プログラミングでお客さまが泣いた!?ソフトウェアの仕事を「問題解決」と再定義したソニックガーデン経営の秘密


ウェブとポッドキャストで配信中の、 IT系エンジニア応援番組!「アジャイルラジオ」 のゲストとして、弊社代表の倉貫を呼んで頂き、ラジオらしくざっくばらんにお話させて頂きました。そこで今回は、アジャイルラジオさんから特別に許可を得て、記事として書き起こしました。今回の記事は、その【後編】です。

「納品のない受託開発」と「ギルド」の秘密に迫った前回に引き続き、この後編では「納品のない受託開発」に取り組んでいる株式会社ソニックガーデンを経営する観点から、ビジョンや働きかた、お客様とのエピソードについて、代表の倉貫が率直に語ります。

ビジョンありきでお金を稼ぐ「お金は実はガソリンだ」

山根氏
前回に引き続き、倉貫さんのお話をいろいろ聞いてみたいと思います。
西氏
前回は時間がなくて、もうちょっといろいろ聞きたかったんですけど。いや、最初に一言言いたかったのが、とても素晴らしかったです。
倉貫氏
ありがとうございます(笑)。
西氏
ちょっと思ったことをお話させていただきたいんですけど。例えば、普通の一般企業とか会社ってお金を儲けるのが目的じゃないですか。
西氏
そこに対して、会社を辞めずに研修期間を設ける事で新しく入ろうとしている人と会社がマッチングできるか観察する期間があるってすごいですね。
西氏
普通はうちの会社の社員になるんだから、全て過去のことは清算してきてくださいという場合がすごく多いんです。そこが本当にすごく素晴らしいなと思いました。
倉貫氏
ありがとうございます。
西氏
あと、仕事のやり方。
チームでお仕事をされるって言っていたじゃないですか。スペシャリストの人たちが集まってなんかやるんですけど、スペシャリストが集まっても、結局、個々はすごいんだけど、個々以上の力が出せなくなっちゃうんです。
西氏
個々のコラボレーションによって、さらに大きな力を生み出すためには、やっぱりコミュニケーション力も必要なんです。でも、会社が中途採用をするときって、あるスキルを持っている人をとりあえず入れてみて、うまくいけば機能するんですけど、うまくいかない場合も結構ありますよね。
山根氏
コミュニケーション力とかチームとして上手くいくかとか採用の時に見ないですもんね。
倉貫氏
入ってから3カ月間の試用期間って、転職する側にとって相当リスクですよね。なので、あまり良くないと思っていて、その試用期間を入る前にやればいいじゃないかと考えたんです。個人のパーソナリティーもその期間で分かりますし。
西氏
その考えが出てこなかった。それを実践されているのがすごい。
倉貫氏
あとは、お金を稼ぐことが会社の主目的だというのも資本主義の幻想かなと思っているんです。私見になりますが、会社の目的というのは、我々でいう会社のミッションがあって、ビジョンがあって、それを達成することが会社の目的なんです。
倉貫氏
ビジョンがあるんだけど、そのビジョンを達成するためには仲間が必要だし、仲間がいるってことは食べていかなきゃいけないし、事業が続けられないとビジョンが達成できないので、そのためのガソリンとしてお金がある。
西氏
なるほど。
倉貫氏
なので別に、ソニックガーデンはお金だけが目的で会社をやっているわけでもないし、仕事をやっているわけでもないんです。だから、お客さんがいっぱい来たから社員いっぱい入れたらいい、というのはないんです。そのこと自体が目的ではないので。そして急激に人を入れるというのは、ビジョンの達成には寄与しないのでそれはやらない。
山根氏
むしろ、マイナスになるんですか。
倉貫氏
そうです。なのでお金というのは、結局その結果でしかない。働くだけだとダメで、ちゃんとそれが回せるようにしていくのが、経営だということですよね。つまり、お金ありきではなくて、ビジョンありきでお金を稼ぐようにしていくということをやる。
西氏
今までいろいろな人の話を聞いたんですけど、「ビジョン」と言いつつも、実はやっぱり「お金なんだよ」ってみんな言うんです(笑)。「お金は実はガソリンだ」というのは初めて聞いたんで、ちょっと今、目から鱗が10枚ぐらい落ちてきました(笑)。

お客さんのことだけを見て仕事をする

倉貫氏
会社を経営する指標は、売上高とか、利益率とか、社員数とか、結構いろんな目標がありますよね。でもソニックガーデンでは売上高を目標にしてなくて、利益率も目標にしていない。社員数も目標にしていないんです。社員1人1人が楽しく今の日々の仕事が過ごせることが一番大事だと思っているんです。
倉貫氏
次に大事にしているのは、今が楽しい状態ならば、それをずっと続けようということ。永続的に楽しい状態をしていくということが会社で大事にしている価値観なんです。なので、売上高も利益率も社員数もあまり気にしない。結果として、会社としての売上目標がないんです。毎年、売上目標がなくて、個人目標もない。さらに言えば部署もないんです。
山根氏
うちもありません、一人だから(笑)。
倉貫氏
でも、日々みんなが毎日ちゃんと働けば、ちゃんとお金が入って、ちゃんとお給料が出て、予定よりも頑張ったら、ちゃんと期末にボーナスが出るという仕組みに会社をしているんです。みんなはあまりお金のことは気にせずに日々の仕事をちゃんとやる、お客さんのことをちゃんと見る。それだけでいい。
西氏
なるほど。
倉貫氏
どうすればボーナスが出るかというと、お客さんと長いお付き合いができたらボーナスが出るので、みんなはお客さんを満足してもらうということだけにフォーカスをする。
倉貫氏
利益率も全然評価していなくて、実はソニックガーデンは起業して1、2期目ぐらいはものすごい利益率だったんです。でもそれは創業メンバーだけだったので創業メンバーの給料を減らせば、当然ですが利益率が結構高くなるので。
山根氏
そうですね。ほぼ人件費ですから、この業界は。
倉貫氏
そう。この業界は人件費だけみたいなものです。そして、途中から社員が増えてきて、中途で入ってきてくれるメンバーが増えてきて、考えを改めることにしました。
倉貫氏
前は、高い利益率を誇るべきだと思っていたんです。たとえば、イケイケのIT企業にあるような利益率が40%みたいな。でも、利益率を上げるって結局、社員の給料を下げているだけなんですよね。
山根氏
そうそう。
倉貫氏
そう考えてから、もうソニックガーデンはそこからあえて利益率を下げることにしました。利益率が低くても恥ずかしいことはないなと。それで社員が幸せならそっちのほうがいいなという発想。なので、利益率も見ない、売上目標も見ないみたいな感じの会社でやっています。
西氏
お客さんを見て、あるべき姿でお仕事をすると上手くいくというのが体現されているのですごいなって思います。
倉貫氏
エンジニアも気持ちがいいですよね。お客さんのことだけを見て、上司を見て仕事するわけでもないので。
山根氏
そうそう。
倉貫氏
社内を見て仕事するわけでなく、お客さんだけ見て仕事ができるというのは気持ちがいいということでやってます。
西氏
過去、僕がお仕事してきた中で、僕は組み込みを主にやってきたんですけど、直接お客さまとお話するってなかったんです。大体、製品を販売しているメーカーさんのお客さんと話をするんで、直接エンドユーザーとお話はしないんですけど。
西氏
その方々から「これはいいね、あれはいいね」って、直接言ってもらえるとすごくうれしいんです。でも、やっぱり会社に勤めていると、上司の顔色を伺って仕事をしているっていうのが多いので、そういうのができるというのはすごくいいなと思ったんです。
倉貫氏
そうですね。ありがたいことに直接お客さんとお仕事をすることしかしないので。ダイレクトに反応をもらえるって、エンジニアにとって最高にうれしい。
倉貫氏
初めてプログラミングを覚えたときって、自分が作って動くのもうれしいんだけど、それを友達に見せて「すげえ」って言われたらやっぱりうれしい、みたいな。作ったものの反応をもらえるってやっぱり最高にうれしいんですよね。
山根氏
今でもご自身でプログラムを書かれているんですか?
倉貫氏
今は趣味程度にしか書けていないです。ビジネスとしてのプログラミングをすると、本業ではないので、いろいろな人にご迷惑をかけるので副社長に叱られます(笑)。

プログラミングでお客さまが泣いた!?

倉貫氏
「納品のない受託開発」のお客さんとのエピソードで、AsMamaさんという会社さんの担当で前田さんという人がいるんですけど。彼には「プログラムで女性を泣かせた」という伝説があるんです。
山根氏
ええっ、どういうことですか?
倉貫氏
そのAsMamaさんという会社は、働くママのための、子育ての助け合いができるサービス「子育てシェア」を運営されている会社です。AsMamaの社員も全員が働くママさんな訳で、代表の甲田社長も働くママさんです。
倉貫氏
で、そのAsMamaさんとの毎週の打ち合わせでの出来事なんですけど、AsMamaさんはマッチングサービスなので、地図が出てどこに誰がいるかフワっと見えたらやっぱりうれしいという話を、あるとき甲田社長がされたんです。
山根氏
うんうん
倉貫氏
ご本人はエンジニアではないので、そんなことは無理かな思いながら言ったんでしょう。だけど、担当の前田さんが打ち合わせ中に「ちょっと時間ください」って言って、隣で別の話をしている5分ぐらいでGoogleマップを組み合わせて、目の前でバーッと作って「できました」って見せたんです。
倉貫氏
そうしたら、甲田社長が「すごい!」って泣き出しちゃって。そんなことって夢だと思っていたことが目の前で、しかも、すぐにできたことに感動してもらえたんですね。そこからもうガッチリと信頼を得て、前田さんはプログラムで女性を泣かせたって伝説を残したんです。
西氏
かっこいいな。
倉貫氏
でも、これは前職のSIerだったら、これは絶対やっちゃいけないことなんです。
山根氏
いけないですよね。
倉貫氏
だって、打ち合わせ中にお客さんが言っていることを目の前で作って「はい、どうぞ」って。お金にならないことをやるわけじゃないですか。
山根氏
普通は「まずは持ち帰って検討します」とかになりますよね。
倉貫氏
これまでだと難しい顔で「難しい」って言ったほうがいいってされるんだけど。「納品のない受託開発」なら、別にそれで儲かるとか、儲からないとかがないので、なんぼでもやっていいんです。お客さんが喜ぶなら何をしてもいいというやり方をしています。
山根氏
まさに納品じゃないですもんね。
倉貫氏
そうです。そうして作ったもので泣いてもらったらエンジニアとしては嬉しいですよね。

小さい会社がたくさんある未来

西氏
ちょっとお伺いしたかったんですけど。将来というか、今後、今までやられてきて、この次に何をされたいとかありますか。
倉貫氏
会社としては、人数が少ないので、入るにしても半年に1人みたいな、ちょっとずつのペースなんです。そういう小さな会社の一番の課題って高齢化問題なんです。
西氏
なるほど。
倉貫氏
小さいことはかっこいいんだけど、そのまま20年、年を取ったらおじいちゃんの会社になるというのは避けたいなと思っていて。それで、新陳代謝を生むにはどうすればいいかなということで、のれん分けという制度を作ろうかなと。
倉貫氏
ある年齢までいったら、会社を卒業して自分で会社を持ってもらう。それで自分で会社を持ちつつ「納品のない受託開発」をそのままやっていただく。そこでまた仲間を増やして、弟子を育てて、そこからまたのれん分けしていくという制度です。うちの会社から何人も出ていって、同じような会社がたくさんできるようになっていくというのが目指していることの1つです。
西氏
既存のソフトハウスが全部駆逐されてきそう(笑)。
倉貫氏
そんなに一気に駆逐はされないでしょうけど(笑)。
西氏
それを本当に本格的にやり出したら、きっとすぐ駆逐されちゃうでしょう。
倉貫氏
そうですね。悪い会社だったら駆逐されてもいいかもと思っています。でも、もしも私たちと志が一緒で、のれん分けじゃないけどソニックガーデンに共感して一緒にやりたいって言っていただいたら、それはギルドという形で一緒にやれますね。
西氏
なるほど、それがギルドですか。
倉貫氏
私見ですが、ソフトウェア開発の会社って大きくなくていいと思っているんです。結局、プロフェッショナルサービスの場合は、誰かが担当するから価値が出るような仕事です。そういう仕事って人数を増やして会社を大きくしても価値が出ないんです。
倉貫氏
頭数で勝負してもうまくいかないです。たとえば弁護士だったら、難しい法律の問題を解決するのに100人の弁護士がいれば解決するかというとそんなことはなくて、優秀な人がいないと解決しない。外科手術をする時に医大生を100人集めても手術は成功しなくて、やっぱり腕の立つ医者がいないとダメみたいな感じですね。

ソフトウェア開発の仕事は「問題解決」だ

倉貫氏
ソフトウェアの仕事を「もの作り」ではなく「問題解決」の仕事と再定義しているんです。「もの作り」の製造業だと考えたら、物を作ることがゴールになるので、品質の均一化をしたものが大事になる。
倉貫氏
でも「問題解決」の仕事なら頭数も均一化もいらない。なぜならソフトウェアは、お客さんの困っていることをプログラムの腕で解決をしてあげることが大事だから。
倉貫氏
25年か30年ぐらいかかるかもしんないけど、この日本の産業からソフトウェアの大企業ってなくなって小さな会社がたくさんある状態というのがビジョンなんです。
西氏
小さな会社がたくさんあったほうがいいというのは、何か具体的な理由ってあるんですか。
倉貫氏
さっき話した通り、ソフトウェアの会社1個1個が大きくある必要がないので。
西氏
そうか。そういう専門の集団があるみたいな。
倉貫氏
そうです。働いている人を見ても、大きな会社と今の小さな会社の両方を見てますけど、小さな会社のほうが責任もあるし大変なんだけど楽しそうに仕事をしているので小さい会社の方がいいと思うんです。
西氏
デカくなってくると、どうしても大企業病が蔓延してくる。あと、中途や新入社員の入社プロセス上、採用する人間性をある程度分からないまま採らざるを得ないんですよね。
西氏
それが大企業病の第1歩になっているような気がしているんです。
山根氏
昔は必要だったと思うんです。ソフトウェア開発にかかる機材とかが、どうしても個人レベルで購入とか難しかったり、ワークステーションとかでも何百万とかしている時代は、人を集めてやるしかないという時代ではあったと思うんですけど。今はクラウド等でどんどん低コスト化してきていると思うので。
山根氏
会社って大きくある必要性はなくなってきましたよね。
倉貫氏
そうですね。
山根氏
大きくして最初に資金を投入しないと何か作れないという時代ではなくなってきたよねとは思います。

業界と業種が違えば全てが変わる

倉貫氏
ビジネスにも種類があって、人を入れてスケールするビジネスと1人1人で解決するビジネスがあるんです。ソフトウェア開発はどちらかというと1人1人で解決するビジネスなので、たくさん人がいたらバリューが出るかというとそんなことがない。
山根氏
お客さんにとって一番の価値って、作らずにそれが実現できることだとも思いますし。それはありますよね。
倉貫氏
そう。実はそれができるのが「納品のない受託開発」なんです。お客さんも喜んでもらえるし、僕らもやりやすい。作らなくても実は価値があるんです。
倉貫氏
お客さんと月々定額でお仕事をさせてもらってやっていく中で、いろんな要望で出てきて例えば「こういうことやりたいんだ。画面の右端にちょっと小っちゃいチャットを作りたい」って言われたら、世の中を探したら既にあるんです。
倉貫氏
これが昔の仕事の仕方だったら作ったほうが儲かるので、「作りましょう」と言うと思う。でも、僕らは作らずに「これ、あるから使いましょう」って言ったら、それで満足してもらえる。世の中から無駄もなくなるし、すごくいいことだと思っています。
倉貫氏
だから、手を動かすことが価値だったところが、問題解決してあげることが価値になる。
西氏
なるほど。
倉貫氏
なので、従来の業界と業種が違う感覚がしていていますね。ソニックガーデンが今いるマーケットは業種業界がシステム開発の業界と違うんです。お客さんが違うってことだけじゃなくて、そもそも業種が違うので採用の仕方もそれは違う。
倉貫氏
教育の仕方も違うし、評価の仕方も違うし、会計の仕方も違うし、そもそも経営の仕方も違う。なので、全然普通のSIerさんとか、ソフトウェアの会社さんと比較にならない。
西氏
それは、ならないでしょうね。
倉貫氏
それは例えば八百屋とレストランを比較して「経営の仕方どうなんだろう」って言っているのと一緒ですね。
西氏
そうですよね。
倉貫氏
私たちはSIerの世界とは違う世界で違う仕事をしている、と考えています。

人は変えられないけれど、会社の仕組みは変えられる

西氏
よく未だに「うちアジャイルできないんですよ」とか「XPできないんですよ」という会社さんとか、そういうソフト開発されているのとかはよく見かけるんですけど。なぜやらないかとか、具体的な違いとかありますか?
倉貫氏
アジャイルをやってる会社ってあるんですか??
山根氏
やってるつもりかもしれません(笑)
西氏
アジャイルやってるというところをどこに置くかというところが問題だとは思うんです。
倉貫氏
そうですね。なので、個別の方法論に乗っけてみたいなことをやってるのはあるのかもしれないですけど。それをやってればアジャイルというのか、どうなのかみたいな。
西氏
ちょっと難しい質問ではあったんです。
倉貫氏
そうですね。でも、あまりそこの違いはない気がなくて、そもそも何がしたいのかなって感じがありますね。
倉貫氏
そして、アジャイルをできない状態を何とかしたいと思っているのは誰かってことですね。
西氏
なるほど。
倉貫氏
それが、その会社の一社員だとしたら「無理かもな」と思います。
倉貫氏
なぜなら会社を変えるってやっぱり大変なことなので。もしそこのアジャイルができてないけど何とか我が社はしていかなきゃいけないなと思っているのが、その会社のトップだったら、もしかしたら変われる可能性がある。もちろん簡単なことではないですけど。
西氏
ある社員の1人が変えたいと思ったとして、そこから変えようとすると、やっぱりまずは上の考え方を変えさせないと難しいということですか。
倉貫氏
そうですね。もしくは、自分が偉くなるか。
倉貫氏
本当にこれも私の長いSIer時代の経験からなんですけど、人を説得するって無理なんですよね、宗教でもない限り。人を変えるってやっぱり無理なことで、考えていることを変えるって難しいことなんです。
倉貫氏
「アジャイルにしていきましょう」って1人ずつ説得して回って、本当に変わるのかというとやっぱり難しいんです。そして、アジャイルをやらない人たちが悪い人たちかというと全然そんなことはなくて、普通に飲みにでも行ったらすごくいい人たちだったりするんです。
西氏
そうですね。
倉貫氏
じゃあ何でやらないのかというと、そういう仕組みの上じゃないからやらないだけなんです。真面目な人たちが別にアジャイルをやってないだけで、そこを説得してアジャイルをさせるというのは、やっぱり人を変えようとしていることで、無理があるんです。
倉貫氏
ただし、人は変えられないけど、仕組みは変えられるんです。仕組みを変えたら、みんながその枠の中で一生懸命に仕事するようになると思う。アジャイルせざるを得ないような仕組みがもしあるとしたら、一生懸命アジャイルをやると思う。
西氏
なるほど。
山根氏
たぶんね、単に経営者とかがきっと困ってないんです。
山根氏
アジャイルをやってないとこからやろうとすると、たぶん営業しに行くリーチの仕方も変えなきゃいけない。仕事のとってくるやり方も変えなきゃいけないし。どう価値を提供するかの仕方も変わらなきゃいけない。開発だけでキュッと終わるという話ではたぶんないと思うんです。
山根氏
いつもスクラムやっている集まりに行くと、絶対思うんですけど、SIerって実はめっちゃ儲かるやんという。
倉貫氏
そうなんですよね。儲かってるうちは変えない。
山根氏
ソフトウェア開発の今までの仕組みでアジャイルをやると、確実に儲からなくなるはずなんです。作らなくても無駄を省いてって作るものをキュって絞るってことは、たぶん今のSIerの仕組みだと確実に儲からないんです。だから、それは経営者はやりたがらない。
倉貫氏
やらないと思いますね。
山根氏
大きいところが「アジャイルを対応しています」とかいうところはたぶん嫌々やっているはずです。仕事を取るために、宣伝として使っているような印象があるんです。
倉貫氏
そうでしょうね。
山根氏
逆に怖かったのが、NTTデータさん。受注を受けるときに開発費を一切取らなくて保守だけでビジネスを回しています。大手さんにあれをやられると、実は僕らは結構太刀打ちできない可能性が正直言うとある。
山根氏
結局、それって1年とか2年とかのキャッシュは耐えられる、言ってみれば、ボンと金にものを言わせて生きているので。僕らは月々でちゃんと契約してもらって、もらっていかなきゃいけないのであれを本気でやられると結構ビジネスとしてはきついなとか思います。
倉貫氏
なので、アジャイルをやりたいけど構造上できないと思っている人は、アジャイルができる仕組みのところに行くしかないと思うんです。ソニックガーデンの立場でいうと、「独立してギルドに入ってください」って感じなんですけど(笑)。
山根氏
半年間会社を辞めずに。
倉貫氏
そうそう、辞めずに。独立してフリーランスになるにせよ、起業するにせよ、エンジニアの人たちってビジネスがあまりうまくないな、というか。それは勉強をやってないし経験もないからでしょうけど。
倉貫氏
たまたま私はこういう経験をさせてもらって、今はビジネスが多少は分かるようになってきて、やれているのでノウハウだったり経験がある。そうしたことを、ギルドという形でちゃんと伝えようと思っているんです。
倉貫氏
なので、独立してやっていきたいというエンジニアの方には、ぜひ来ていただいたら一緒にやれるのにな、というふうに思っています。「いや、ソニックガーデンが新しく考えたから、俺はまた違う受託のビジネスモデル考えるぞ」とか大変だよ、と(笑)。
山根氏
一番の近道は一旦とりあえずギルドの門戸を叩いてみたらどうですかってことですか。
倉貫氏
入れるかどうかは分かんないけど(笑)。
山根氏
だから、会社を辞めずにね。
倉貫氏
辞めずに。そうそう(笑)。
山根氏
オチがついた感じが。
(一同笑)
西氏
そろそろ時間ですね。
山根氏
そうですね。2回に渡って、貴重なご意見をお話していただきありがとうございました。
倉貫氏
とても楽しかったです。ありがとうございました。
西氏
本当にありがとうございました。

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