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Rubyで開発した基幹システム「Panair Cloud」が新しい電力サービスを作る【第3回】


電力小売供給基幹システム「Panair Cloud」を運用・開発する株式会社パネイルとソニックガーデン。Panair Cloudは、プロダクトオーナーであるパネイル代表取締役社長の名越達彦さんとソニックガーデンのプログラマー・伊藤 淳一の二人三脚で開発しています。大きなシステムを開発するには、本当にたくさんのエンジニアが必要なのか?システム開発にまつわる先入観について話し合いました。

目次
  1. ベンチャー企業が、お堅い電力業界へ参入するまで
  2. 電力業界に、ベンダー企業からベンチャー企業への流れを持ち込む
  3. 少人数で、電力会社は運営できる
  4. 日本の電気代は、ITの技術で下がります

テクノロジーとビッグデータで、スキルを補いオペレーションの全体最適も叶える

名越の顔名越
実際にPanair Cloudの画面をお見せしますね。このグラフは、電力がどのようにに使われているのかを示したものです。夜は電気を使わない、昼はだんだんと電気を使っていって…というように、使用量が波のような推移を描きます。ここから、電力の調達量が見えてくるわけです。
倉貫の顔倉貫
Panair Cloudの機械学習は、このあたりで活用できそうですね。たとえば、昨年度の利用実績から、今年の需要を計算するというようなイメージが浮かびます。
名越の顔名越
そうですね。従来の基幹システムですと、需給調整は担当者の感覚に頼る形になります。
倉貫の顔倉貫
職人技になるわけだ。もし読みが外れて、供給が間に合わないとなったらどうなるのですか?
名越の顔名越
制度として停電が発生しないようになっています。東京電力などの一般送配電事業者により足りない分を補給する仕組みが働くのです。その代わり、小売電気事業者は割高料金を払う必要があります。この仕組みをインバランスというのですが、需要と供給が合致する状況を作るのが理想ですね。

倉貫の顔倉貫
Panair Cloudは、やはりビッグデータと合わせてやることに価値が出ますね。あとから参入するベンチャーだからこそ、できるチャレンジです。
名越の顔名越
私は山口県岩国市の出身でして、Panair Cloudは日本酒の獺祭が杜氏なしで作られるところに1つヒントを得ました。電力の需給を予測してきた専門職のスキルを、システムで置き換える。Panair Cloudでは、従来のような専門職が需給予測をする機能を設けておらず、Gungnirと呼ばれるAI部分が需給管理を担当しています。ここは、人間がアルゴリズムのロジックを見直しながら一つずつPDCAを回しています。
倉貫の顔倉貫
データが増えれば増えるほどディープラーニングは賢くなりますからね。職人技はコンピューターに任せて自動で解決してもらって、人が介在するオペレーションはパネイルが一貫して最適化していく。これを研ぎ澄ませると、必要最低限な人数で運用ができますね。
名越の顔名越
オペレーションコストを下げるということは、オペレーションをいかに最適化するかという課題への解決アプローチです。そもそものシステムだけではなく、ワークフローも含めて見直しを図ることが必要だと考えています。
倉貫の顔倉貫
Panair Cloudのすごさは、システムとワークフローの一体成型ですね。業務フローも人の配置もシステムに合わせてしまえば、従来の電力事業とまったく違うビジネスのやり方になる。
名越の顔名越
一般的には逆の発想ですよね。人がいて、そこにシステムを合わせようとするのが普通です。Panair Cloudの開発も、遠藤さん(ソニックガーデンのエンジニア・遠藤 大介)が入られることもありますが、基本は伊藤さんが全体をみていますからね。オペレーションは最小限の人数でできるよう随所に工夫が凝らしてあります。
倉貫の顔倉貫
開発もオペレーションも最小の人数で電力を運営できる。これは驚きですよね。電力業界もIT業界も、ひっくり返りそう!

人数より質が大切。大きなシステムこそ、少ない人数で開発するべき

倉貫の顔倉貫
世の中の常識として、大きなシステムは人手とお金をかけて作るものと思われています。でも僕は、システム開発に必要なのは人の数ではなくて人の質だという考えを持っています。
名越の顔名越
たまに大手ベンダー各社の方が見学にいらっしゃるのですが、少人数の体制を説明すると本当に驚かれますね。さらにRubyで構築していますというと、信じられないとおっしゃいます。とはいえ、スーパーエンジニアが複数人いたら、もっとすごいことができるのか?というと、それは違うと思ってます。
倉貫の顔倉貫
スーパーエンジニアはひとりでいい。Panair Cloudの開発ポイントは、一気通貫でひとりのエンジニアがひとつのシステムを担当しているということです。ソフトウェアというのは人数が少なければ少ないほど、柔軟に早く作れるというのは間違いありません。
名越の顔名越
おっしゃる通り、ひとりのスーパーエンジニアを信頼して、一気通貫で構築しきることがベストです。スーパーエンジニアであっても、複数名で一緒に開発してたらいろんなロスが発生します。私は、一人ひとりのスキル適正を鑑みた上で、その人が一番輝く配置を考えるのがマネジメントだと考えています。実際、船頭が多くて船が山に登るケースをたくさん見てきました。
倉貫の顔倉貫
業務に一番詳しい人とITについて詳しい人が2人で作る。これが、何よりも一番早いです。つまり、プロダクトオーナーとプログラマーがパートナーになるという開発の仕方が、一番いいスタイルだなと僕は考えています。
名越の顔名越
一般的なベンダーの場合、営業やPMがいてプロジェクトとして受ける。その後に、必要な人数のプログラマーを集めて開発するというやり方をしていますよね。
倉貫の顔倉貫
ソニックガーデンは、お客さまにパートナーとして担当プログラマーがつきます。プログラマーがプロダクトオーナーと話をして開発する体制が組めるのは、日本中を探しても他にありません。さらにITを熟知していて、業務にも詳しい名越さんがプロダクトオーナーとして一緒に組めたからこそ、Panair Cloudはここまで早く柔軟に開発ができたのだと思います。

プロダクトオーナーとプログラマーには、相性がある

名越の顔名越
私は、これからも伊藤さんがパートナーとしてPanair Cloudを牽引してほしいと思っています。
倉貫の顔倉貫
名越さんと伊藤さんは相性が良いですね。伊藤さんはね、リアリストなプログラマーです。現実的だし、見えていることを丁寧に実行したいタイプ。エンジニア魂が強いので、いい加減でも動けばいいじゃないかというのはありません。
名越の顔名越
ひとりのプロダクトオーナーとプログラマーの組み合わせは、プロダクトにプログラマーの個性が強く出ますよね。プロダクトオーナーとしては、このプログラマーと付き合いきれるか?というところを考えますが、伊藤さんとは長い付き合いの中で強固な信頼関係が築けてきたと思ってます。私はよく、「がんばろうよ、伊藤さんならできる、ここまでやりきれば大丈夫だよ」って伊藤さんを鼓舞してます(笑)。
倉貫の顔倉貫
伊藤さんは真面目なので、立ち止まってじっくり考えすぎてしまうところもあります。たとえば、SOAPの仕様に合わせたRubyのライブラリを書くというところ。たぶん伊藤さんだけだったら、違う方法を考えていたかもしれない。そこを名越さんがいることで、一歩二歩先へ踏み出せたという相乗効果が出たと思うんです。名越さんはエンジニアの気持ちがわかる人なんですよ。
名越の顔名越
恐縮です。腕のいい人ほど、プロダクトへの思いが強くなりますからね。伊藤さんは攻撃と守備でたとえると、圧倒的に守備が強い人。Panair Cloudはインフラサービスの基幹システムです。バグや不具合を出さない鉄壁なシステムが求められます。伊藤さんはRSpecの達人で、誰よりもテストを実行するプログラマーです。私がこれまで出会ってきたエンジニアの中でもトップレベルの守備力だと思います。世の中でイノベーションを起こすシステムやサービスは、奇をてらわず、根幹がしっかりとできている事が必要だと思っています。Panair Cloudはまさに伊藤さんだからできたものだと考えています。

<第4回へ続く>

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