テスト管理クラウドサービス「QualityForward」の開発で分かった、コミュニケーションが品質を作るということ【後半】
これまで表計算ソフトで行われていたテスト管理を、効率的にそしてよりクリエイティブな仕事へと変えるウェブシステム「Quality Forward」(以下、QF)。プロジェクトメンバーによる座談会・後半では、QFの具体的な開発エピソードや使用感のフィードバック、これからのことが語られました。
膨大なテスト作業の中から、本当に必要なことを見つけだす
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4ヶ月かけて議論を重ね、QFの目指すビジョンがまとまりました。続いて、開発のお話をうかがいます。
遠藤
テストの実務作業についての議論にも、時間をかけました。コードを書くためには、システムを利用するユーザーや必要な要素など、概念の整理をしなくてはなりません。
表計算ソフトを使った自由度の高いテスト管理業務の中には、テスト業界独自の作業や、多くの共通認識が含まれていました。それらをシンプルにして、僕らプログラマが理解できる言葉にして、さらにエンドユーザーもわかる言葉にまとめるという流れを、丁寧に行っています。
表計算ソフトを使った自由度の高いテスト管理業務の中には、テスト業界独自の作業や、多くの共通認識が含まれていました。それらをシンプルにして、僕らプログラマが理解できる言葉にして、さらにエンドユーザーもわかる言葉にまとめるという流れを、丁寧に行っています。
松木
そこで気をつけていたのが、業界や製品・規模によってテストのやり方が違うということです。テストのテンプレートを決めてしまえば簡単ですが、それでは特定の業界でしか使えないシステムになってしまいます。違いの中から、ギリギリの最小公倍数となるやり方を選び、形にしていきました。
岩﨑
多くの業界や企業とお付き合いのあるベリサーブだからこそ、持てた視点ですよね。
納得するまで開発はしない。議論やコミュニケーションが製品の品質につながる
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QFの開発でこだわったのは、どのようなところでしょうか。
遠藤
集計の処理を念入りに行いました。すべてウェブ上で自動集計させて、リアルタイムで進捗状況などが分かるようにしているのがポイントです。たくさんの方が同時に、何百件というプロジェクトや何万単位のデータを処理します。ストレスなく使っていただくために、パフォーマンスは注力しています。
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開発はスムーズに進みましたか。
松木
やはり途中で仕様の変更が出てきました。そこはアジャイル開発のメリットをいかし、適切に方向転換いただいたと思います。
遠藤
QFはベリサーブ社内で使うシステムとして開発を進めていましたが、他の会社でも使いたいという要望が生まれたんです。ならばひとつのシステムを複数の会社が使える、マルチテナントに改修しようという結論になりました。
松木
マルチテナントの場合、データの表示違いなどがあったら大問題です。改修後には念を入れて、ベリサーブのエーステスターがチェックをしましたが、一切バグがありませんでした。大幅な仕様変更を確実に改修・開発いただいたんです。
岩﨑
僕らもシステムのテストはしっかりと行いますが、その上でQFは、ベリサーブ社内にいらっしゃる本職のテスターの方によるチェックが入るので心強いです。
松木
一般的にソフトウエアの品質で達成しづらいのは、セキュリティとパフォーマンス。一定以上の品質に保つことは、ソフトウエアの開発においてもかなり高度です。それをソニックガーデンは真っ先に達成しつつ、機能追加などもスピーディにできる。開発技術力はこれ以上ないクオリティだと思います。
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開発をしていく中で、他にも仕様変更は発生しましたか。
遠藤
ユーザーアカウントの権限付与機能についても、ご相談をいただきました。もともと、すべてのユーザーが同一権限という仕様で進めていたのですが、ユーザーごとに特定の情報へのアクセス制御をしたいという要望が出てきたのです。そこで再び議論をしたのですが、結局この仕様変更は取りやめました。
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それは、なぜでしょうか。
松木
遠藤さんから「なぜ、権限管理の機能が必要なのか?」と聞かれて気づいたんです。まず、テスト管理の担当者はオペレーターからリーダーへというように、役割が柔軟に変わりやすい。その上で、同じプロジェクトのチーム内にアクセス権限の差があることは、テストにとって良くありません。すべての情報がオープンになっていたほうがいい。だから、やめました。
岩﨑
お互いにゴールを理解し共有していても、そこへ至る過程は変わってしまうものです。だから開発中も議論を重ねることで、本当に必要か・大事なのかということを考えます。大事なら作る、その強弱をつけて開発しています。はじめに要件を固めてしまうウォーターフォール型の開発だとできないところです。
松木
QFの開発において、お願いした機能と違ったものが出てきたことは一度もありません。それは、前もって徹底的に議論をしているからなんです。理解しあうことが品質につながっていると実感しました。他の開発案件についても、議論したほうが良いよと伝えたいですね。納得するまで、絶対に作っちゃいけない。
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理解しあうこと、コミュニケーションが品質につながっている。
松木
バグや脆弱性は依頼側と開発側の理解のパズルが、少しずれたところに入ってくるのだなと気づきました。完璧にパズルのピースを合わせておくことが大切です。
利用者からの反応も好評。QualityForwardへ寄せられる期待とは?
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QFについて、ベリサーブ社内からはどんな反響がありますか。
遠藤
「とても作業がシンプルになった」とフィードバックをいただきましたね。
具体的に挙げると、まずパッと見てテストの進捗状況が見えるところが良いそうです。表計算ソフトの場合は、担当者それぞれで集計をしなくてはならず、全体の状況が判断しづらかったんです。また、あとどのくらいでテストが完了するかという目安もビジュアルで分かるようになり、モチベーションがあがったと聞きました。
具体的に挙げると、まずパッと見てテストの進捗状況が見えるところが良いそうです。表計算ソフトの場合は、担当者それぞれで集計をしなくてはならず、全体の状況が判断しづらかったんです。また、あとどのくらいでテストが完了するかという目安もビジュアルで分かるようになり、モチベーションがあがったと聞きました。
松木
仕事のやり方が変わったという人がいるくらい、好評です。ひとりで同時に100種類ほどのテストを抱えている担当者もいますので、QFならまとめて管理できると喜ばれています。
また予想もしていなかった反応もありました。ニアショアとして沖縄にある支社から、QFは自分たちの地理的な弱点を打ち消すことができると、フィードバックがあったんです。オフィスが離れていると、仕事をしているところが見えづらい分、お客さまとのコミュニケーションコストがかかっていたそうなんですよ。
また予想もしていなかった反応もありました。ニアショアとして沖縄にある支社から、QFは自分たちの地理的な弱点を打ち消すことができると、フィードバックがあったんです。オフィスが離れていると、仕事をしているところが見えづらい分、お客さまとのコミュニケーションコストがかかっていたそうなんですよ。
遠藤
QFはお客さまも一緒に作業画面を見ることができ、リアルタイムで進捗状況が追えますからね。安心感が生まれると思います。
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他には、どのような反響がありましたか。
松木
QFはテストの経験がある人なら誰でも使えるようにと、使い心地にこだわりました。だから使いやすいし、もっとこうしてほしいという要望も多く届きます。集計に関することが多いかな。他のシステムと連携したいとか、エクセルっぽくしてくださいとか(笑)
岩﨑
エクセルへの愛着はありつつも、QFをもっと使いこなしたいというリクエストが多いんですね。QFプロジェクトに対する、ベリサーブ社内の期待を感じます。
松木
会社としてQFには、お客さま企業に所属するテストエンジニアのかたはもちろん、当社の技術者も含めて、テストエンジニアがさらに活躍するためのプラットフォームに成長してほしいという願いがありますね。さらには将来へ向けて、収益の柱にもなると頼もしいです。会社としても新しいことへトライしていこうという姿勢なので、とても期待されていますよ。
目指すは、クオリティ・インテリジェンス。ビジネスの方向性を導くようなテストを実現したい
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では最後に、今後のQFにまつわる予定やビジネスの展開を教えてください。
松木
QFを、テストエンジニアのかっこいい武器にできたらなと思います。そして最終的には、QFで「クオリティ・インテリジェンス」を実現したいです。あらゆる開発活動やテストのデータを集めて分析し、利益かシェアかの軸で品質の方針を導くようなシステムをイメージしています。
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BI(ビジネス・インテリジェンス)のようですね。
遠藤
QFのゴールは、まさにテストの効率化だけではなくてその先の品質にあります。ベリサーブのバックボーンに品質があるので、おのずと求めるシステムにも品質を考えるという視点が組み込まれているのだなと日々思いますね。
岩﨑
「品質を大事にしながら、生産性を上げ、楽しくクリエイティブな仕事でありたい」という、松木さんたちが目指すテスト業界の未来を一緒に追っていきたいです。
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本日はありがとうございました。
[取材・構成・執筆/マチコマキ]