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Rubyで開発した基幹システム「Panair Cloud」が新しい電力サービスを作る【第4回】


株式会社パネイルの代表取締役社長 名越達彦さんと、ソニックガーデンの倉貫義人の対談。日本初となるRubyで開発された基幹システム「Panair Cloud」は、電力業界へ大きなインパクトを与えました。最終回となる第4回は、名越さんがアジャイル開発で気をつけていること、そしてパネイルが目指すこれからのビジネスについて聞きました。

目次
  1. ベンチャー企業が、お堅い電力業界へ参入するまで
  2. 電力業界に、ベンダー企業からベンチャー企業への流れを持ち込む
  3. 少人数で、電力会社は運営できる
  4. 日本の電気代は、ITの技術で下がります

アジャイル開発のプロダクトオーナーには、つねに先を読んだ判断が求められる

倉貫の顔倉貫
では少し視点を変えて、プロダクトオーナーとして気をつけていることを聞きたいと思います。たとえば、いま作っている部分がシステムの幹なのか枝葉なのか、迷うことはありませんでしたか。名越さんはどのように判断をして、幹を定めていったのでしょう?
名越の顔名越
ウォーターフォールとアジャイルの違いを軸にすると、分かりやすいですね。ウォーターフォール型の開発は柔軟性がない分、やるべきことが決まっており方向性を見失わないという良さがあります。いっぽうアジャイル型の開発は、イテレーションを回していくうちに、気づいたら方向性がずれていたというケースがあると思います。つまり、イテレーションごとに意思決定をしていくから、だんだん何が正解だったのか分からなくなりやすい。

倉貫の顔倉貫
ウォーターフォールもアジャイルも、開発手法のメリットが裏を返せばデメリットにもなりうると。
名越の顔名越
私の場合ですが、まず伊藤さんの開発スピード・技術力、そしてパネイルの状況などいろんな要素を考えます。そして、現時点から半年後・1年後にどうなっているか?の想像力を働かせた上で、複合的に意思決定をしています。
倉貫の顔倉貫
次に何をするのか?という判断を、先週・今週の振り返りや近い未来で考えるのではなく、半年後・1年後に必要なことを基準にしているんですね。
名越の顔名越
伊藤さんのスピード感で、半年後に何が出来上がっているのか?というところまでイメージを持っていないと、判断はできません。半年後に100できているのか、50できているのか、そういったスピード感を読み誤ると事業としてのロードマップも見誤ります。だからこそ、アジャイル型開発で一緒にやっていくときはプロダクトオーナーの大局観が重要だと思います。
倉貫の顔倉貫
ウォーターフォールの良くないところは、たとえば2017年9月にリリースするぞとしたら、そこがゴールになってしまうこと。数手先を読むという判断基準でアジャイル開発を進めると、ずっと未来が続いていく。
名越の顔名越
まさに事業開発と表裏一体ですよね。アジャイル開発は、常に先を見据えて軌道修正をすることができます。その分、どのタイミングでどのレベル感の意思決定をするかを心得ていないと、失敗します。アジャイル開発はスモールチームが前提ですから、ひとりひとりの発言がものすごく大きな揺れ・意思決定につながりやすいです。そこは、常に緊張感を持っています。
倉貫の顔倉貫
パネイルは経営とITの部分を、分けて考えることはできない。経営のビジョンがあるから、ITがある。ITの改善は、経営を元に判断している。電力会社ではなくて、電力のサービスを提供するIT企業ですね。電力業界の中では、唯一無二の企業です。
名越の顔名越
あとは、過去の成功体験にトラップされないように心がけています。自分の目線やバイアス、考え方を一旦外して、半年後にまったく違う状況になっていることを想像する。そこを見据えた動きをしなくてはなりません。またPanair Cloudは、エンドユーザーであるお客さまともつながっています。お客さまの声を、Panair Cloudの機能へすぐ取り入れることができる。このような反応も見て、最善手の意思決定をするよう心がけています。
倉貫の顔倉貫
そのためには、スピード感が必要。大きな企業同士でパートナーシップやプロジェクト組むのではなくて、プロダクトオーナーとプログラマーが二人三脚で行うのが一番なのだと改めて分かりました。

日本の電気代は下げられる。ITでエネルギー問題に貢献していきたい

倉貫の顔倉貫
では最後に、今後のパネイルのビジネスについて聞きたいです。IT企業でかつ公共性が高いサービスですが、なかなか前例がありません。これからパネイルはどうなっていきますか?
名越の顔名越
パネイルは、IT化がなかなか進んで来なかった領域に、新しいITテクノロジーを持ち込むのが大好きな会社です。特に電力などのインフラサービスはやりがいがあって楽しいです。今後の予定としては、外部パートナーに当社のシステムを開放して一緒に電力サービスを提供していくことを検討しています。
倉貫の顔倉貫
これまでは電力小売基幹システムの研究開発でしたが、電力に関するITサービスのプラットフォームにもなろうとしている。
名越の顔名越
パネイルは、インターネット技術を電力業界へ持ち込んだ、日本で初めてのプレイヤーです。ご存知のとおり、インターネットは様々な領域の市場論理を変革する力がありますよね。インターネット技術の持つポテンシャルを存分に引き出したいと考えています。
倉貫の顔倉貫
Panair Cloudはウェブシステムだから、APIを作れば他のサービスとの連携も取りやすい。最初に苦労をしたことが、花開いていますね。
名越の顔名越
やはり電力はインフラですし、業界全体のことを考えてしっかりとすすめていきたいです。パネイルは、苦労して電力小売基幹システムをRubyで構築してきたわけですが、この苦労を今後様々な事業者がやり続けるのは、電力業界にまったくプラスにならないと思っています。一緒に業界発展のために頑張っていきたいですね。

倉貫の顔倉貫
2つの軸が見えてきました。パネイルは電力のプラットフォームを提供しながら、他の事業者が始める電力サービスの大元を支える。そして、それらがすべてビッグデータとしてまとまれば、非常に価値が出てきます。面白いですねぇ。海外への展開も、考えているんですか?
名越の顔名越
電気やエネルギーは国ごとに制度・環境が違うので、Panair Cloudをそのまま持っていくということは難しいですね。でも、抱える悩みは万国共通だと思っています。
倉貫の顔倉貫
名越さんのビジネスに対する気づきとシステムが見事に重なって、電力業界にイノベーションを起こしていますね。とても、わくわくしてきます。
名越の顔名越
私は、いち技術者として、日本の発電と送配電について先人の技術力に大きくリスペクトをしています。日本の送配電品質は世界トップクラスです。日本はほとんど停電しないし、もし停電してもすぐに復旧する。いっぽうで世界全体をみると、日本の電気代は高い。その理由は、発電でも送配電でもなく電力流通にひとつ原因があると考えています。流通の問題なら、ITがいちばん得意とする分野です。したがって、パネイルは電力流通を技術の力でより良くして行きたいと考えています。
倉貫の顔倉貫
電気代が下がると、みんなの生活が楽になり経済的な余裕が生まれますよね。今後とも、よろしくお願いします。本日はありがとうございました。

参考資料

<構成・執筆/マチコマキ>

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