とりあえず進学は本当に正解か?高卒プログラマが「幸せに働く」ための新しい進路とは
工業高校の現場では、製造業への就職において確かな実績とパイプがある一方、ソフトウェア業界においてはいまだ「大卒が前提」という空気が強くあります。実際、高卒プログラマは求人自体が非常に少なく、せっかく才能のある生徒を安心して送り出せる環境がない、と歯痒い思いをされる先生も多いのではないでしょうか。
「納品のない受託開発」というビジネスモデルを提唱する株式会社ソニックガーデンは、プログラマにとって重要なのはスタート地点の学歴ではなく、環境と育成の仕組みを整えて「一生モノの職人として、長く幸せに働けるキャリアを成立させる」ことにあると考えています。
その思想のもと、ソニックガーデンは高卒採用を本格的にスタート。2026年4月、高卒1期生が入社を果たします。
私たちが提案したいのは、高卒採用における「第三の選択肢」です。 「大学へは行きたくないから就職を選ぶ」のでも、「やりたいことは特にないけれどとりあえず地元の企業へ行く」のでもない。プログラミングという武器を手に、18歳から本物の師匠について、奥行きのあるキャリアを歩み始める。 そんな志ある生徒が「自ら選びたくなる道」を、学校と企業の連携によって作り出したいと考えています。
こうした想いから「高卒プログラマが幸せに働くために」をテーマに、学校現場で生徒を送り出してきた工業高校の先生方と、ソニックガーデン代表・倉貫義人、そして『13歳からの進路相談』の著者であり同社に参画する松下雅征が、高卒プログラマという選択肢の現実と可能性について率直に語り合いました。
話し手:
A先生
B先生
C先生
倉貫義人
松下雅征「とりあえず進学」しか道はないのか?──先生の悩みに応える「第3の選択肢」
松下実際のところ、先生方から見て「高卒でプログラマになる」という選択肢は、不利だと感じるシーンはありますか?
A先生私は生徒の希望を聞いて進路指導をしますが、募集がない以上、プログラミングをやりたい生徒には「まずは大学や専門学校へ行って、そこで力をつけてきなさい」と勧めるしかありません。
B先生子どもたちは授業や部活を通じて「プログラミングの楽しさ」を知り、これを仕事にしたいと目を輝かせます。でも、学校に届く求人票の中にその選択肢はない。「ああ、やっぱり大学ないし専門学校を通らないとなれないんだな」と諦めてしまうんです。
C先生過去には「プログラマ募集」と聞いて入社したのに、全く別の部署に配属された生徒もいました。Webサービスやアプリを作りたいという生徒の想いと、高卒求人の実態には大きな乖離があります。
A先生
松下
倉貫業界の一部では、大卒を大量に採用して、研修もそこそこに「1人月いくら」で現場に放り込むようなビジネスモデルがまかり通っています。現場で放置され、疲弊していく若手エンジニアも多い。そうした「使い捨ての即戦力」を求める構造が、教育コストのかかる高卒採用を遠ざけている要因でしょう。
松下
倉貫ソニックガーデンの「納品のない受託開発」は、ただコードを書くだけでなく、お客様と対話し、共に悩み、提案しながら作り上げていく仕事です。これには高度なスキルが必要で、どんなバックグラウンドがあろうと、入社後の「教育」は不可欠なんです。
「どうせ育てる期間が必要なら、スタート地点が大卒である必要はないよね」というのが、私たちが高卒採用を始めた理由です。18歳でも、熱意のある人が早く弟子入りして、時間をかけて一人前の職人になってくれればいい。そのための投資は惜しみません。
学校の生活指導と企業の徒弟制度──育成バトンをどう繋ぐか
松下
A先生大会などで結果が出たときは、真っ直ぐに褒める。それを新聞に載せて親御さんにも喜んでもらう。そうやって周囲から認められる体験を通じて、「自分はできるんだ」という自己肯定感を育てます。
特にプログラミングでつまずいている生徒には、「もういいよ」と切り上げさせるのではなく、小さな課題でもいいから「動いた!」「できた!」という感覚をつかんでもらう。この「好き」という感情のエネルギーが、将来の苦難を乗り越えるエンジンになります。
B先生挨拶や礼儀、規則正しい生活など、社会人としての基礎はもちろん指導しますが、ただ「やれ」と押し付けても意味がありません。「なぜ睡眠が必要なのか?」「なぜ時間を守るのか?」を問いかけ、生徒自身に考えさせます。
自分で考えて「腑に落ちた」ことだけが、本当の行動につながります。指示待ちではなく、自ら考えて動く「主体性」を磨くこと。これが、私が考える「心づくり」です。
C先生今の生徒たちは「なぜ?」という疑問を素直にぶつけてきます。それに対して私たち教員も、頭ごなしではなく対話で向き合い、納得できる回答を探し出す。そうしたプロセス自体が、社会で生き抜く力を養っていると感じます。
倉貫ソニックガーデンでも、入社していきなり現場に出すことはありません。「徒弟制度」という仕組みの中で、まずは「弟子」として「親方」につき、技術だけでなく仕事への向き合い方や生活習慣まで含めて指導します。
さらに、高卒採用のメンバーには、弟子入りの前に基礎的な研修期間を設ける計画です。社会人経験のない彼らが、プログラミングを嫌いにならず、かつ社会人としての基礎を固めるための時間をしっかり確保します。
松下
C先生
A先生本来なら、中学校段階から才能を発掘し、高校で基礎を固め、高卒で御社のような「育てる企業」に送り出す。そんな一貫したシステムができれば、日本のソフトウェア産業はもっと強くなるはずです。
松下
A先生部活動が育む最強スキル──他者の目で磨く自己認識
松下単に技術があるだけでなく、「自分には何が足りないか」「どうすれば成長できるか」を客観的に分析し、自分の言葉で語れる。この力はどこで育まれるのでしょうか?
A先生毎日チームで開発をする中で、お互いのコードを見せ合い、「自分はここができていない」「相手のここがすごい」と議論させます。後輩が先輩に教えることもあれば、その逆もある。
常に他者と比較し、評価される環境に身を置くことで、「自分は何ができて、何ができないのか」を客観視する力が自然と身につくのだと思います。
B先生例えば「自分の強みは何?」と聞いても、大抵の子は答えられません。苦手なことは言えるのに、長所はわからない。でも、周囲の友人はそれを知っているんです。
だから、クラスや部活で互いに評価し合う場を作る。文化祭などは絶好の機会です。作品発表の際に「アドバイスシート」を書き合い、良い点も改善点も言語化して伝え合う。他者の視点という「鏡」を持つことで、独りよがりではない自己認識が形成されていきます。
松下可能性は無限大──生徒と企業を繋ぐ、教員の新しい役割
松下
A先生そして、ソニックガーデンさんのような「人を育てるシステム」を持つ企業がもっと増え、広く知られるようになれば、高卒就職の未来はもっと明るくなるはずです。日本を強くするためにも、ぜひ頑張っていただきたいです。
倉貫
B先生だからこそ、大人が勝手に限界を決めつけず、子どもたちの「良さ」を見つけ、フィードバックし、選択肢を広げてあげることが我々の務めです。教員という枠を超えて、一人の人間として彼らと向き合い、彼らが「納得して選べる未来」を一緒に探していきたいですね。
C先生今回、ソニックガーデンさんと出会えたことは大きな希望です。我々教員も、大会への参加などを通じて生徒にチャンスを与え、こうした「育てる企業」と巡り会えるような道筋を作っていく必要があります。
松下ソニックガーデンの高卒採用について、詳細は以下をご覧ください。
https://www.sonicgarden.jp/blog_articles/3452