【業務ハック事例】紙中心の受発注業務をシステム化し、残業ゼロに。社長と現場の協力で、業務ハックはうまくいく
現場から小さい工夫を重ねて業務を改善していく、業務ハックの事例をご紹介します。
業務用の厨房機器を開発、販売する企業・株式会社メカは、受発注の対応に課題を感じていました。毎日何件もの注文が入る中、紙による事務処理が多いため、業務が非効率になっていたのです。
相談を受けたソニックガーデンでは、業務改善をプログラミングで実現する業務ハッカーのプログラマが担当し、業務改善のプロセスにそって、kintoneによる受発注のシステムを開発しました。導入後は、残業の削減や業務の引き継ぎにかかる時間の短縮など、業務効率化を達成しています。
メカの代表取締役社長 大城洋美さん、営業の伊藤小野香(さやか)さん、そしてソニックガーデンのプログラマ・田中一紀に、これまでの取り組みを聞きました。
株式会社メカの業務ハックのポイント
- 大量の書類が使われていたが、ルーティン業務やルールを設計できる作業が多く、システム化しやすかった。
- オンラインミーティング時に雑談することで、相談しやすい関係性が生まれた。
- 会社全体で、共通の課題感を持ち、解決したいという気持ちが強かった。
FAXと電話による注文が1,000件以上!小さく業務改善を始める業務ハックに期待
千葉県にある株式会社メカは、1974年に創業した、社員数30名ほどの企業です。主力の商品は、揚げ油のろ過機。大手外食企業やレストラン、お惣菜を作るキッチンがあるスーパーなど、200社・4,000事業所以上に導入されています。また、千葉ものづくり認定製品の開発や、千葉県経営革新優秀企業に選ばれるなど、地域に密着しながら、全国に製品を届けているのです。
メカ工場内の様子。メカの揚げ油のろ過機は、廃油の削減にもつながる、エコロジーな製品です。
メカのもとには、ろ過機の消耗品であるフィルターの注文が、1日に何件も届きます。その件数は、月に1,000件以上。FAXや電話で注文を受け、紙の複写伝票を作成し、納品書を印刷して、発送。そして、月末には企業ごとに伝票をまとめ、請求書を発行するといった、紙ベースの作業が続いていました。
そのため、受発注の業務はつねに忙しく、残業が発生することが当たり前。さらに、新しい担当者が来ても、業務が複雑過ぎてなかなか覚えられず、特定の人のスキルに頼り切ってしまうという課題があったのです。
株式会社メカ 代表取締役社長の大城洋美さんは、当時のことを次のように話します。
しかし、専門のエンジニアを採用するほどの業務があるわけではありません。そんなとき、Cybozu Days(※)でソニックガーデンのセッションを見て、業務ハックを知ったのです。
※Cybozu Days:サイボウズ株式会社が主催する、同社の総合イベント
Cybozu Daysのセッションの様子。ソニックガーデンでは、さまざまなイベントやセミナーで、業務ハックをご紹介しています。
業務ハックとは、現場から小さい工夫を重ねて業務を改善していくことです。ソニックガーデンの業務ハックは、業務ハッカーと呼ばれるプログラマが担当し、お客様の業務を理解しながら、業務効率化に向けたシステムを開発していきます。すべての要件を出して一気に開発するのではなく、最も必要な機能から段階的に開発するアジャイル開発が特徴です。
議論をくり返して、プロトタイプのシステムを改善し続ける
メカを担当するのは、ソニックガーデンの業務ハッカー・田中一紀と、上田幸哉です。
田中たちはまず、オンラインMTGで、大城さんと現場で受発注を担当する伊藤さんから、業務の課題をヒアリングしました。その内容をもとに、業務フロー図や開発する受発注管理システムのポンチ絵を作成し、課題とゴールの認識を共有しました。
続いては、システムのプロトタイプを開発します。ポンチ絵の次に、実際に動くシステムを触っていただき、お客様のイメージする機能になっているか、認識をすり合わせていきます。そのうえで田中は、伊藤さんたちが実際に仕事をする工場へうかがい、フィルターの受注から発送までの一連の業務プロセスを見学しました。
田中が大城さんたちへ提案したポンチ絵
しかし現場には、一見非効率な作業に見えても、さまざまな事情があります。そこで田中は、気になったことや疑問を、伊藤さんたちとしっかり話し合いました。
株式会社メカの代表取締役社長 大城洋美さん(右)と、営業一課主任の伊藤小野香さん(左)
このような話し合いを経て、大きく改善されたのが納品書の作業です。システムを導入するまでは、発送の度に複写式の納品書を印刷して同封・保管し、月末にはメカで保管していた納品書をもとに請求書を作成する、紙ベースの作業を行っていました。今では受発注データをkintoneで管理し、納品書・請求書を締日にまとめて発行する方法へ変わっています。
現在も継続的にシステムを改善していますが、寄せられる改善要望には、業務へのインパクトを優先に、どの要望を改善したら作業が1番楽になるか?を考え、対応を進めています。
アナログな作業を残す理由
一方、すべての業務をシステム化するわけではありません。
ソニックガーデンの業務ハッカー・田中一紀。旅行が好きで、メカとの定例MTGに海外から参加することも。
業務改善、システム導入というと、すべてをシステム、デジタル化しなくてはいけないと考えがちです。しかしシステムには、メンテナンスコストがかかりますし、想定しないトラブルの発生もあります。長期的に考えたとき、システムに移行するよりも、アナログ作業のほうが適切な場合もあるのです。
田中の考えに対し、大城さんは「例えるなら、システム化の部分は幹で、アナログ対応は葉っぱの部分。合理的な考え方も、大事だと思います」と話します。
また、3人の打ち合わせは、いつもzoomによるオンラインミーティングで行われました。大城さんは、月の半分ほど沖縄に住んでいることもあり、千葉と沖縄、そして田中が住む北海道と3拠点からのミーティングは、雑談も多く楽しみな時間だったそうです。そのような信頼関係があるからこそ、正直な気持ちを伝え合えるコミュニケーションが生まれていました。
「組織全体で課題感を共有しているか?」が、成功する業務ハックのカギ
では業務ハックから、どのような成果が生まれているのでしょうか。
伊藤さんはまず、「パートのみなさんが定時に帰宅できるようになったこと」を挙げました。さらに、受発注業務の対応時間が減った分、仕事の領域が広がっているそうです。
また、システム化する前は、業務の引き継ぎに時間がかかっていました。個人のスキルで対応していた部分もあり、「あの人が抜けたら業務が止まってしまう」という危機感もあったのです。しかしシステム化された今では、初めて受発注業務に関わる人でも、すぐに仕事を覚えることができています。
受発注業務の引き継ぎに3か月かかっていましたが、現在は1か月でベテランの域に。
今回、メカの業務ハックが成功した背景を、田中はこう分析しています。
さらに、現場と経営者が課題感を共有していることも大事です。メカさんは、大城さんも伊藤さんのいる現場も、共通して“どうにかしたい”と考えていたから、業務ハックがうまく進んだと考えています。
ソニックガーデンの業務ハッカーは、「新しい風を送り込んでくれるプロの助っ人」と話した、大城さんと伊藤さん。引き続き、メカとソニックガーデンの強いチームワークで、業務改善を進めていきます。
取材をしたお客様:株式会社メカ
- インタビュアー/ライティング:マチコマキ
- 広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。