育ててきた内製システムを「伴走型開発」で刷新。事業の本質にも切り込む対等な関係性で

ソニックガーデンは、株式会社クラシコムの展開するライフカルチャープラットフォーム『北欧、暮らしの道具店』を運用するECシステムのリプレイスを担当しました。
日々の暮らしの機微をコンテンツや商品セレクトに繊細に落とし込むスタイルで、世間から支持を得ている『北欧、暮らしの道具店』。その根幹を支えるシステムは長い間、社内のエンジニアたちの手によって大切に育てられてきました。しかし、急成長する事業、増えるユーザー、目覚ましく展開していくコンテンツにフィットさせながら走り続けることは、並大抵の努力では叶いません。
受け継がれてきたものを大切にしながら、よりよいものへとアップデートさせたい、しかも稼働させながら。それには、ただ単に「手を貸してくれる」だけの存在ではなく、同じ景色を見ながら並んで走っていけることが重要でした。
クラシコム様とソニックガーデンは今、繊細で膨大な改築作業とも言えるプロジェクトに立ち向かっている最中です。システムリプレイスに『納品のない受託開発』がどう挑むのか、チームの関係性やこの先の走り方などについて、お話を伺いました。
インタビューに参加された皆さん
株式会社クラシコム 執行役員 ビジネスプラットフォーム部 部長。1986年生まれ。AGC株式会社で化学の研究開発に従事したのち、2019年にクラシコム入社。ライフカルチャープラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を支える、カスタマーサポート、物流、情報システム、データ分析の統括を行う。
株式会社ソニックガーデン 執行役員兼プログラマ。1982年生まれ。大学卒業後、地元のSI企業にてシステム開発に約5年間従事。その後、パッケージソフトウエアの企画・開発販売に携わる。2014年ソニックガーデンに参画。「納品のない受託開発」の開発責任者として多くの企業の支援を行っている。21年から執行役員として経営にも携わる。22年にはソニックガーデンの徒弟制度の立ち上げに関わり、親方として若手プログラマーの育成に取り組んでいる。
株式会社ソニックガーデン 執行役員兼プログラマ。1982年生まれ。大学卒業後、地元のSI企業にてシステム開発に約5年間従事。その後、パッケージソフトウエアの企画・開発販売に携わる。2014年ソニックガーデンに参画。「納品のない受託開発」の開発責任者として多くの企業の支援を行っている。21年から執行役員として経営にも携わる。22年にはソニックガーデンの徒弟制度の立ち上げに関わり、親方として若手プログラマーの育成に取り組んでいる。
フィーリングが合う、長く一緒にやっていけるという感覚
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まず最初に、クラシコムさんの事業内容について教えていただけますか?

ライフカルチャープラットフォーム『北欧、暮らしの道具店』を運営しています。主に衣服やインテリア雑貨、食器などを取り扱い、その売上の大半を物販で上げているという形になります。
「フィットする暮らし、つくろう」というミッションで事業を行っておりまして、商品を紹介するコンテンツであったり、暮らし作りに貢献できるような読み物、例えばレシピ記事のようなさまざまな特集記事を多く発信しています。また、物販だけでなく、コンテンツを作るという我々のケイパビリティを活かして、ナショナルクライアントさんたちのブランディング上の課題を解決するお手伝いをするという、ブランドソリューション事業も同時に行っています。
創業は2006年ですが、ECにまつわるシステムは2013年ぐらいから内製することを始めました。社内に在籍するソフトウェアエンジニアたちがECのシステムをスクラッチ開発する体制で、10年以上続けていたんです。
「フィットする暮らし、つくろう」というミッションで事業を行っておりまして、商品を紹介するコンテンツであったり、暮らし作りに貢献できるような読み物、例えばレシピ記事のようなさまざまな特集記事を多く発信しています。また、物販だけでなく、コンテンツを作るという我々のケイパビリティを活かして、ナショナルクライアントさんたちのブランディング上の課題を解決するお手伝いをするという、ブランドソリューション事業も同時に行っています。
創業は2006年ですが、ECにまつわるシステムは2013年ぐらいから内製することを始めました。社内に在籍するソフトウェアエンジニアたちがECのシステムをスクラッチ開発する体制で、10年以上続けていたんです。
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既に体制があって、ある程度安定的に稼働していたと。

そうですね。内製というスタイルだと、とにかく柔軟に迅速に対応できますし、コストも抑えられます。そういう良さがたくさんあって、だからこそ10年続いていたんですが、やはりそれだけ長くやっていると、成長していく事業規模にフィットさせ続けることへの負荷が高くなってきます。5年ほど前からシステムも刷新を意識してはいたんですが、今いるエンジニアだけで、保守運用しながら刷新させるというのには無理があると感じていました。
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ソニックガーデンとの取り組みはどのように始まったのでしょうか?

ソニックガーデンさんと具体的にご一緒することになったきっかけは、2023年です。「foufou」というファッションブランドをM&Aしたのですが、その「foufou」が使うシステムの開発を依頼しました。そもそもソニックガーデンの倉貫代表は、我々株式会社クラシコムのCTOでもあるので、旧知の仲ではあったのですが、実際にそこで会社として仕事をご一緒してみて、倉貫さんだけでなく、エンジニアさんたちともフィーリングが合うというということが分かりました。
これはもっと長く一緒にやっていける気がする、という感覚があったので、内製で培ってきたシステムのリプレイスをともに、という今回の依頼に至りました。
これはもっと長く一緒にやっていける気がする、という感覚があったので、内製で培ってきたシステムのリプレイスをともに、という今回の依頼に至りました。
「一緒に問題を解決する」スタンスでのチームづくり
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『納品のない受託開発』はどちらかというと新規事業などのように新たなシステムを一から開発することが多いのですがリプレイスの手応えはいかがでしたでしょうか。

そうなんですね。野上さんはまったく動じず、という印象でしたが(笑)。

そういう『納品のない受託開発』の特性も考慮して、最初に開発合宿を行って感触を確かめる、という段階を挟みました。新規事業とは違う気の遣い方をしていますよ(笑)。

私としては、新しいシステムを作るのではなく、すでに稼働しているシステムをリプレイスするという意味で、運用している弊社のエンジニアたちと、ひとつのチームとして同じ目線で開発してくれる人たちじゃないと難しいな、と思っていたので、その点は心配していました。でも、ソニックガーデンさんは最初から「一緒に問題解決しましょう」というスタンスで来てくれたので、まったくの杞憂でしたが。

「一緒に悩んで、いいものつくる」をポリシーとしていますので、新規事業であれリプレイスであれ、チームづくりは多いに気を遣うところなんですが、ある意味そこは慣れているんですね。それよりも、10年運用していて現在も稼働中のシステムの全体像を把握するということが大変でした。

リプレイス対象のシステムが、他のシステムやどの仕事にどうつながっているのか、これが僕たちとしても意識から抜け落ちてる部分もあるので、伝えるのも難しいんですよね。そういう意味で、どこまでが今回のプロジェクトのスコープなのかが、当初はなかなか見えなくて苦労しましたね。
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結局、その問題を解消するには、時間をかけて把握していくしかなかった。

そうです。作って、フィードバックしてを繰り返して、やりとりを深めていくことでお互いにわかってくる、という感じですね。目で見てわかる、ということが一番強いので。しばらくして一度、開発のための地図というか、変える場所、変えない場所の整理をしたタイミングがありまして、それでかなり見通しが良くなりました。
開発合宿で「本丸から変えていく」と決断
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このリプレイスはどのような進め方をしたんでしょうか。

リプレイスには、従来のシステムとそっくり同じものを作っていく方法と、リプレイスのタイミングで業務も整理する方法、つまりリプレイスというよりも新しく構築していくような意味合いのものとあるんですが、今回はどちらかというと後者でしたね。リニューアルという言い方のほうが近いかもしれません。受注業務に関するリニューアルをした、というのが、今回のプロジェクトを表すにふさわしい表現です。
とはいえ「リプレイス」つまりシステムを交換することになるので、あるタイミングでばっさり切り替えなければいけません。その線引きに気を遣いました。
とはいえ「リプレイス」つまりシステムを交換することになるので、あるタイミングでばっさり切り替えなければいけません。その線引きに気を遣いました。
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今回、メインでリプレイスした部分はどの辺りですか。

受注管理の部分です。どこから手をつけようかというのも議論になったんですが、端からちまちま崩すよりは、もう今動いている中心、本丸の部分から変えてしまおうと。それは最初の開発合宿で計画したんですよね。

そうですね。先ほどもちょっと話題に出た開発合宿で、私のいる岡山の事務所までクラシコムのスタッフ数名にお越しいただいて、リプレイスの全体設計をしました。
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現在は、毎週定例ミーティングを開催しながらリプレイス進行中、という状況ですか。

そのとおりです。受注管理の部分の最初のリプレイス作業を2024年の12月に行って、2025年に入ってからは、仕入管理の部分に手をつけ始めています。受注管理の部分もまだエンハンスを続けていますので、リプレイス作業のラインが今2つ走っているという状態ですね。
寄り添っているからこそ、本質的な提案も臆さずしてくれる
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ここまで『納品のない受託開発』で伴走させていただいたわけですが、率直なご感想など教えていただけますか。

もっとも良かったのは、使い勝手を見ながら進められたところですね。とにかく触れる。感触を確かめながら進めていけるのは大きな安心感があります。
あと、これは『納品のない受託開発』の特性というよりは、ソニックガーデンという会社の特性だと思うんですけど、提案してくれる部分ですね。「今のシステムがこうだからこうしよう」「ユーザーがこう言ってるからこう作ろう」ではなくて「本質を考えるなら、こうあるべきでしょう」という観点からの提案です。
あと、これは『納品のない受託開発』の特性というよりは、ソニックガーデンという会社の特性だと思うんですけど、提案してくれる部分ですね。「今のシステムがこうだからこうしよう」「ユーザーがこう言ってるからこう作ろう」ではなくて「本質を考えるなら、こうあるべきでしょう」という観点からの提案です。
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言われたものだけ、求められた部分だけでなく、ということですね。

そうです。意見を持ってくれるんですよね。かといって「俺の考えた最強のシステム」になってしまうわけではない。今のシステムの良さや現場の事情も取り込みつつ、その上で「本質的に」見てくれているんです。これはいいものができるぞ、という強烈な感覚がありました。こんな提案してくれる外部ベンダーさん、なかなかいないのではと思いました。

極端な言い方をすれば「その業務は生産性を下げるのでやめてしまえばいいのでは?」みたいなことも、普通に言ってしまいましたね。

そういう意見が、本当にナチュラルなコミュニケーションの中から出てくるんですよ。そして確かにいらない仕事であった、という(笑)。これはほんの一例ですが、おかげさまで、お客さまに対して誠実でいようとするあまりに膨らんでいたチェック体制を整理して、システムによって効率的に動きやすく変えることができました。
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最後に、どんな会社にソニックガーデンの『納品のない受託開発』がフィットすると思いますか?

弊社のように、もう既にあるシステムをどうにかしたいという場合であれば、今やっている事業にどんな意味があり、どこへ行きたいのか、そのためにどうしたいのかをある程度言語化できる組織がマッチするんじゃないかと思います。
もっともよいものにするためには、もしかしたら何かがごっそり変わることもあるかもしれない。そのための突っ込んだ提案を厭わないような気概の会社と相性が良いと思います。弊社は相性抜群だったと思っています。
もっともよいものにするためには、もしかしたら何かがごっそり変わることもあるかもしれない。そのための突っ込んだ提案を厭わないような気概の会社と相性が良いと思います。弊社は相性抜群だったと思っています。

ありがとうございます。今後も良い関係を築きながら、同じ方向を向いて伴走できることを楽しみにしています。

ぜひよろしくお願いします。