「AnkiBlank」ができるまで【その2】~プロダクトオーナに求められる資質と、一度も会わずに複数拠点開発を実現したノウハウとは~ 2012年12月06日
本連載では、「納品のない受託開発」の成功例の一つである「AnkiBlank」の開発の経緯と、リリースまでの振り返りを発注元でありプロダクトオーナーの「ダヴィンチウェア」氏とソニックガーデンCEOの倉貫氏、プログラマーの西見氏の3名の対談形式でお送り致します。
本連載は全3回の予定です。
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【その2】プロダクトオーナに求められる資質と、一度も会わずに複数拠点開発を実現したノウハウとは
縁がつないだプロジェクトが始まり、ダビンチさんはソニックガーデンのオフィスを度々訪れることになります。
ミーティングが楽しみな関係
ダビンチ氏:思ったより大規模開発になりまして、ただ終わってみれば本当に、さしたるハードルもなくリリースまで行けたという。その辺を今日は逆に聞きたかったんですけれども、ソニックガーデン的に今回の開発でこのようにスムーズにローンチまで行くというのは、何かノウハウがあったのか?それとも、さっきの縁じゃないですけれども相性的なところもあったのか?
倉貫氏:その辺はどうですか、西見さんは?
西見氏:基本的に相性が良かったと思います(笑)。
ダビンチ氏:ああ、そうですか(笑)。
倉貫氏:仲良しだね、仲良しになれたね。
西見氏:そうですね。
倉貫氏:ダビンチさんと西見さんはすごく仲良しなんだよね。
西見氏:そうですね。
ダビンチ氏:なるほど。大事ですよね、相性って。
西見氏:相性が良かったし、あまり開発で詰まるところがなかったなという印象があって。毎週打ち合わせて、Pivotal Tracker * でチケットを追加して、それを確認してというサイクルで回していたんですけれども、その開発スピード自体も遅いとか速いとか…速かったらいいかなと思っていたんですけど(笑)、問題にならなかったし。あと品質的にも、ちょっと引き継いできたところがあるんですけれども、ちゃんとリリースできるまで担保できて、そこら辺の段取りも良かったですね。
*プロダクトオーナーとプログラマで要件を共有して管理するためのツール。 http://www.pivotaltracker.com/
ダビンチ氏:ほんと相性と楽しさがやっぱり個人的にはありましたね。だから毎週水曜日にミーティングしていましたけれども、本当に冗談抜きに楽しみな曜日というか。
倉貫氏:毎週水曜日に、ちゃんと手土産をね(笑)。
ダビンチ氏:それくらいしか、僕できなかったんで(笑)。
倉貫氏:レッドブル的なものを持って来ていただいて。
西見氏:大変助かりました(笑)。
倉貫氏:馬力入ったね(笑)。
ダビンチ氏:ほんとは麦のジュースを持ってきたかったんですけれども(笑)。ほんと楽しくできて。チケットの発行という話もあったんですけれども、あれも僕は夜にこちらの仕事をするので、パソコンを立ち上げてチケットを確認して、実際にできているものを確認する作業、それ自体も楽しさが…1つずつチケットがはけていくあの感覚が、なんかすごい楽しかったなというのがありますね。
「自分が使う」が仕様の基準になる
倉貫氏:ソニックガーデンで言うとアジャイルっていう言葉を使うんですが、そのアジャイルのプロダクトオーナーっておそらく生まれて初めてなんじゃないかと思うんですけれども、
ダビンチ氏:そうですね。
倉貫氏:そういうプロダクトオーナーをしてみて、どういう感想を持たれましたか?
ダビンチ氏:そうですね。「アジャイルの」っていうところが、あまり私は開発手法とか興味がなくて、本当にものが、いいものができればいいと。そこにいたる道っていうのは、今まではあんまり興味がなかったんですけれども、今回やらせてもらって、その動くものを常に確認し合いながら進めていくという手法自体は、すごい勉強になったなと思って。実際に昼のお仕事にもそういったエッセンスを投入したりして、昼、夜、すごいレベルが上がったというか、非常に勉強させていただきました。逆に、本当にお金を払う…すごい研修だったので。
倉貫氏:僕らとしては、やっぱり動くもので見ていただいて確認をしていただいてというサイクルが、実は僕ら自身は社内では私がプロダクトオーナーをしたりするんですが、結構楽しいんですね。
ダビンチ氏:うん。
倉貫氏:プログラマーとキャッチボールをしながら、動くものでキャッチボールをする楽しさって、私たちのお客さんにもプロダクトオーナーの方々にちゃんと伝わっていたらいいなと思っていて。その辺が今回伝わったとしたら嬉しいなという感じがしますね。
ダビンチ氏:かなり伝わりましたね。本当に育てる喜びっていうんですかね。システムが徐々にできあがっていくという、本当にそういう育てる喜びがありましたね、まさに。
倉貫氏:西見さんからすると、プロダクトオーナーぶりはどうでしたか、ダビンチさんの?
西見氏:素晴らしいですね。
ダビンチ氏:ははは、何も出ないですよ(笑)。
倉貫氏:どの辺が素晴らしいですか?
西見氏:そうですね。プロダクトオーナーのすごく重要な役割として「仕様に責任を持つ」という、そういう重要なものがあるんですね。
倉貫氏:最終的に迷ったときに「どちらにするべきか」というのを、
西見氏:そう、スパッと決めていく。やっぱりそれに向かってプログラマーは走っていくので、迷いがあったりすると、ちょっと停滞しちゃうとかあるんですけれども。今回、責任を持つと言うと変ですけれども、スパッ、スパッと決めていただいたところもあって、すごい進めやすかったなというのはありますね。
倉貫氏:そうですよね。映画監督というかプロダクトオーナーなので、どっちが正解って世の中誰も分からない中で、プログラマーとしては誰かがちゃんと決めないと進めないんですよね。
西見氏:そうですよね。
ダビンチ氏:そこが、やっぱりさっき冒頭に言った「自分が欲しいものを作る」というところの強みで、自分で決められるんですよね。基準があるから。俺が使う…
倉貫氏:最終的に迷ったときには、もう「自分が使いたいか、使いたくないか」。
ダビンチ氏:そう。だから、人が使うであろうシステムを作るとそこがすごく難しいところで、やっぱり迷っちゃうんです。
倉貫氏:「誰かのために」ってなっちゃいますからね。
ダビンチ氏:自分が決められない。そこが1つ、自分が使うものを作るというところの強みであるし。
倉貫氏:もしかしたらプロダクトオーナーは、自分が使いたいものとか自分が好きなものをやっている人じゃないとプロダクトオーナーにはなれないのかもしれないですね。
ダビンチ氏:そうですね。そういう人にやらせるべきなのかもしれないですね。
システムとともに自分自身も成長
倉貫氏:先ほど出てきたモトさんと、iPhoneアプリとの連携というのはどうだったんですか?お二人で多分コラボしながらされていたと思うんですが…
ダビンチ氏:そこが結構、最初はどうかなと。そのつなぎの部分がどうかなというのがあったんですけれども、僕ができることは両者の橋渡しみたいなところだったんですけれども。1つ動くものが仕様と言っても、やっぱりインターフェースの部分というのは1つドキュメントを作って、Googleスプレッドシートで共有して、本当にあれも良かったですね。
倉貫氏:そこは、どういうノウハウだったんですか?
西見氏:そうですね。インターフェースなので、どうしてもドキュメントにしないと見える化ができないところなので、それをベースにモトさんとコミュニケーションを取っていくと。
倉貫氏:会ったこともないのに。
西見氏:会ったこともないのに(笑)。それをベースに…それがむしろモトさん(笑)。
倉貫氏:自分たちにとっては、そのドキュメントがモトさんに見えちゃう。向こうからしてもそう見えるみたいな。
ダビンチ氏:そうですね。
西見氏:話す、唯一の言語みたいな感じで。アジャイル開発ではテスト駆動開発って言いますけれども、そのインターフェースを全部テストにして、これでもう絶対に確認ができるという状態にして開発を進めていったので、そのインターフェースのところの不具合というのは極少に抑えられたかなと思います。
ダビンチ氏:本当になかったですね。何か変更するたびに、やっぱりウェブ側もすぐ対応されるし、モトさん側もすぐに対応してテストフライトというツールに乗っけて、またこちらのウェブ側にモジュールにのっけて、すぐ動くかどうか。
倉貫氏:結構スピード感が良かったんですね。
ダビンチ氏:かなり良かったですよね。
倉貫氏:開発中は、実は相性が良く、スピード感も良く、iPhoneアプリ側とも上手く連携できて?
西見氏:そうですね。
倉貫氏:あえて2人で反省するとしたら何かありますか?3カ月ぐらい一緒に開発をじっくりやった時間というと。
ダビンチ氏:私は個人的には2つあって、1つは残業を毎週水曜日にさせてしまったと。
倉貫氏:残業しないソニックガーデンが(笑)。
ダビンチ氏:そうそう。残業しないソニックガーデンに残業をさせてしまったというのが1つですね。あと、もう1個は開発の過程、さっき育てるっていう話があったんですけれども、育っていく過程を観察日記じゃないですけれどもアウトプットしておけば良かったなというのがあって。自分自身の成長と、さっきのアジャイルの…
倉貫氏:気付きと。
ダビンチ氏:気付きとか、自分自身の成長とシステムの成長、これを逐次アウトプットしておけば良かったのかなというのがあって、そこがちょっと反省点ですね。
倉貫氏:残業というか夜しか活動できないので苦戦していましたけれども、その辺はまあそんなに?
ダビンチ氏:大丈夫でした?
倉貫氏:どうでしたか?
西見氏:そうですね。最期の大詰めのところは結構残業したかなと(笑)。
ダビンチ氏:やっぱり(笑)。
西見氏:残業しました。
倉貫氏:レッドブルで乗り切ったという?
西見氏:まあ、しゃーないよなという(笑)。
ダビンチ氏:ああ、レッドブルも持って行った…かな。
プロダクトオーナーになったことで自分自身も成長できたと語るダビンチさん。
次回最終回はローンチまでとこれからのプロダクトについてお伝えします。



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