます。そのメンバーを情報システム部がバックアップすればよいのです。費用はクラウドサービスを使えば少額ですから、情報システム部が負担し、仲間作りをコアメンバーにお願いするのです。

そうすると非常にきれいに社内SNSをスタートすることができます。ユーザーと近い関係ができ、システムもしっかりしている、これが社内SNSが公認の活動として認識され始めた今の時代のハイブリッドな運営組織の作り方です。

社内SNSが出始めたころがゲリラの時代だとすれば、次の時代が組織の時代、そして今はハイブリッドの時代に来ていると言えます。

情報システム部が何でもやる必要はないのですね。サポートに徹するというのが新鮮です。

半業務活動をしているメンバーを社内SNSのコアメンバーにできると運営がスムーズになります。後からコアメンバーを構成し直すことはできませんので、最初にコアメンバーの作り方をよく検討するとよいでしょう。

多様性をどう確保するか

先ほど多様性というキーワードがありましたが、具体的にはどんなことに注意したらいいですか。

人事だけでなく、総務や現場の人がいること、あと営業の人がいることです。社内SNSにはよく交通費の清算のような問い合わせがきます。そういうときに人事部だけだと正面からの回答しかできません。

そこに現場の人がいると、現場側の意見をうまくとりまとめてくれます。総務は総務の観点をとりまとめ、そのうえで人事に問い合わせを振ることができます。「我々はこう考えていますが、どうでしたっけ、人事部の○×さん?」というように。そのように振られると、人事部の○×さんも問い合わせに答えやすくなります。 法務系の話題もよく社内SNSに出てきますので、法務系の人もいるとよいでしょう。

社内SNSで実現できるのは、「現場対総務のやつら」という関係ではなく、「私と総務の○×」さんと呼べる関係です。こうした関係を部署を越えて作れるといいですね。

多様性とやる気、どちらが大事?

多様性とやる気のどちらが大事ですか?

コアメンバーの選定の目的は多様性ではありません。やる気が最優先です。多様性のために各部門から1名ピックアップしようとしても失敗します。機械的にやるとやら失敗します。やる気を最優先にしてください。その次に、多様性を確保できるようにいろいろな部門に声をかけます。

やる気のある人は、人事部、総務部、経理部、情システム部、いろいろなところにいるものです。そういう人を選んでいくとよいです。

役割分担はするかしないか

コアメンバーの役割分担はあったほうがよいのでしょうか。

役割分担はお勧めしません。コミュニケーションでカバーしましょう。コアメンバー自身で、誰が何をするかは、密なコミュニケーションを社内SNSでとりつつ、状況次第で決めていきます。

構成メンバーが10人くらいいて、密にコミュニケーションでお互いをカバーし合っているなら、それがまさに社内SNSの本来の姿です。

そもそも、いろいろな業務の間に落ちてしまっているものを何とかするのが社内SNSなので、その中に杓子定規を持ち込むとまたこぼれてしまいます。柔軟にコミュニケーションでカバーしていきましょう。

定期的にオフラインで会って親交を深めて助け合うなど、チームとして運営するというのが大原則です。


 インタビュアー/ライティング: 株式会社マナスリンク

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