東京ガスが選んだ「納品のない受託開発」。決めすぎないことがもたらすスピードと柔軟性
東京ガス株式会社さま
バックオフィス
新規事業
施工管理
社内ベンチャー

東京ガス株式会社様は、2024年、オンライン機器交換サービス「東京ガスの機器交換」の営業開始をしました。東京ガスではこれまでも「東京ガスのWeb見積もり」や「スミレナ(東京ガスの100%出資の子会社として2019年に設立され、2024年4月1日に東京ガス株式会社に吸収合併される)によるオンラインでの住宅設備機器交換やリフォーム」を推進していましたが、両サービスの統合・リニューアルし、新たな事業として開始しました。ソニックガーデンは上記のスミレナ様の時代からシステム開発を任せていただいており、現在も伴走し続けています。
「東京ガスの機器交換」は、コンロ、給湯器、トイレなどの住宅設備機器の交換をオンラインで見積もり・契約・施工までをするサービスです。
着実に増え続けるオンラインニーズに、いかにスピーディに誠実に対応できるか。 日々上がってくる課題に向き合い、素早く検証・改善を繰り返す短い開発サイクルで、実装まで進めていくことが求められます。
移り変わるチーム編成と事業を、良い部分を受け継ぎながらどう発展させていくのか。新たにスタートを切って1年が経ったいま、事業の今までとこれから、チームの関係性、課題への取り組み方などについてお話を伺いました。
インタビューに参加された皆さん
東京ガス株式会社。東京ガスの機器交換、システム開発のプロダクトオーナー
東京ガス株式会社。東京ガスの機器交換、営業担当者向けシステム開発担当
東京ガス株式会社。東京ガスの機器交換、施工パートナー向けシステム開発担当
株式会社ソニックガーデン プログラマ 開発責任者
東京ガス株式会社。東京ガスの機器交換、施工パートナー向けシステム開発担当
ニーズ分析と価値検証を終え、新たな形で再スタート
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始めに、事業内容と、皆さんのチームがどんなサービスを行っているか、また皆様それぞれの担う役割を教えていただけますか?

「東京ガスの機器交換」では、住宅設備機器交換のオンライン販売をしています。取り扱い商材は、ガスコンロや給湯器といったガス機器、レンジフード、食洗機、トイレ、浴室・キッチンまでラインナップし、直近では壁掛エアコンの販売開始をする等、今まさに拡充している段階です。私は当事業戦略の検討やシステム開発を担うチームのリーダーをしております。

当事業では実際にお客さまと対話をする営業担当者がおり、私はその営業担当者の使用するシステム開発をメイン業務としています。日々営業担当者と会話し、課題の特定と優先順位付けを行った上で、ソニックガーデンさんにご相談させていただくという役割を担っています。

私たちの重要なパートナーとして、お客さまのお宅での機器交換工事を行う施工パートナーが多くいます。私はその施工パートナーがより使いやすいシステムとすべく、課題を収集してオペレーション・システムを改善する役割を担っています。
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以前は今とは違った形のチームでお付き合いをしていたんですよね。

そうです。以前は東京ガスの新規事業、社内ベンチャーとして立ち上げられた株式会社スミレナでお付き合いをさせていただいていました。東京ガスグループとしては、これまでもお客さまとのリアルでの対面接点を強みとする「東京ガスライフバル・エネスタ」が住宅設備機器交換を提供していました。そこへ近年のオンラインへのニーズの高まりを受けて誕生したのが「スミレナ」と「東京ガスのWeb見積もり」です。
この2つのサービスはそれぞれ事業内容も異なりましたが、いずれもお客さまのニーズ・価値を起点とした事業活動を営んでおりました。その事業活動を通じて多くのことを学習し、その経験を基にこのオンラインサービスをもっと大きく育てていこうと、2つの事業を統合・リニューアルする形で「東京ガスの機器交換」は生まれました。
この2つのサービスはそれぞれ事業内容も異なりましたが、いずれもお客さまのニーズ・価値を起点とした事業活動を営んでおりました。その事業活動を通じて多くのことを学習し、その経験を基にこのオンラインサービスをもっと大きく育てていこうと、2つの事業を統合・リニューアルする形で「東京ガスの機器交換」は生まれました。
「東京ガスの機器交換」の営業開始のお知らせ (2024年04月09日)
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なるほど。スミレナの経験も継続して活用しながらの拡大ということで、引き続きソニックガーデンがお供をさせていただくことが叶ったわけですね。

おっしゃるとおりです。ソニックガーデンさんには、スミレナ時代からシステムのみならず、事業自体を一緒に作っていただいていたので、引き続きお力添えいただきたいということでお願いした次第です。
「作り直す」を前提としたスピード感と柔軟性
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「東京ガスの機器交換」チームとは、ソニックガーデンからは今回同席している近藤さんと他2名のエンジニアを交えて毎週定例ミーティングを持っているということですが。

厳密には週2回ですね。東京ガスさんのシステムは、機器交換を依頼するお客さまが実際に触る部分と施工を管理するための部分があります。そのシステムをkintoneで作ったバックオフィスシステムで支えています。
表に出ている部分とkintone部分では話す内容がかなり変わってきてしまうので、そこを分けて週に1回ずつ打ち合わせしています。
表に出ている部分とkintone部分では話す内容がかなり変わってきてしまうので、そこを分けて週に1回ずつ打ち合わせしています。
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「東京ガスの機器交換」発足から、大体1年と少し「納品のない受託開発」に関わっていただいたかと思います。率直な感想をお聞かせください。

以前関わっていたサービスでは、社内で練った要件の通りに、月に1-2個の開発を実行する、といった開発方法でした。しかし、ソニックガーデンさんの場合は、相談した翌週にはもうイメージが上がってる状況だったので、個人的には衝撃でした。そのスピード感があったからこそ今のサービス展開ができているので、本当にわれわれにマッチしていたんだなと思っています。

私も同じく、スピード感に驚きました。1週間単位のスプリントでどんどん開発して、実際に出して、使ってもらったフィードバックを基に学習していく、素晴らしい開発スタイルだなと。
あともう一つは柔軟性ですね。作って終わりのスタイルだと、検証して作り直しましょうとなったときに、感情的な面も含めすごく直しにくい。でもソニックガーデンさんのスタイルだと、作り直すことを前提で進めているので非常に柔軟性が高い。どの方向へ舵を切るかの余地が常に残されているのが頼もしいですね。
私たちの事業活動・オペレーションの方針としても、いかにクイックに検証・学習できるかを重視しているので、本当にフィットしているんだなと思います。
あともう一つは柔軟性ですね。作って終わりのスタイルだと、検証して作り直しましょうとなったときに、感情的な面も含めすごく直しにくい。でもソニックガーデンさんのスタイルだと、作り直すことを前提で進めているので非常に柔軟性が高い。どの方向へ舵を切るかの余地が常に残されているのが頼もしいですね。
私たちの事業活動・オペレーションの方針としても、いかにクイックに検証・学習できるかを重視しているので、本当にフィットしているんだなと思います。

私はこの事業に携わる前から開発畑だったんです。要件を最初に決めてしまうから変更が難しいという、いわゆる普通の受託開発ですね。だからソニックガーデンさんの、1週間に1回リリースするっていう開発を初めて経験して、なんて素晴らしいんだ!って(笑)。
日々たくさんの課題が出てくる中で、要件を明確化できてない状態でもとりあえず相談させてもらえる関係性というのも頼もしいです。それは技術力がとても高いというのもあるんですが、ある意味コンサルティング的なスキルも併せ持っているからだと思うんです。
こちらからの相談に対しても、発想を転換させるような提案がいただけたりして、大変ありがたいです。
日々たくさんの課題が出てくる中で、要件を明確化できてない状態でもとりあえず相談させてもらえる関係性というのも頼もしいです。それは技術力がとても高いというのもあるんですが、ある意味コンサルティング的なスキルも併せ持っているからだと思うんです。
こちらからの相談に対しても、発想を転換させるような提案がいただけたりして、大変ありがたいです。
誰の課題なのか、何の課題なのかを常にクリアにしながら挑む
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近藤さん、担当エンジニアとしてはいかがですか。「納品のない受託開発」は、会社によってフィットする・しないがあるサービスかと思いますが。

こちらとしては大変スムーズにやっていけてると思っています。要件を決めきれないというお話がありましたが、適当に考えて持って来られてしまうと、ビジネスにおいていい機能になりません。でも東京ガスさんは、要件を決めきれなくとも「ビジネスとしてやるべきこと」はきちんと考えた上で持ってきてくださる。われわれはその方針を活かすものを作れば良い。分かりやすいですし、やりやすいですね。
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なるほど、要件はなくともビジネスとしてやるべきこと、課題がわかっていれば動けると。

そうです。やるべきことや課題がふんわりしていると、はっきりさせるためのやりとりが増えて、またコミュニケーションに時間もかかってしまうものですが、いつもちょうどいいサイズのはっきりとした課題を持ってきてくれます。

われわれとして心がけているのが「いかに課題をクリアにして伝えられるか」が大切だと捉えています。
常に誰の課題なのか、何の課題なのかっていうところをクリアにして、どう解決するのが適切か。もちろん方針自体はちゃんと考えてから持っていくようにはしてるんですけど、最後の最後のソリューションの部分はソニックガーデンさんと一緒に決めるスタンスでいます。
常に誰の課題なのか、何の課題なのかっていうところをクリアにして、どう解決するのが適切か。もちろん方針自体はちゃんと考えてから持っていくようにはしてるんですけど、最後の最後のソリューションの部分はソニックガーデンさんと一緒に決めるスタンスでいます。
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ありがたいです。作りたい機能そのものを持ち込まれるよりも、課題そのものに対するアプローチを提案することが「納品のない受託開発」の得意とするところでもあります。

本当にそうですね。さきほどわれわれを「柔軟」とおっしゃっていただきましたが、東京ガスさんも大変柔軟です。ある程度信頼を見せていただいているというのも、うれしいです。
機能を作る上で、実現したいこととコストを天秤にかけながらお客さまに提案することもあるのですが、東京ガスさんは事業としてどうしていくべきか考え提案を受け入れてくれます。適切なシステムが、お互いの考え方を混ぜ合わせることによって作られていってるなっていうのを実感できる関係です。
機能を作る上で、実現したいこととコストを天秤にかけながらお客さまに提案することもあるのですが、東京ガスさんは事業としてどうしていくべきか考え提案を受け入れてくれます。適切なシステムが、お互いの考え方を混ぜ合わせることによって作られていってるなっていうのを実感できる関係です。
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それはうれしい、良い関係ですね。
本音をぶつけ合える機会を設けたからこその現在
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皆さん、この一連の開発の中で印象的だった出来事はありますか?

「スミレナ」と「東京ガスのWeb見積もり」の事業統合を実行する段階で、さぁシステムを作り始めるようとする時に、ソニックガーデンさんの事務所に関係者全員で集まって、ホワイトボードを使いながら、今のシステムの課題点を出し合って話し合うという機会がありました。それがすごく印象的です。
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そうだったんですか。珍しいですよね、大抵オンラインミーティングなんですが。

全員が思っている課題のすり合わせをやってから、ちゃんとスタートを切りたかったんです。普段の定例はオンラインでやっているんですけども、そのタイミングではリアルで顔を突き合わせて話した方が考えていることが発散も収束もしやすいと思ったんです。その対面ミーティングで決まったことは、今も引き継がれてシステム化できています。

私は「ふりかえり会」ですね。毎週の定例ミーティングの他に時間を設け、「あのときはこうしておけばよかったね」と本音ベースで話すようにしています。
高速で開発を進める一方で、そういう機会を定期的に設けるのは、お互いが気持ちよく仕事を進めていく上で非常に重要だと思います。
高速で開発を進める一方で、そういう機会を定期的に設けるのは、お互いが気持ちよく仕事を進めていく上で非常に重要だと思います。
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「納品のない受託開発」は、毎週の定例ミーティングに始まるいくつかのスタンダードルールがあるんですが、それ以外の細かいイベントに関しては開発責任者に委ねられています。ふりかえりは近藤さんの提案ですか?

そうですね。スミレナ時代からちょいちょいやっていたので、その流れです。特に事業統合でチーム編成が完全に変わったので、ふりかえりは少し強めにやった方がいいと思って提案させていただきました。
「約束」はしない、でも事業がうまくいくように全力を尽くす
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最後にどんな会社に「納品のない受託開発」がフィットすると思いますか?

新規事業領域をこれからやる方々にはぜひお勧めしたいですね。あとは、課題をクリアにして、一緒に作っていくものを考えていくスタイルが普段から馴染んでいるような方々にはフィットするんじゃないかと。
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東京ガスさんはいわゆる大企業です。「納品のない受託開発」のような、スケジュールと作るものの両方を「約束しない」スタイルでも受け入れられたんでしょうか。

恐らく色々な考え方を持つ人がいるので、相性の良い事業、良くない事業っていうのはきっとあるだろうなと思います。ただ、少なくともわれわれのチームは「納品のない受託開発」の価値や進め方のポリシー、得られるメリットを十分に理解しています。
東京ガスとしても、事業開発を今後どんどん強めていこうという方針がありますので、これからこの開発スタイルが当てはまる事業が生まれてくると思います。
ただ、今ちょうどわれわれは事業スキーム変更の活動をしていまして、それに関してはサービスをご利用いただくお客さまへのご説明等にも関わるため、納期の日付をピン止めに近い形でやらせていただいています。
本来のソニックガーデンさんのやり方とは違う部分で、はっきり言って無茶振りさせてもらってるところなんですが、そこも柔軟にご協力いただいてまして(笑)。なるべく我々も優先順位には気をつけるようにしております。
東京ガスとしても、事業開発を今後どんどん強めていこうという方針がありますので、これからこの開発スタイルが当てはまる事業が生まれてくると思います。
ただ、今ちょうどわれわれは事業スキーム変更の活動をしていまして、それに関してはサービスをご利用いただくお客さまへのご説明等にも関わるため、納期の日付をピン止めに近い形でやらせていただいています。
本来のソニックガーデンさんのやり方とは違う部分で、はっきり言って無茶振りさせてもらってるところなんですが、そこも柔軟にご協力いただいてまして(笑)。なるべく我々も優先順位には気をつけるようにしております。
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「納品のない受託開発」はスケジュールをお約束するものではありません、としてますが、事業がうまくいくように、あらゆる部分を調整することは範疇としております。

大変ありがたいことです。一緒に事業を動かしていく大切なパートナーとして、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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本日はありがとうございました。