デジタルマーケティングですべての飲食店を支えたい。株式会社favyのチャレンジは続く


株式会社favyは、飲食業界向けのマーケティング支援を行うベンチャー企業です。
美味しいお店を紹介するメディア『favy』と、飲食店向けにお店のホームページが作成できる『favyページ』などを運営しています。
サービスの展開や開発に共通するテーマは「生産性」。デジタルマーケティングを飲食業界に広げたいという思いを伺いました。


インタビューにご参加いただいたみなさま

  • 株式会社favy 代表取締役社長・髙梨 巧さま。本プロジェクトのオーナー。
  • 株式会社favy 取締役CTO・新堀勝さま。favyのシステム開発責任者。
  • 株式会社favy 大畠拓さま。フロントエンジニアとして関わる。
  • 株式会社ソニックガーデン 遠藤大介/本件担当プログラマ


集客につながるデジタルマーケティング。飲食業界の課題を生産性の高いシステムでサポートする

まず、favyの事業について、教えていただけますか?
高梨の顔高梨
favyは飲食業界のマーケティング支援を行っています。代表的なサービスに『favyページ』という、飲食店さんが簡単にホームページを作成いただけるシステムがあります。また、グルメニュースや飲食店情報を扱う分散型メディア『favy』も運営しています。
新堀の顔新堀
メディア運営のみであれば、CMSとしてWordPressなどを使うという流れだと思うのですが、『favy』と『favyページ』は同じシステム上に作っているのが特徴です。
遠藤の顔遠藤
メディアとしての機能から、favyの記事を作成、飲食店側がお店のホームページを作るところまで、すべてひとつのシステム上にあります。
メディアと飲食店のホームページは違うものと感じますが、ひとつのシステムにしたのはどのような理由があるのでしょうか。
高梨の顔高梨
生産性を高めるためですね。たとえば、favyページを利用してお店のホームページを作成した『A』という飲食店さんがあるとします。『A』が登録した画像や店舗データなどはfavyの編集チームにも共有されるので、『A』の紹介記事を書くときに活用できます。また、記事が公開されたら、『A』のホームページに新着情報として自動的に表示されるという仕組みにもなっているのです。

新堀の顔新堀
favyページでホームページを作ったときのデータを裏側でつなぎ、favyの各サービスでもデータを活用できるようにしています。

なぜかといいますと、飲食店さんは忙しく「ご紹介記事を書きますのでテキストや画像をください」というお願いがしづらいです。また、SEO対策のためのリッチなコンテンツもコストパフォーマンス良く作りたいですよね。そこで考えたのが、シームレスなデータベースを作りデータを流用することでした。すると、なるべく手作業を挟まずに生産性高くコンテンツを作れることができるのです。
『食べログ』や『Retty』、『ぐるなび』などのグルメ系メディアとは異なる立ち位置なのでしょうか?
高梨の顔高梨
あげられたサービスやメディアは、検索して飲食店を調べることに特化しています。favyは、たとえば『東京ウォーカー』や『dancyu』のような外食系の雑誌という位置づけです。なんとなくソーシャルメディアを見ていたらfavyのコンテンツが流れてきて、お店に興味を持つというユーザー行動を促しています。Facebookのアルゴリズムを使えば、エリアターゲティングなどもできますから。ソーシャルメディア上で、チラシを配っているというイメージでしょうか。
新堀の顔新堀
検索型のグルメ系メディアは、食事に行こうという行動が先に決まってから目的に合う飲食店を探すことが多いですよね。favyは行く予定のなかったお店へ行くというという機会の創出を目的としています。たとえば、デートの下見のために偶然雑誌に掲載されていたお店へ行くという経験はね、男性は結構あるんです(笑)。
favyは飲食店が主役でもあるんですね。
高梨の顔高梨
マーケティングという軸で説明すると、飲食店はどうしても集客が手薄になってしまうんです。他の企業に置き換えると、創業時にR&Dをして商品を作り、顧客に提供し、売れ行きを見ては新商品を投入するというのがひとつのサイクルかと思います。しかし、飲食店の場合は新規開店時にメニューを考えて、そのままというお店がほとんどです。マーケティング戦略を考えて新しい商品を開発するだとか、プロモーションや営業、広報をするというポジションがなくビジネスが続いています。
新堀の顔新堀
定期的に新メニューを作って、マーケティング戦略を考えてというのは、よほど大手の飲食店チェーンでないとできないですね。

大畠の顔大畠
開発でたとえると、バージョン1.0のOSがずっとローカルでアップデートされていて、新しいシステムがリリースされるわけでもなく、大きなアップデートもないまま10年続いてますというようなものです。
高梨の顔高梨
favyページは、大手外食産業の企業だけではなくて、中小や個人経営の飲食店さんでもデジタルマーケティングに取り組めるというシステムになります。ホームページを作っていただければ、自動的にソーシャルメディアやSEO対策が取れるようになっているんです。さらに、favyの記事が集客に繋がったなどもトラッキングができます。


スマホひとつでホームページが作れる。利用者目線の開発にこだわる理由

ホームページ作成を入り口にして、デジタルマーケティングを効率良く行えるシステムということですね。ユーザーからは、どのような声がありましたか?
高梨の顔高梨
とにかくスマートフォンだけで完結できる、専用のアプリをインストールしなくてもよいという点が喜ばれています。
大畠の顔大畠
開発の視点でいうと、アプリのほうがやりやすいんですけどね。
高梨の顔高梨
別の事業でアプリベースのシステムを開発したとき、アプリをダウンロードするというところで、つまづく方が多いということが分かりました。その経験をもとにして、利用者である飲食店さんが使いやすいようにブラウザベース、かつフルレスポンシブルで開発しています。
誰でも使えるように、開発側よりも利用者目線で作られたのですね。
新堀の顔新堀
コンピューターに対するリテラシーが人それぞれですから、誰でも使えるようにすることを最優先で取り組みました。その点はとても高く評価されていまして、「じゃあ使ってみよう」という声もいただいています。
大畠の顔大畠
それでも、なかなか飲食店さんは管理画面にログインされないんですよ。今はアクティブ率、使い続けたくなるような仕組み作りに取り組んでいますね。
高梨の顔高梨
われわれは飲食店にとって本当に価値のあるサービス作りに注力しようと考えています。そうなると、やはり飲食店さんの認知や集客を高めるというところを拡充したい。スタートアップですから、限られたリソースをどこへ投入するかということを丁寧に考えていいますね。たとえば予約サービスのように、すでに他社で良いシステムがあるものはやらないというように、選択と集中をして開発しています。
新堀の顔新堀
もちろん、メディアとしてのfavyはユーザー目線で面白いコンテンツを提供しています。飲食店さん側から見ると、favyに登録して更新してたら最近売り上げが伸びてるなという状況を作りだしたいんです。まずは個人経営の飲食店さんに使っていただきたいですし、チェーンさんでも、favyを使ったら良い結果になるというのを目指して動いてる状態です。


理念に共感し、お互いの得意分野を学び合う。favy内エンジニアチーム+ソニックガーデン・プログラマという組みかた

開発にあたってのエピソードを伺えますか。
高梨の顔高梨
favyのプロジェクトは、準備や実装期間も入れると会社の創業前から取り組んでいます。その中で、開発した機能を消した割合がとても少ないです。20%いかないんじゃないですかね。
無駄な開発をしていない、生産性高く開発ができているということですね。
新堀の顔新堀
新規ビジネスの開発であれば、手戻りで「それ違うよ」と全部やり直すことがよくあるんです。
遠藤の顔遠藤
favyについてはほとんどないですね。ひたすら改善に集中しています。
それは、なぜでしょうか?
高梨の顔高梨
私たちが、システム設計にあたりきちんとプロセスを取っているということもあるのですが、ソニックガーデンさんとのお付き合いが長いというのもありますね。お互いの理念をよく理解をしているといいますか。
新堀の顔新堀
favyを創業するまえにコンサルティング会社を経営していたのですが、ソニックガーデンさんと同じように定額制で納品しないというスタイルだったのです。
高梨の顔高梨
実はその理念の部分で意気投合し、両社のお付き合いは始まっているんです。favyについても、こちら側がやりたいことを具現化して正しく伝えるという努力はしていましたし、遠藤さんもこちらの意図をある程度組んだ上でプロセスを進めてくれています。作り込むところ、改善がしやすいように余裕を持たせて作るところなど、メリハリを持たせていましたね。だから、手戻りや実装ミスがなかったんじゃないかなと思います。
価値観を知っているために、お互いのツボがわかるといった感じでしょうか。
遠藤の顔遠藤
もう少し具体的にお話しますね。たとえば、ある機能を実現するにあたってAとBという2つの方法があったとします。その場合に「最初の設計ではAを考えていたけれど、一部の実現方法をかえてBはどうでしょうか。実装も楽だし、今後のメンテナンスもしやすいです」というような提案をすると、利用者の使い勝手が悪くなるなどがなければ、Bの方でいこう!という判断をfavyさんはしてくださいます。どうしてもAに近づけたいという話になっても、お互いにどこが実装の上でネックになるのかを理解した上で、スケジュールや優先度の調整を進めています。だから、あんまり無茶なコードがないんですよね。
新堀の顔新堀
利用者視点で判断することはあっても、発注者として「Bじゃないと見た目がカッコ悪いから嫌だ」というような判断はないですね。
遠藤の顔遠藤
合理的に判断いただいているので、favyは大きなシステムなのですがソフトウェアとして無理がないんです。
ソニックガーデンとして、お客様の企業にエンジニアチームがあるというのは珍しいですよね。
遠藤の顔遠藤
珍しいですね。
新堀の顔新堀
favyで8名のエンジニアとオフショアの開発チームが1カ所あります。この1年半でチームがスケールしましたけど、開発が遅くなるということは起きていないですね。
社内に内製できるエンジニアチームがありつつも、あえてソニックガーデンと一緒に開発をするのは、なぜでしょうか?
高梨の顔高梨
やはり開発力が高いことです。また、週1回のスクラム型のミーティングを行っているのですが、遠藤さんにも参加いただいています。やっぱり外部の方がいるんだとなると、アプトプットをしなくちゃという意識づけにもなりますし、有効的ですね。途中で、開発全体を見る顧問になるとかソースを見るだけにしましょうか、という話もあったんですよ。
新堀の顔新堀
でもそれ、遠藤さん楽しいの?となって(笑)。システムを作っていたいタイプだよね。
遠藤の顔遠藤
コード書きたいと(笑)
高梨の顔高梨
じゃあ、やはり一緒にやりましょうということに至っています。
大畠の顔大畠
僕はフロントエンジニアとして静的な部分がメインになりますが、Railsのコードを書く場合もあるんです。そのとき、つい我流で書いていると遠藤さんから「こういうほうがいいですよ」と教えてくれますね。
遠藤の顔遠藤
柔軟に、その時どきで組み方を考えながら進めています。

うまく連携を取りつつ開発ができているということですね。
新堀の顔新堀
以前、お互いのノウハウを学びあう勉強会を行ったこともあります。ソニックガーデン流の開発を学び、favyからはマーケティングノウハウを学んでいただくという内容です。これを行うことで、さらに共通言語化されたのはすごく良かったですね。
遠藤の顔遠藤
とても楽しかったですね。僕はマーケティングに関しては正直よく理解しきれていなかった部分もあったので、なぜその仕様なのか?と気になることがあったんですよ。
新堀の顔新堀
たとえば、データを登録して確認画面を挟むか挟まないかというとき、エンジニア視点では「入力ミスを減らすため」と見ます。でも、マーケティング視点の場合は、ユーザーの行動が想定通り完了しているかという完遂率を測りたいんです。すると、サンクスページを作って欲しいというマーケティング側とポップアップでノーティス出せば問題ないよねというエンジニア側でズレが生じてしまいます。

確認ページ入れてくださいねという仕様だけ伝えてしまうと、「なぜそうする必要があるのか」が抜けているので、とにかく確認ページを入れればいいということにもなってしまいますし。
遠藤の顔遠藤
コンバージョンをトラッキングしたいという本来の理由がわかれば、じゃあタグだけ叩く仕様にしますねという返しができますし、先手を打って仕込んでおくこともできるんです。
高梨の顔高梨
ソニックガーデンさんの強みは、一般的に多様化されてるような開発領域のものを、とても早く、きれいなソースでコンパクトに作る。しかもエンジニアがいない会社でも、まるで内製のエンジニアのように気の利いたシステムを開発されるというところだと思います。
遠藤の顔遠藤
多様化されている分、お客様ごとに求めるシステムは違ってくるはずなんですよね。でも「どんなシステムが必要なのか」がわからなくて……というお客様も多い。ソニックガーデンはそこをきちんとヒアリングして、お客様のビジネスに合ったシステムを作るのが得意です。favyさんは事業フェーズが進み、内部のエンジニアチームも大きくなってきたので、チャレンジすることも増えましたね。
高梨の顔高梨
ソニックガーデンさんが良い意味で個人主義で、大事な根幹のマインドの部分や技術の部分が横串で通っている。その状態で、それぞれの仕事は任せるよというスタイルだから成り立っているのだと思いますね。


自分たちで飲食店を経営し、サービスの効果を検証。飲食業界のデジタルマーケティングはfavyが創る

最後に、今後のビジネスについて教えてください。
高梨の顔高梨
favyはデジタルマーケティングを使って、リアルな集客に結びつけるサービスです。ならば、まず自分たちで効果を示せるお店を作ってみようということで、4店舗ほど飲食店を経営しています。
大畠の顔大畠
どこも1ヶ月先ぐらいまで予約がとれないという状態です。
新堀の顔新堀
お店では、仮説を立てて、検証していくためにA/Bテストを行っています。たとえば、メニューのクリエイティブを変えたり、テーブルを分けて味の提供を変えたりすることで、オーダー数や評判に差があるのか?などを実際にデータを取って検証しています。
大畠の顔大畠
メニューブックを変えたら売り上げがどうなるのか?も検証しましたね。
高梨の顔高梨
まだ仕組みを作っている途中ですが、favyを見たお客さんが来店したかというトラッキングもしたいと考えています。たとえば、ラーメンのページを見ている人が本当にラーメン屋へ行くのか?という行動を、データとして連携できればと思っています。経営しているお店では、favyを見て予約をしたお客さんが、どんなものを頼み、会計がいくらになるのかということを手集計で行っています。これをいずれは自動化してトラッキングできるようにしていきたいですね。
favyで何軒かお店情報を閲覧して来店したお客さんとそうでないお客さんがいた場合、単価が違うかもしれないという仮説があるわけですね。
高梨の顔高梨
favyの記事に取り上げていたメニューの注文率が、急激に上がるというデータはあります。
遠藤の顔遠藤
トラッキングまでやるというのが、すごいですよね。何となく感覚でやらないで、全部データを取って、テストした結果でサービスにつなげている
高梨の顔高梨
できればそれをすべての飲食店さんにご提供できるところまでいきたいですね。俗にO2Oと呼ばれるマーケティングの仕組みの解決策のひとつになりそうだなと、今つかみつつあるところです。
アパレルや実店舗とECサイトを持つサービスなど、幅広い業界で使えるような仕組みになりそうですね。本日は、ありがとうございました。

(構成・執筆/マチコマキ)


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