インタビュー

「こんなことまで聞く?」顧客も驚く開発者がビジョンまで聞く理由【後編】

ブラインドサッカーロゴ

前編に引き続き、ブラインドサッカーの普及、競技者・指導者の育成や、「OFF T!ME」などの体験会を行う日本ブラインドサッカー協会の松崎さん、剣持さんにお会いするため、協会の事務局にお邪魔しています。
体験後のアンケートなど、Excelを利用していた集計をシステム化するため、ソニックガーデンの「納品のない受託開発」導入して頂きました。担当した藤原と共に、倉貫がインタビューを実施しました。

  • 視覚障がい者と健常者がサッカーを通じて混ざりあう社会を実現する【前編】
  • 「こんなことまで聞く?」顧客も驚く開発者がビジョンまで聞く理由【後編】
  • 日本ブラインドサッカー協会インタビュー紹介後編

    「事業全体の構造の中でどういう役割を担うサービスなのか」を理解しようとしていると強く感じた

    藤原の顔藤原
    「システム化する必要はないと思います」という話をして(笑)その後また色々考えていくと、マークシートにもリスクがあったので、まずはスモールに紙とWebアンケートの併用にしました。かなりフラットにディスカッションをさせてもらいましたね。
    松崎の顔松崎
    そうですね。あと、うちの事業のことを、「なんでこんなことを聞くんだろう」というようなことまで聞かれた印象があります。ちゃんとうちの事業全体の構造の中でどういう役割を担うサービスなのかご理解頂こうとしているんだなとすごく強く感じましたね。

    日本ブラインドサッカー協会事務局長 松崎英吾氏

    日本ブラインドサッカー協会事務局長 松崎英吾氏 

    倉貫の顔倉貫
    今までの経験から、システム会社さんとはちょっと距離があるなと思っていらしたのと、だいぶ印象が変わりましたか(笑)?
    松崎の顔松崎
    そうですね。以前お付き合いがあったシステム会社のSEさんとは、お互いに大丈夫かなって思い合ってるくらい会話が行き違っていたこともありましたが、そういう意味で今回はスムーズに会話が成り立ちました。皆さんコミュニケーション能力が高くてびっくりしました。なんて言うと、だいぶ上から目線ですけど(笑)
    倉貫の顔倉貫
    いえいえ、ありがたいです。12月に藤原が初めてブラインドサッカーさんのオフィスに伺ったわけですが、彼がソニックガーデンオフィスに戻ってきて、「思っていた以上に熱い人たちだった」という話を僕は彼から聞いていたんです。イメージとしては、日本ブラインドサッカー協会なので、目の見えない方向けに活動するのが大事なところで、その先に「混ざり合う社会」を考えているということは、全く知らなったんですよね。我々はよくシステムをつくる前にビジョンを聞いたり、想いを聞いたりするところを大事にしているんですけど、そこを聞いていくと、実はブラインドサッカーだけを頑張るのではなくて、その先を通じて健常者の方にも知って頂き、さらに体験して頂くことを当たり前にやっていきたいんだという話を藤原が興奮気味に語っていて(笑)
    藤原の顔藤原
    ちょっと日本ブラインドサッカー協会の人みたいになってた(笑)

    すごく想いを持った方たちに貢献できて嬉しいと思いながらやってきた

    倉貫の顔倉貫
    そうそう。「聞いてくださいよ。真の顧客は誰だと思いますか?視覚障がい者の方だと思っていたら、違うんですよ!」と藤原は言うわけです。

    株式会社ソニックガーデン代表取締役社長 倉貫 義人

    株式会社ソニックガーデン代表取締役社長 倉貫 義人 

    藤原の顔藤原
    そうなんです。「違うんです!この事業の真の顧客は健常者なんです」というところで、僕はもうそこでハッとさせられて。確かに顧客という意味では健常者のほうが数も多いですし、混ざり合う社会を実現するためには、健常者にアプローチしなきゃいけないという話を聞かせて頂いて、本当にすごく感銘を受けたんです。ぜひこのシステムをいいものに仕上げたいなと思いました。 たくさんの人に研修を受けて頂くことが本当に大事なんだというのが分かってきたので、単純に効率化というところだけじゃなくて、他の面での支援もできないかと考えました。確か12月ぐらいに、頂いた費用の中でWebサイトのデザインができますよ、それで集客のお手伝いもできます、とご提案させてもらったり、もっと我々にできることはないかと常に考えていましたね。 すごく想いを持った方たちに貢献できて嬉しいと思いながらやってきました。
    倉貫の顔倉貫
    そこから本格的にスタートしたと。
    藤原の顔藤原
    そうですね。12月に基本機能が出来上がったバージョンをまず見て頂いて、そこからある程度直して。春から、剣持さんが実際の現場で使い初めてかなりのフィードバックを頂きました。そこから徐々に改善をしてきています。
    倉貫の顔倉貫
    今はもう実際に使い始めているんですよね。やっぱりこれまでの紙と、Webになって違いはありますか?
    剣持の顔剣持
    そうですね。紙のときは、ほとんど僕がわざわざ手打ちしていたので、その作業だったりとか、その後のプロセスとか、オペレーションはだいぶ楽になりましたね。顧客管理なども含めて、全部そのWeb上で一括で管理できるので。
    倉貫の顔倉貫
    お客さん情報もそこに入るようになっているんですね。

    何をしたいのか理解してくれて、提案をしてくれるのが有難い

    倉貫の顔倉貫
    フィードバックがたくさん出て、実際に使い始めた3月、4月ぐらい、たくさん改善したと思うんですが、その辺の開発の進め方について、これまでとの違いや、感想はありますか?
    剣持の顔剣持
    一番すごいなと思ったのは、僕の伝え方がつたなくても、本当は何をしたいのか藤原さんが理解してくれて、「それならこっちのほうがいいよ」という提案をしてきてくれる点がありがたかったですね。僕はこれがいいんじゃないかなと思っても、違うルートをすごくいっぱい持っていて、それができてくるというのが大変嬉しかったです。

    株式会社Criacao代表取締役COO 剣持 雅俊氏

    株式会社Criacao代表取締役COO 剣持 雅俊氏 

    剣持の顔剣持
    あとはレスポンスもすごく早くて、用意して頂いた掲示板に「こんなのが欲しいんです」と投稿すると、パパパっと魔法のように対応してくれて。

     タスク管理画面

    ソニックガーデンがお客様と開発状況を共有しているツール

    松崎の顔松崎
    何でも言えば形になってできてきた(笑)
    倉貫の顔倉貫
    よかったです。そもそも、欲しいと言われたものをそのままつくっても、実は解決にならないことが結構あるんです。なぜかと言うと、コンピュータの専門家でない人がコンピュータの解決策をイメージで言っても、間違ったイメージを出しているかもしれない。例えたら、僕が車を欲しいと思ったときに、「これこれこういう車が欲しい」と言っても、実は全然的外れなことを言ってるかもしれない。そもそも、じゃあ何がやりたかったのかと聞かれて、「家族4人で安心して移動できる手段」が答えなら、「電車がいいですよ」と言われるかもしれない(笑)

    ビジョン・ミッションというゴールを共有していれば、ベストな提案ができる

    倉貫の顔倉貫
    「そもそもの問題」を聞くというところが、結構大事だなと僕らは思っていて、問題を聞かせて頂くと提案もできる。問題を聞くと、色々アイデアが浮かびますが、どれが一番いい提案になるのかといったときに、ビジョン・ミッションというゴールを共有していれば、ベストな提案が僕らはできるんです。

    「ビジョン・ミッションというゴールを共有していれば、一番ベストな提案が僕らはできる」と語る倉貫

    剣持の顔剣持
    だから、藤原さんと話すときには、難しいことを言わないほうがいいんだなというのを意識して、「これに困ってます」という内容を言うように心掛けていました(笑)「これをこうしたい」と言っちゃうと、そうなっちゃうので、そうじゃなくて「僕はこれに困っているんだ」というように伝えたほうがいいなと(笑)
    藤原の顔藤原
    ご協力いただいてありがとうございます(笑)
    倉貫の顔倉貫
    藤原に聞いてみますが、ブラサカさんのお手伝いをしてみてどうでしたか?
    藤原の顔藤原
    そうですね。実現方法にこだわりがなくて、解決したいことに強く想いがあるので、実現方法を「こっちはどうですか?」と言ったときに、「全然それで構いません」「それですぐできるなら、その解決方法で問題ないです」と提案をすごく受け入れてくれるのと、直面している問題とか、何をしたいかというのをオープンにして頂けたので、提案の仕方とか、開発のスムーズさもすごいうまくいったなと思います。

    僕らよりもこのサービスを知っているんじゃないかと思うぐらいだった

    倉貫の顔倉貫
    逆に進め方で、これまでと違うので「ちょっと困ったな」とか、「この辺はびっくりしたな」という部分はありますか?
    剣持の顔剣持
    利用させて頂いた掲示板はすごいですよね。
    松崎の顔松崎
    掲示板の利用上でもそうですし、連絡のスムーズさとか、コミュニケーションのコスト管理をしているところとかが、いい意味ですごいなという部分ですよね。レスもすごく早いですし、どう対応されているのかも分かるし、タスク管理の画面とかもありますし、そういうところも我々にも見せて頂けるので、それは今までにはなかったことですよね。
    倉貫の顔倉貫
    結構透明な状態なんです。
    藤原の顔藤原
    あと、私も平野もそうですけど、システム全体を把握しているメンバーが直接回答をするので、「持ち帰ります」とか「誰々に聞いてみます」という概念がなく、その場ですべてを判断・回答できるのはかなりスピーディーかなと思っています。

    株式会社ソニックガーデン代表取締役副社長  藤原 士朗

    株式会社ソニックガーデン代表取締役副社長 藤原 士朗

    松崎の顔松崎
    慣れてくると、本当に僕らよりもこのサービスを知っているんじゃないかと思うぐらい、考えて頂いているなという印象はありましたね(笑)僕らはほとんど喋らないで、平野さんと藤原さんの2人が喋って、「こうしたほうがいいんじゃない」と言ってくるのを、僕らはボーッと見ているみたいな場面も何度もありましたし(笑)

    ソニックガーデンとの仕事のやり方なら、安心してシステムを変えていきやすい

    倉貫の顔倉貫
    じゃあ、この4月から使い始めて、またおそらく何カ月か使っていくと、次のバージョンになるのか、要望が出てきて改善していくことになると思うんですが、次のアクションは何になりますか?
    松崎の顔松崎
    このシステムに関して言うと、まさに次の打ち合わせだと思うんですけど、すぐにまたバージョンを上げたくなってきています(笑)僕らには、それぐらい可能性の詰まったものですし、ソニックガーデンさんとの仕事のやり方なら、「またこれをやると数百万円掛かっちゃう」ではなくて、これぐらいの金額なんだろうなと分かっているので、安心して変えていきやすいですよね。

    「ソニックガーデンとの仕事なら安心して変えていける」と語る松崎氏

    松崎の顔松崎
    それから、過去につくったけど生かされてないシステムって、うちのような規模でもあるんです。今、少しずつ事業成長をさせて頂いている中で、社内インフラの問題に対しても、こういうシステムづくりのやり方をしたいと経営者目線でも考えているので、このサービスに限らず、いろんな形でお付き合いをさせて頂けたらなと思っています。やっぱりリスクがこっちのほうが全然低いですし、つくったけど、困りながら、不便さを感じながら、みんな使い続けなきゃいけないこともないと思っているので。

    常に変化をしていくにはバックヤードの柔軟性が必要

    倉貫の顔倉貫
    「納品のない受託開発」の少しずつつくっていく、というやり方のほうがリスクが少ないと感じられるのは、どの辺りでしょうか?初めて来るお客さんに、「僕らの場合は、納品はないし、納期も決めません。いつできるか約束はできません」という話をするんです。すると、あるお客さんからすると「それはリスクあるな」と判断されてしまう。一方で、実際に始めて頂くと「こっちのほうがリスクはやっぱり少ないな」と感じて頂けている。いまだに「リスクがあるんじゃないか?」と不安に思っている方にうまく説明して頂けると、僕らとしては嬉しいなと思うんですけど(笑)

    「リスクを少ないと感じている理由を教えて頂けると嬉しい」と語る倉貫

    松崎の顔松崎
    事業とか、サービス内容とか、フローが固まっているんであれば、それでいいのかもしれないなと思うんです。でも僕らのアイデンティティーはソーシャルベンチャーですので、常に変化していきたいし、成長していきたいし、サービスのあり方も変えていきたいと思っていて、変化が前提としてあるわけです。サービス自体もそうだし、研修だって日々変わっている。中身が変わっていけば売り方も変わっていくのが普通です。そうなると、バックヤードであるシステムが固まってしまうのはやっぱり怖いと思いますよね。だから、事業やサービスの成長とか変化に合わせて、バックヤードも柔軟にそれにしっかりと沿って、むしろきちんと押し上げていってくれることが大事なんだと思いますね。

    「何が課題なのか」という部分を一緒に探してくれることに、安心感を感じた

    剣持の顔剣持
    一緒に仕事をさせてもらって、最初に藤原さんがおっしゃったと思うんです、「並走というか、伴走というようなイメージでやっていく」と。最初にそれを聞いたときは「ふーん」という程度の感想だったんです(笑)ですが実際に開発が始まると、納期がないだけに、すごい責任を持ってやってくれているんです。さっきも言ったんですけど、僕が「こうしたいから」、「じゃあ、そう言われた通りにこうつくった」ではなくて、「何が課題なのかな?」という部分を一緒に探してくれることに、すごい安心感を感じましたね。

    出会った当時の思い出を語る四人

    倉貫の顔倉貫
    ちなみに、今回の開発で何か言い残したようなエピソードとかはありますか?
    藤原の顔藤原
    エピソードというよりは補足ですが、僕らは、「言われた機能を開発完了した」はゴールではなくて、それを現場で試してもらって、思った通りに使いこなせて、皆さんであり、受講生の方が楽になったとか、今までよりも理解が進んだというところをゴールなんだと考えています。仕事のゴールの定義がいわゆる納品型のシステム開発とは違う設定になっているので、使ってみての課題やフィードバックをもらって、改善の意見をもらうのはすごく嬉しいことなんです。改善したらもっと使われると思っているので、仕事が増えたとか、システムが落第点をもらったという印象ではなく、使われるための改善案だと思って気持よく取り組んでいます。

    ソフトウェアをつくってもらったというよりは、一緒に仕事をしたんだなという印象

    倉貫の顔倉貫
    これはお客様にいつも聞いているんですけど、ソフトウェア開発って、これまでは要件定義をする、見積りをしてもらって、納品のためのテストをするという流れだったと思いますが、今回みたいなやり方をしてみて、ソフトウェア開発の印象がだいぶ変わったのか、そして楽しかったかどうかぜひ聞きたいなと思います。
    剣持の顔剣持
    僕自身が何かどこかにお願いしてソフト開発をやった経験がそんなにあるわけではないですが、思っていた印象とは全然違いますね。自分が言ったことに関して課題を見つけてつくってくれる。あまりソフトウェアをつくっている感覚が僕にはなくて、「何がしたいんだ」のための解決策を一緒に考えてくれているという感じでした。ソフトウェア開発に対する印象というのはすごく変わりましたし、とても楽しかったです。

    「ソフトウェア開発に対する印象はすごく変わった」と語る剣持氏

    藤原の顔藤原
    ありがとうございます。楽しくなかったとは言いにくいでしょうけど(笑)
    倉貫の顔倉貫
    じゃあ、最後に松崎さん、お願いします。
    松崎の顔松崎
    前職でもシステム開発をやったことがあったんですけど、上司から教わっていたのは、「議事録に変なことを残されて、裏を取られるな」ということですね。
    藤原の顔藤原
    駆け引きですね。
    松崎の顔松崎
    本当に駆け引きで、一緒のチームというよりも、線引きがある中で仕事を進めていく形でした。ですが今回は一緒のチームで1つのゴールを目指せましたし、剣持と同じように、ソフトウェアをつくっていたというよりは、一緒に仕事をしたんだなという印象ですね。もちろん楽しくやらせていただいて(笑)
    倉貫の顔倉貫
    分かりました。ありがとうございます。

    相手が理解して動いてくれて、初めてコミュニケーションできたよね!ということを積み上げていく体験会

    倉貫の顔倉貫
    引き続き、僕らとしてもまだまだできることがたくさんあると思いますので、一緒にやらせて頂きたいと思います。あと最後に、日本ブラインドサッカー協会さんとして、ブログを読んでくださる方へメッセージをお願いします。
    松崎の顔松崎
    はい。まさに今回のシステムでつくっているサービスである「OFF T!ME」という、「ブラインドサッカーの体験」を皆さんにぜひして頂きたいと思います。

    「OFF T!MEを体験してほしい」と語る松崎氏

    剣持の顔剣持
    「OFF T!ME」はボールをバンバン蹴るというものではなくて、アイマスクをしながらいろんな体験をしていくんですね。例えば1つ目だけを言ってしまうと、1人は見えている状態、もう1人は見えていない状態の2人にペアになって頂くんです。その2人ぺアで、前で選手がしている体操の真似をするわけですが、「屈伸してるよ」とか、「伸脚してるよ」と伝えながら取り組むんです。相手が理解して動いてくれて、初めてコミュニケーションできたよね!ということを積み上げていくような体験会です。
    倉貫の顔倉貫
    面白そうですね!
    剣持の顔剣持
    はい。ぜひ遊びに来てほしいなと思います。
    倉貫の顔倉貫
    ぜひ!では、これからも引き続きよろしくお願いします。ありがとうございました。

    OFF T!ME

    この記事を共有する