株式会社SonicGarden(ソニックガーデン)
お問合せ

ブログ

Maedana00

いつでも、どこでも働けるスタイルへ〜ソニックガーデンmaedanaがアイルランドで挑戦 【前編】 2012年10月23日

今回は、先ごろ1年あまりの海外勤務 を終えて帰国したプログラマの前田さんにインタビューします。どうして海外勤務することになったのか、その実態はどんなものだったのか、興味深い話が聞けました。

そもそも、どうして、海外勤務?

一年間のアイルランド勤務、お疲れさまでした。アイルランドのお客様はいかがでしたか?

いえ違うんです。僕はアイルランドではなく、東京のお客様相手に海外勤務をしていたんです。

何というか、さすがソニックガーデン、やることがユニークですね。フツウの会社ではありえない、そんなことがどうして起きたのか。じっくり聞かせてもらう必要がありそうです。

そうですね(笑)。ソニックガーデンでは、みんなで合宿に行って、それまでの成果を振り返ると同時に、未来に向かって何をするのか、ほかのメンバーの前で宣言するという”習わし”があるんです。

”習わし”ですか…。

ソニックガーデンには、ルールを持たないというスピリットがあるんで、そういう表現になるんです。「そういう決まりがある」って感じではなく、「そうした方がいいね。そうしよう!」って感じでしょうか。

強制されて仕方なく、ではなく、納得して前向きにってことなんですね。

そうです。その合宿での宣言がきっかけなんです。実は宣言を控えた前の晩、僕は何を宣言したものか、妙案が思いつかずになかなか寝付けませんでした。それが、翌朝目覚めた瞬間、そのアイデアが降ってきたんです。「海外で働こう」って。

(しばし言葉に詰まる)…。ちなみに、前田さんは海外で働かれたご経験は?

その当時ですか?ありません。それどころか、パスポートも持っていなかったし、本州から出たこともありませんでした(苦笑)。

(さらに言葉に詰まる)……。海外で働くというか、長期滞在するっていうことがどういうことかはご存じだったんですか?

ビザ *1 っていうものがあることは知っていました。でも、そこまでです。そこからのことは、その後調べて初めて知りました。そもそもこんな宣言、「さすがに止められるだろう」って思っていましたから。そしたら、なんと「いいねぇ」とか「いいじゃん」なんて反応ばかりで、引くに引けなくなっちゃったんです。

なぜ、”海外勤務”だったんでしょう?

正確には「英語圏の国に長期滞在して、現地から遠隔勤務をしながら、英会話力を飛躍的に高めます」って感じなんです。おかげさまで、その少し前から、一人前として認められて、”在宅勤務可”のお墨付きをいただいていたんです。それが、頭に残っていたんですね。それと、英会話力は高めたいと思っていました。海外、特に欧州で暮らしてみたいな、とも思っていました。 でも、理屈で説明できる感じじゃないですね。

なるほど。その画期的な宣言が認められて、というか引くに引けなくなったんであって、会社や社長の企画で「行ってこい」みたいなことではないんですね。

まったく違います。ウチの社長は、社員のチャレンジを応援すると公言していますし、事実応援してくれますが、個人の考えを尊重というか重視します。「これをやりなさい」と言われることは、想像できませんね。

※1ビザ:国が自国民以外に対して、その人物の所持する旅券が有効であり、かつその人物が入国しても差し支えないと示す証書のこと。

第一希望はイギリス

ところで、海外勤務の準備、前田さんはどこから手をつけたんですか?

海外に長期滞在するために利用できる制度を調べることですね。もちろん、実際に海外から勤務できるか、それを実証するにはどうすればいいか、考えました。

一転して具体的になってきましたね(笑)。まずは、ビザの話を伺いましょう。

調べてみたら便利な制度がありました。ワーキングホリデー制度 *2 です。「ギリホリ *3 」なんて言葉もあるくらいで、結構有名なんですね。僕も結果的にはそのギリホリ組でした。まず、日本とワーキングホリデー協定を結んでいる、英語圏の国をリストアップしました。オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、イギリス、アイルランドってところです。僕は北米よりも欧州に関心というか、あこがれがあったんで、1位指名はイギリスでした。でも、これが尋常じゃない競争率であえなく討ち死にしました。

そんなにすごいんですか?

申請の受理以前に足切りがあって、第一関門がウェブサイトの受付画面のにたどり着くことなんです。そのために、わざわざスクリプトまで組んで万難を排して臨みました。ただ、僕と大使館の間で、受付開始日時の理解に齟齬があったんです。気がついたら受付が終わってました(苦笑)。気を取り直して、次を選ぶことにしました。まず、オーストラリアとニュージーランドは、日本人が多いと聞いて除外しました。残りはカナダとアイルランドです。

なるほど、欧州に行きたかったんですしね。それで、アイルランドを選んだんですね?

いえ、選んだのはカナダです。

※2ワーキング・ホリデー:二国間の協定に基づいて、青年(18歳~25歳または30歳)が異なった文化(相手国)の中で休暇を楽しみながら、その間の滞在資金を補うために一定の就労をすることを認める査証及び出入国管理上の特別な制度のこと。日本政府とワーキング・ホリデー査証(ビザ)に関する取り決め又は協定を結んでいるのは発効順に、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ、イギリス、アイルランド、デンマーク、中華民国(台湾)、香港の11か国。ビザに関する申請条件などは絶えず変化しているため、申請にあたっては各国の大使館やイミグレーションが開設している公式ページで公式な情報を確認することが重要。

※3ギリホリ:ワーキングホリデーには、参加年齢の上限(国によるがたいていは28~30歳)がある。この上限年齢に近いワーキングホリデー渡航は「『ギリギリ』のワーキングホリデー」という意味でギリホリと通称されている。

アイルランドのはずが、なぜカナダ?

どうしてカナダを選んだんですか?

はい、本命は確かにアイルランドでした。できれば、一年間滞在したいと思っていました。でも、さっき、渡航準備のところで、海外勤務が可能かどうか確認が必要って話をしましたよね。いくらみんなが背中を押してくれたといっても、いくら机上では行けるって見込みが立ったとしても、「行きました、仕事になりませんでした」では他のメンバーの信頼を失ってしまいます。何よりお客様にご迷惑をおかけしてしまいます。ですから、そういうことが無いように、ステップを踏みました。

なるほど。さすがプロフェッショナルですね。

ありがとうございます(笑)。それで、まずやったのが、純然たる在宅勤務です。当時住んでいた川崎の自宅からリモートワークをしました。これはぜんぜん全くなんの問題もありませんでした。会社のメンバーやお客様との打ち合わせも、youRoomやSkypeで十分事足りました。おかげで、僕の仕事はネットワークさえあれば場所に縛られない、ということが、リアルに実証されました。それで、 次は、「海外旅行の経験もなく、会話力も心許ない状態でも、現地で住居を見つけて勤務に支障がないように生活することができるか」という実験をしようと思いました。 カナダを選んだのは、カナダで2カ月ほど滞在した後で帰国してから、本申請の準備をしても間に合いそうだったからです。

カナダも実証実験だったんですね。当初の印象と違って、ずいぶんと用意周到なんですね。

それほどでもないですよ。到着した日の宿しか決めずに出発しちゃいましたし。

(再び言葉に詰まる…)用意周到なのか、行き当たりばったりなのか、わかりませんね…。

この話をした人、みんなに言われます(笑)。でも、「続けられないって判断したら、即撤収」というのは、自分の中で明確に決めていました。それに、滞在先を決めるための準備はちゃんとして行きました。日本ではよく何でもかんでも「ルームシェア」って言いますけど、あれは厳密には一つの部屋を複数の居住者で共用することす。僕は一人の時間も持ちたかったから、ルームシェアはしていません。それから、カナダにはカナダの、アイルランドにはアイルランドのシェア事情があります。カナダの場合は、戸建てを建てる際に第三者に住居の一角を貸し出す前提で設計するケースが多いみたいです。

玄関もお風呂も別々の二世帯住宅みたいな感じですね。

そうかもしれません。それに、そうしたスペースを外国人が借り受けるのを手伝ってくれるサービスがあります。ボランティアではなく、フィーを支払います。僕は日本からそのサービスを申し込みました。出発前は結構あわただしかったこともあって、着いた日のホテルの予約とその人と空港で待ち合わせが、第二次実証実験の事前準備のすべて、みたいな状態になってしまいましたけれど。

予想外に順調な展開

道中はどうでしたか?宿泊先を見つけるのも大変だったんじゃありませんか?

初めての海外旅行でしたけど、身構えていたほどのことはなく、快適なものでした。入国審査もすんなり行きました。コーディネータとの合流もスムーズでしたし、何より滞在先が一軒目ですんなり決まりましたから。ネットワーク接続以外はぜいたく言わなかったというのも大きいでしょうけれど。それで、実際に生活を始めてみると、これまた順調でした。

ダメだったら即撤収という悲壮な決意だったのに、肩すかしを食った感じですね。時差はどうしていたんですか?

それが唯一の難点でした。カナダにはサマータイムがありますが、基本的には日本9時~17時が、カナダでは16時~0時となります。朝起きて人生をエンジョイして、夕方から仕事です。これが、朝型の僕にとっては、実に残業感満点の残念な時差だったんですね。仕事以外の時間も、英会話のレッスンを受けたりもしていましたから、あまり観光を楽しんだりはしませんでしたね。

そういえば、出発はいつだったんですか?

僕がカナダに出発したのは、2011年2月のことでした。

ということは、東日本大震災のときは、カナダにおられたということですか。

はい。ちょうど東京のお客様とSkypeでミーティング中だったんですが、お客様のほうは机の下に隠れなければいけなくなって。その後もソニックガーデンのメンバーから被災地の情報が送られてきたりしました。その時はもちろんずいぶんと心が痛みましたが、少し経つと場所に縛られず働くということの意味を再考させられました。そして、自分が選んだ「場所に縛られないで働けるようになる」という道はまちがっていないと再確認しました。

東京にいなかったことで開発作業は進捗したんでしょうし、組織としてみれば事業継続とか、リスク回避の方法としてのリモートワークの有効性が図らずも証明されたことになりますね。

そうですね。カナダでの滞在は2ヶ月限定でしたので、ほどなく帰国し、アイルランドへのビザ申請の準備を進めました。今度は、本番、一年の滞在です。2011年4月のことでした。


次回はいよいよアイルランドへ。1年間のアイルランド生活で得たものは?


 インタビュアー/ライティング:古田英一朗

【お知らせ】ソニックガーデンの本が出ました!

リモートチームでうまくいく~マネジメントの"常識"を変える新しいワークスタイル

企業に所属することで得られる安定と、自分の好きな場所で働く自由を両立できる新しいワークスタイルとして注目を集めている「リモートワーク」。本書はそのリモートワークが抱える問題に対してソニックガーデンが実践してきた取り組みと、そのノウハウから生まれた「リモートチーム」というマネジメントの手法についてまとめています。あらゆる組織、チームのマネジメントと個々人の働き方を考えるヒントとなる一冊です。(著者:倉貫義人 出版:日本実業出版社)

「納品」をなくせばうまくいく~ソフトウェア業界の"常識"を変えるビジネスモデル
「納品」をなくせばうまくいく 表紙

本書は、IT業界の、とりわけソフトウェア開発の業界で〝常識〟とされているビジネスモデルを変えてしまおうという試みです。ソフトウェア業界にはびこる多くの問題を解決するために取り組んだ新しいビジネスモデル「納品のない受託開発」について書いています。「受託開発」なのに「納品」をしない、なぜそんなことをやっているのか、そして、なぜそんなことが実現できるのか、その秘密について解説したのが本書です。(著者:倉貫義人 出版:日本実業出版社)