仕事・恋愛・結婚・家族の悩み…プロとの電話カウンセリングで道が拓ける!【前編】
今回は、「
ボイスマルシェ
」というカウンセラーとユーザーのマッチングサービスを展開されている
株式会社バーニャカウダ
の古川さんと菅野さんをお迎えしました。以前のシステムからのリプレイスにあたり、「納品のない受託開発」を担当した野上、松村と共に開発の様子を伺いました。
自分たちの体験と課題感から始まった
倉貫氏
今回の事例対談では、カウンセラーに電話相談できる「ボイスマルシェ」を展開されていらっしゃる株式会社バーニャカウダのお二人にお越し頂きました。ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
古川氏
よろしくお願いします。
菅野氏
よろしくお願いします。
倉貫氏
まずはじめに、バーニャカウダさんはボイスマルシェというサービスを展開されていらっしゃいますが、そのボイスマルシェについてご紹介をお願いします。
菅野氏
ボイスマルシェは、専門のカウンセラーさんと悩んでいるユーザーをつなぐマッチングのプラットフォームです。
構想自体は2009年頃からスタートしましたが、今とは少し違うサービスの検討をしていました。
倉貫氏
当時、お二人は会社員だったのですか?
菅野氏
そうです。二人ともリクルートにいましたが、部署も職種も違うので、お互い一緒に働いたことはありませんでした。古川と知り合ったのは、2009年にリクルートの社内研修で同じ机に座ったことがきっかけで。
当時、私はリクルート内で新規事業の立ち上げを担当しており、古川が「事業立ち上げの話を聞きたい」と話しかけてきたのが縁です。その頃、古川は別のパートナーと起業を計画していましたが、その方が体調を崩し、計画が頓挫していると聞きました。そこで、「パートナーが戻ってくるまで少し手伝おうか?」という形で始まりました。
古川氏
当時は、占いの電話相談のような感じを考えていました。
そこで、占いに行く女の子たちに、「なんで占いに行くんですか?友達も多いし、充実した生活をされていますよね?」と聞いてみたら、悩みの相談先がないことが分かってきたんです。
「自分の悩んでいることに対して客観的に回答してくれる人が世の中に少ないので、占いに行っています」という意見がいくつも集まり、ならば、占いじゃなくてもいいよねという発想が生まれました。
専門のカウンセラーと悩んでいるユーザーをつなぐ
菅野氏
専門家であるカウンセラーとかファイナンシャルプランナーとかコーチの方と、悩んでいる人を繋ぐプラットフォームを、リクルートで学んできたようなことを生かして起業できるんじゃないかなと思ったのが始まりです。
倉貫氏
なるほど。ではそのプラットフォームの中身について、もう少し詳しくお話をお伺いしたいです。相談相手とつながる場をインターネットで提供されているということですが、ユーザーさんは、インターネットを介してカウンセラーさんと直接話ができるんですか?
菅野氏
そうです。
機能としては、インターネットを介して希望する相談員さん・カウンセラーさんの予約を取ることができます。その後、相談員さん・カウンセラーさんが登録してある電話番号に匿名で電話をつなぐシステムを介して、通話が成立するような仕組みを作っています。
倉貫氏
それって、
お互いの電話番号を知らなくても話ができるんですか?
菅野氏
そうですね。
そこがこのサービスの特徴でもあるんです。
倉貫氏
それは安心ですね。ボイスマルシェには、そのような相談に乗ってくれる相談員さん・カウンセラーさんが、たくさん登録されているということですか?
菅野氏
そうですね。
現在100名を超えました。
倉貫氏
100名もいらっしゃるんですね!専門はいろいろあるんですか?
菅野氏
はい。
いわゆるキャリアカウンセラー、「キャリアの相談に乗ります」「転職の相談にのります」という方もいらっしゃいますし。あとは、コーチングのコーチの方もいらっしゃいます。
菅野氏
テーマは、仕事や恋愛、子育てなど様々です。また、
お金の相談でファイナンシャルプランナーさん、メンタル的な相談で心理カウンセラーさんがいらっしゃいます。
現在テーマとしては5つあります。1番目は仕事・キャリア、2番目が恋愛・結婚、3番目がメンタルヘルス、4つ目が子育てと家族、5個目がお金・生活全般です。
すべて、女性専用のご自宅カウンセリングです。
人生で色々変化する女性たちに、シーンに応じたカウンセラーを
倉貫氏
完全にターゲットは女性のみですか?
古川氏
はい。
女性で20歳以上。自分で責任を持ってお金を払える人を対象にしています。
倉貫氏
働いている方限定とか、ママさん向けなど限定しているわけではないのですね?
菅野氏
そこは特に限定していません。というのは、
女性たちは人生の中で色々変化します。
例えば、就職をしたときには独身でも、結婚すると既婚になりますよね。次に、もしかしたら別れることもあるかもしれないし、お子さんが増えていってママになるかもしれない。ママの人もママだけではなくて、もしかしたら企業人としての顔があったり、妻として夫婦関係に悩んでいたりするかもしれません。ですから、
あくまで属性で区切るのではなくて、そのシーンに応じて自分に適切なカウンセラーというか、相談者を選べるということがコンセプトです。
倉貫氏
相談内容に関して、どのテーマの相談が多いというような傾向はありますか?
菅野氏
今のところは「仕事テーマ」の相談が多いです。ただその背景として、仕事テーマ専門のカウンセラーさんが多いので、仕事に関するご相談が多いのかもしれません。
倉貫氏
働く女性たちは、誰にも打ち明けられない悩みをそこで聞いてもらって、そこでもう解決して終わってしまうのか、それともリピーターみたいな形で継続することが多いですか?
菅野氏
リピーターの方もかなり多いですよ。
占いよりもカウンセリングの方が満足度が高いという手応え
倉貫氏
今回、私たちがお手伝いしたのはリプレイス、つまり古いシステムの置き換えから始まったのですが、以前のシステムを作った時のお話から聞かせてください。ボイスマルシェのようなサービスを最初に考え出したのは古川さんになるわけですね?
菅野氏
そうです。結果的には合作ですが、サービスの原型ということで言うと、古川が考えていた電話占いですね。ですが、それではサービスの限界がやがて来ていたと思います。
二人でヒアリングを始め、インタビューを女の子たちにしている中で「これって占いじゃなくてもいいよね」とお互いに気が付いたときが、たぶん始まりだったんだと思います。
倉貫氏
最初は電話占いのつもりだった?
菅野氏
そうです。けれど
ヒアリングしていく中で、カウンセラーのほうが満足度が高いことが分かりました。カウンセリングの課題は、それ自体があまり知られていないということです。何かを相談するときにカウンセラーに行くというような第一想起がないということが、一番の課題でした。
倉貫氏
確かにそうかもしれませんね。
菅野氏
実は初期にオープンした2012年3月当時は、相談員の方が10名ちょっとくらいでオープンしたんですけれども、半分が占い師さん、半分がキャリアカウンセラーやコーチの方でした。
倉貫氏
最初はやっぱり占い師さんも登録されていたんですね。
菅野氏
はい。
まずは占いという親しみやすい形で気軽に見てもらって、「実は同じ料金でキャリアカウンセラーさんにも相談できるますよ」という感じにしたんです。そのような形で一定期間運用しながら、ユーザーさんにアンケートをとりました。すると「初めて受けたけど、キャリアカウンセラーさんすごくいい!」とか「コーチってこんなにいいなんて」という感想が多かったんです。
古川氏
そういうわけで、2013年の夏ぐらいで占いを一旦全部やめたんです。やめた背景はもうひとつあり、占い自体は人の支えになる部分も確かにありますが、金融機関から融資を受けたり、他の企業様と提携する際には懸念される理由になってしまうと考えたからです。
菅野氏
相談を受ける「専門カウンセラー」として登録できる方を、公的な資格を持っているとか、メジャーなコーチングやカウンセリング組織の卒業生に限定しています。
倉貫氏
事業を始める前のヒアリングはお二人でされたんですか?
古川氏
そうですね。50人位の方からお話を聞きました。
倉貫氏
いいですね。ヒアリングしたほうがいいというのは、直感で分かったものですか?
古川氏
ニーズがあるだろうと確信はあったのですが、実際にファクトとしてデータを持つ必要があると考えていました。
30代半ばまでに起業すると決めていた
倉貫氏
ちなみに、お二人は以前から起業しようと考えていらっしゃったんですか?
古川氏
はい、ただ
起業したいと思いながらリクルートに就職して、ずっと起業できないまま35歳になっていました。社会的な責任が出来たという理由もあります。また、このアイデアで一緒に起業する予定だったパートナーが戻ってこなかったというのも動けなかった原因のひとつかもしれません。
菅野氏
私の場合も、自分で起業しようと思っていろんなアイデアを考えてはいたんですけれど、マネタイズできないと悩んでいた最中でした。
そんなときに古川と知り合い、「私のアイデアは、いずれ古川のパートナーが戻ってきたときにまた考えればいいか」という感じで一緒にやり始めたんです。古川は30代半ばまでに起業するというのを決めていたんですけれど、もう35歳の誕生日が過ぎていました。
倉貫氏
その時点でお二人はリクルートを辞めていたんですか?
古川氏
いいえ。まだリクルートにいました。週末起業的に始めたいということもあったので。
倉貫氏
そうですよね、何もない状態ですからね。
菅野氏
古川が会社辞めたのは1年後の2011年の1月です。そこからようやく準備が具体的に始まりました。
どうせ死ぬなら、プロダクトを残して喜ばれよう
古川氏
辞めて、リクルートの退職金も含め、持っていた貯金をすべて突っ込み、それで軍資金を作ることにしました。
菅野氏
いずれにせよ古川だけだとサービスの開発が進んでいかなくて、「このままだと埒があかない」と思い、私は2011年の5月にリクルートを退職しました。結局、私の退職金もとられました(笑)その半年後以内にはオープンさせるつもりが、仕様の検討のやり直しとか、画面をもう1回全部作り直したりなどして、オープンしたのが2012年3月です。
倉貫氏
なるほど。かなり時間がかかりましたね。大きな決断を何度もされたわけですが、退職の決断って、何かきっかけがあったんですか?
古川氏
いや、なんかもうイライラしちゃって。「もうどうせ死ぬし」とも思ったんです。
菅野氏
本当?
古川氏
いや、本当。
「どうせ死ぬし、やったろう」みたいな意味です。当時、経営者になるための準備としてトレーニングを色々やっていたんです。例えば、フィジカル面のトレーニングは、筋トレや走り込み、格闘技をやっています。それと平行してメンタル面のトレーニングとして、座禅以外に、株式投資を活用していました。全財産をリーマンショック後の東証で投資していたのです。1日で50万円損したり、逆に1日で100万円稼いだりもしました。メンタルは相当に鍛えられました。結果としてトータルでは稼いでいたんですが、そうやっていくうちに「どうせ死ぬしな」というところまで悟ってしまったんです。
倉貫氏
人生の儚さ、のようなものですね。
古川氏
そうです。儚さみたいなの。
倉貫氏
わかります。
古川氏
当時ネットの掲示板を見ていたら、株式投資で大成功する人もいれば、大失敗する人もいました。諸行無常だなと感じました。
どうせやるなら、株式投資で財産を残すよりはプロダクトを残して、みんなに喜ばれようと思ったんです。
倉貫氏
それいい話です。すごくいい話。
古川氏
だから、今、株は一切やらないです。そのときの友達とはだいぶ疎遠になっちゃいましたけど。
ユーザー思いのサービス、誠実なビジネスを大事に
菅野氏
私自身も30歳ぐらいのときにいろいろ悩んで、結局、占いしか駆け込む先がなかったんです。あの時もし、気軽に専門のカウンセラーやコーチに相談できていたら、もっとラクに悩み解決できていたと思います。だから『ボイスマルシェ』みたいなサービスは世の中のためになると思って始めました。私自身が欲しかったサービスでもあります。
倉貫氏
菅野さん自身が欲しかったというのは、このサービスの重要な背景なんですね。
菅野氏
そうです。それはすごく大きいです。
古川氏
すごくユーザー思いのサービスにはなっていると思います。
菅野氏
リクルートはすごくユーザー思いの会社なので、それは踏襲しているつもりです。
古川氏
僕なんかは、もうちょっと利益出してもいいんじゃないかと思って(笑)・・冗談ですよ。
菅野氏
騙したりするのはやめようっていうのは、すごくあります。
古川氏
誠実なビジネスであることを大事にしています。もちろん僕もそう思っていますし、菅野はやはり同性へのサービスだからこそ、より強く思っているんじゃないですかね。
そういった女性としての感性がこちらにあるのは、すごくいいことだと思います。
菅野氏
そうですね。ただ、自分自身の使い勝手とか、こういう機能が欲しいという要望が、必ずしもすべての女性が支持するものではないと思っています。そこはユーザーの方たちがどんなことを望んでいて、どんなことを望んでいないのか、フラットに見て作るようにしています。
CTO的な人がいないまま出来てしまった最初のサービス
倉貫氏
最初に1年かけて開発されたとき、その開発者はどのような方と一緒にされたんですか?
菅野氏
当時は起業するということを、もう少しアマチュア的に捉えていたと部分がありました。なので、自分の知っているSEの人に「こういうサービス作りたいんだけど、一緒にやりませんか?」みたいな感じで、多少お金は払いつつも有志で作ってもらいました。SEの彼も普通に会社勤務をやりながら多忙な中で、週末をつかって彼の仲間たちにプログラミングを依頼してシステム構築をしていきました。
倉貫氏
じゃあ、お友達に頼む感じだったんですね。
菅野氏
そうです。手伝ってくれた彼なりの気遣いで「お金をかけないで作ったほうがいいですよね」という感じの開発でした。
その時点で一番抜けていた観点は、出来上がったあとどうするかという視点です。最終的には彼の勤務先の会社も手伝ってくれてサービスがオープンするのですが、彼らからは「これ以上、僕たちはお手伝いできません」と言われてしまいました。
倉貫氏
「もう限界です」ということですよね。
菅野氏
はい。やって頂いたことには本当に感謝しているんです。でも「さて、このあとどうしよう」という困った状態になりました。
他の会社が作ったもの、他の誰かが作ったシステムは、どこも保守を引き受けてくれないということに、初めてそこで気がつくのです。もともと一緒に起業する予定だった古川のパートナーが、プログラミングなども比較的できる人だったので、「彼が戻ってくればCTOとして何とかしてくれるだろう」と楽観的に考えていた部分もあります。ですが彼は体調的な理由で戻ってこなかった。これは予想外でした。WEBまわりの保守は知人に手伝ってもらえていたのですが、『ボイスマルシェ』はWEBサービスにもかかわらず社内SEもCTOもいないまま、運営を続けざるをえませんでした。システム会社やITコンサルの方にも相談しましたが、「仕様が分からないから引き受けられない」と言われ、機能改善もできないままオープンから1年半が過ぎていました。そんな時、たまたまソニックガーデンさんを発見して、お願いに行ったのです。「助けて!」という感じで(笑)。
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インタビュアー:倉貫義人
株式会社ソニックガーデン代表取締役。大学院を修了後、大手システム会社でエンジニアとしてキャリアを積みつつ、「アジャイル開発」を日本に広げる活動を続ける。自ら立ち上げた社内ベンチャーを、2011年にMBOし、株式会社ソニックガーデンを創業。月額定額&成果契約という「納品のない受託開発」を展開し、注目を集める。そのビジネスモデルをオープン化し、新しいフランチャイズの形「ソニックガーデンギルド」を展開している。
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