「AnkiBlank」ができるまで【その3】~「作ること」から「リリースすること」の最後の数パーセントのとてつもなく大きな壁を超えて~
本連載では、「納品のない受託開発」の成功例の一つである「AnkiBlank」の開発の経緯と、リリースまでの振り返りを発注元でありプロダクトオーナーの「ダヴィンチウェア」氏とソニックガーデンCEOの倉貫氏、プログラマーの西見氏の3名の対談形式でお送り致します。
本連載は全3回の予定です。
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【その3】「作ること」から「リリースすること」の最後の数パーセントのとてつもなく大きな壁を超えて
縁がつないだプロジェクトが始まり、ダビンチさんはソニックガーデンのオフィスを度々訪れることになります。
製品化とは「最後の数パーセントを詰め切る」こと
倉貫氏:最後のローンチ…僕のメモだとローンチは4月ということになっていますけれども、ローンチのぎりぎりまでちょっと苦労したとかありますか?
ダビンチ氏:そうですね。ローンチは、今回はウェブ側もということで、私にとっては非常に大きなものだったので、やっぱり「作る」と「リリースする」とは実は全然隔たりがあると思っていて、ウェブサイトのプロモーションサイトもそうだし、画面のデザイン、1ドット単位で調整とかもそうですけれども、リリースするまでは、そこまでは詰め切れないとリリースできなくて。モノはできているんだけれどもリリースできない、そういう苦しさというか。でも、そこの最後の数パーセントを詰め切るという大事さ、それをすごい意識しました。
倉貫氏:そこは結構こだわりがあるというか?
ダビンチ氏:こだわりというか…
倉貫氏:さっきの「数パーセントを詰め切る」というのが。
ダビンチ氏:そうそう、そこがやっぱり人に使ってもらうというのが、そこがないと単なる自己満足なリリースになってしまうので、そこは意識してやるようにしました。
倉貫氏:「製品」にするというところが、その山を超えるということですね。
ダビンチ氏:「製品化」というところ、そうですね。
倉貫氏:「趣味で作るんじゃないよ」と。
ダビンチ氏:そういうことです。
倉貫氏:そうですか。そして、ちょっと追い込みがあって、
ダビンチ氏:追い込みもあり。
倉貫氏:そして晴れてリリースができた、と。
ダビンチ氏:しましたね。
倉貫氏:iTunes Storeに並びましたね。
ダビンチ氏:はい。リリースの儀をしましたね。
西見氏:しました。
ダビンチ氏:あれも水曜日にやっていたようですけれども。
西見氏:そうですね。
ダビンチ氏:シャンパンを買っていこうかなと思っていたんですけれども(笑)。
西見氏:(笑)
ダビンチ氏:飲み会はさせていただきました。やっぱり嬉しかったのが「打ち上げをしましょう」と提案をいただいたというのが、非常にプロダクトオーナー冥利に尽きる。私から言いたかったんですけれども、どうかなという遠慮もちょっとあったんですけれども…プログラマーの方から言っていただけたというのがすごい嬉しかったです。
倉貫氏:それは西見さんのほうは何気なくですか?それとも万を持しての感じで?
西見氏:「リリースと言ったら打ち上げでしょう」と(笑)。
倉貫氏:行きたかったの(笑)?
西見氏:結構、そんな意味はなくて。ただ、行きたかったんです、実はね。
ダビンチ氏:すごい感動していたのに(笑)。
西見氏:はい、感動していたというのに。
ダビンチ氏:飲みたかっただけ?
倉貫氏:「行きましょう、行きましょう」みたいな(笑)。実は飲み会好きでね。
西見氏:そうですね。
倉貫氏:それ以外にも、しょっちゅう飲みに行っている仲ですね?
ダビンチ氏:そうですね。実は酒好きだった。
対応の早さも好評価
倉貫氏:4月にローンチしてiTunes Storeに並んで、それからの反響だったりとかはどうでしたか?
ダビンチ氏:そうですね。おかげさまでランキングが教育カテゴリーの有償ランキングで6位までいきまして。
倉貫氏:おお、すばらしい。
ダビンチ氏:それも、やっぱり要因としては、品質が非常によろしくて、本当はちょっと心配はしていたんですけれども。やっぱりテストで出し切れない、やっぱりなんかバグとかがどうかなと思ったんですけれども、問い合わせはゼロに近い。1件だけ途中でありましたけれどね。
倉貫氏:ああ、あったんですね。
ダビンチ氏:はい。それもすぐに西見さんにちょちょっと修正いただけて、逆にそれが好評価につながって五つ星をもらっちゃったんです。
倉貫氏:なるほど。ユーザーからすると、
ダビンチ氏:嬉しいですよね。
倉貫氏:「これはちょっと…」って言ったら、それをすぐに直してもらえる。
ダビンチ氏:そうです。その速さがすごい好評価につながっている。あとはマーケティングもいろいろと協力いただきまして、なんとソニックガーデンさんのトップページにリンクをいただきまして。本当はいくらかかるんですか(笑)?
倉貫氏:あそこは広告枠じゃないんで(笑)。
ダビンチ氏:ああ、そうか。売りものじゃなかった。
倉貫氏:あと僕のブログにも置いてますからね(笑)。
ダビンチ氏:そうそう。あれも、ちょっと2つ目の感動でした。「ああ、ありがたいな」と。あと先ほど言ったITメディアのほう。
倉貫氏:はい、メディアのほうでね。
ダビンチ氏:開発日記という感じで出してもらって。あれも今回の僕の目標の1つで、この案件が事例になって世に出ればいいなっていうのが一つあったので、あれもすごく嬉しかったですね。
倉貫氏:あの記事を書いたのは、書いたことによって自分的にはどうでしたか?
西見氏:そうですね。
倉貫氏:書く機会を、このダビンチさんと一緒にやれたというのがあって書けたというのがあるんですけれども。
西見氏:自分の中で、ソニックガーデンに入ってそのときはまだ半年…それぐらいの時期だったので。
ダビンチ氏:ああ、そうなんですね。
西見氏:ちょうどやり方というのが自分の中で整理できて、すごい良かったなと。それを元にまた次の仕事とか、そこに活かせていけたので、非常にいい経験だったなと思っております。
ダビンチ氏:結構、大変だよね。
倉貫氏:あとは記事を書きたいって言っていたからね。
ダビンチ氏:ああ。
西見氏:ポンといい機会をもらって。
倉貫氏:今回これも縁で、『AnkiBlank』リリースをして、彼と話をしたときに「僕は記事を書いたり、将来本を書きたい」っていう話をしていて、その1週間後ぐらいに、たまたま僕に会いに来てくれた編集の、久しぶりに挨拶に来ていただいた方が、「記事、書きませんか?」って。もう「じゃあここで」みたいな(笑)、「書きますよ」っていうので、とんとん拍子で決まったという。
ダビンチ氏:タイミングね。
倉貫氏:ですね。
好きだからこそ欲しいアプリ
ダビンチ氏:自分で引き寄せる。それを引き寄せる力というか。
倉貫氏:でも、それもアンテナだったり、自分たちがそういう姿勢を持っていないと引き寄せることもないし、見つけることも多分ないというのがあると思うので、そういう姿勢はあったほうがいいと思いますね。その『AnkiBlank』、最後に今後どういうことを考えてらっしゃるのかというところをお聞かせいただきたいのですが。
ダビンチ氏:今後はユーザーさんの声も出てきていますので、少しずつ改善していきたいなというのが1つですね。で、ウェブ側を中心的にやりたいんですけれども、やっぱり一番やりたいのは「問題を共有して」みたいなところをやりたいなと。ユーザー間で、ですね。例えば、学生さんの期末テスト対策みたいな、非常にニッチでかつ揮発性のあるというか、鮮度が…
倉貫氏:その学期末しか使わない?
ダビンチ氏:そう。鮮度が高くなきゃ意味がないみたいな。要は参考書メーカーが出せないような問題、そういうのをみんなでシェアできるような仕組みがあると面白いかなというのがあって。その辺の問題を共有する仕組みを、ぜひお願いしたいなというところですね。
倉貫氏:そういうふうな感じで、今後徐々にユーザーのユースケースというか使う場面を増やしていくような改善をして、多くの方に使っていただきたいという感じですね。
ダビンチ氏:そうですね。
倉貫氏:この2人が途中で相性が実は良かったといったこともあったり、話をしたんですが、打ち上げでやっぱり2人とも飲みに行くのが大好きだっていうので、新しいプロジェクトを始めたというのを聞いているんですが。
ダビンチ氏:聞きましたか(笑)。
倉貫氏:最後、そのプロジェクトはこれから何が始まるのかを。
ダビンチ氏:ははは(笑)
倉貫氏:ダビンチ先生、西見先生の次回作を、ちょっとだけヒントをいただいて今日は終わりたいなと思うんですが、どういったものをやろうと考えてらっしゃるんですか?
ダビンチ氏:飲んでるときにまさに思いついたというか。アプリでお酒ログ、飲んでおいしいなと思ったお酒って結局次の朝になると忘れちゃうと思うんですけれども、それを簡単に記録できて、また次に飲みに行ったときにそのお酒の銘柄を思い出すことができる、そんなアプリを今作ろうと思っています。
倉貫氏:なるほど。酒好きのためのアプリ。
ダビンチ氏:そうです。酒もそうなんですけれども、その中でも日本酒というところをターゲットにしています。
倉貫氏:なるほど。お二人、日本酒好きということで、また意気投合したと?
ダビンチ氏:そうですね。ぜひこれは育てたいですね。
西見氏:そうですね。鋭意開発中ということで。
ダビンチ氏:はい。
倉貫氏:じゃあ今日はこの辺にして、この後また?
ダビンチ氏:行きますか?
倉貫氏:飲みに行くと。
ダビンチ氏:はい(笑)。
倉貫氏:そういうことで終わりたいと思います(笑)。ありがとうございました。
ダビンチ氏:はい。どうもありがとうございます。
西見氏:ありがとうございました。
今回の対談のテーマとなったアプリAnkiBlankは こちら