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第二回 プログラミングとはスポーツである

プログラマのキャリアを考えたとき、経験を重ねた先は管理職、もしくは独立してフリーランスといった選択肢がほとんどです。

しかし、どちらもプログラマとして腕を磨き続けることが難しい環境です。 そんな状況だからこそ、会社に所属しながら、ずっとプログラマを続けられる「第三の道」を選んだ方々に、プログラマを一生の仕事にした先に見える景色を語っていただきました。

今回の対談相手は、2014年に入社した野上 誠司さんです。

仕事、プライベート問わずプログラミングをしているという野上さん。最近では、参加型ハッカソン”ツクアソ”を主催するなど、コードを楽しみながら書く達人でもあります。そんな野上さんと、ソニックガーデンが掲げる“遊びながら働く”という考え方やプロフェッショナルとしてのあり方など、たっぷりと語り合いました。


「遊ぶように働く」の体験談として、仮想オフィスツール「Remotty」の開発秘話を語った2人。“遊びの感覚”があることが、結果的によいソフトェア開発につながるという興味深い考察にたどり着きました。第二回では、前回、野上さんがこぼした「プログラミングは体を動かす感覚と同じ」という言葉から、新たなプログラマ像を探る対話が交わされていきます。

真剣に遊ぶから、楽しい

倉貫の顔倉貫
プログラミングは体を動かすのと同じ、っていうのは本当にそう思うよ。僕も、昔から「プログラミングとスポーツは似ている」っていうことは言っている。
野上の顔野上
そうそう、スポーツとも言えるかな。
倉貫の顔倉貫
という意味では、野上さんは常に練習をしているとも言えるよね。野球やサッカーで言う練習試合をたくさんしている。ハッカソンしたり、自分でアプリを作ったりっていうのが、すべて練習試合になっている。
野上の顔野上
うーん、そうとも言えるけど、自分では練習だと思っていないかな。全部が本番という感覚。
倉貫の顔倉貫
へー、そうなんだ。その感覚も面白いね。
野上の顔野上
全部が本番試合。ハッカソンでも、趣味的にアプリを作るのでも、真剣にやっているし。

倉貫の顔倉貫
ああ、そうか。なるほど。真剣だから、練習と言われると違和感があるってことか。それもすごくわかる。練習というかはさておき、遊びでも仕事でも真剣かどうか、っていうのは大事な視点かもしれないね。
野上の顔野上
例えば、遊びでハッカソンをやるとしても、手を抜いていたら面白くないんですよ。遊びだから面白いんじゃなくて、真剣に遊ぶから、面白いんじゃないかな。
倉貫の顔倉貫
そうだね。そして、そうやって真剣に遊ぶことが、自然とプログラミングスキルを鍛えるトレーニングになっている。
野上の顔野上
うんうん。1回目で話した、「新しい技術を触りながら覚える」というのも、体を動かしながらトレーニングするのと似た感覚だと思う。
倉貫の顔倉貫
プログラミングとスポーツは似ているっていう話は、実は前からいろんなところでしているんだけど、あまり理解してもらえない。そりゃあ、ぱっと見で全然違うものではあるけど、間違いなくプログラミングにも必要な筋肉ってあると思うんだ。
野上の顔野上
プログラミング筋みたいなものはあるよね。脳の中の話なので、スポーツと直接関係があるようには思えないかもしれないけど、鍛えれば鍛えるほど強くなっていくのは間違いない。
倉貫の顔倉貫
野上さんの場合は、プログラミング筋を常に鍛えているってことだよね。ちなみに、納品のない受託開発でのプログラミングとハッカソンとかでのプログラミングは何か感覚的に違うことってある?
野上の顔野上
あるある。納品のない受託開発は、毎週お客様に開発したものをお見せして触ってもらいながら、少しずつアップデートを重ねていくから、言うなればマラソンをしている感じ。

倉貫の顔倉貫
納品のない受託開発は、基本的に終わりを設けていないからね。お客様の事業が続く限りは、ずっと開発が続く。
野上の顔野上
そう。だから、スタミナ切れを起こさない視点は、持つようにはしているかな。あまり詰め込みすぎて、体力切れを起こしてしまったら、継続できなくなって迷惑をかけてしまうので。一方、ハッカソンとかは後のことは考えずに全力疾走だから、違う競技なんだよなぁとは思う。
倉貫の顔倉貫
やっている競技が違うから、同じプログラミング筋でも使い方が変わってくるって感じか。

ドヤれば、勝ち

野上の顔野上
プログラミングを始めたばかりの人にも伝わるといいなぁ。でも、すごく大事な視点だよね。スポーツに似ているとか、プログラミング筋みたいなことを言っている人ってあまりいないと思う。
倉貫の顔倉貫
そうだね。でも、プログラミングの本質だと思うけどね。プログラミングを学べるスクールも最近すごく増えているけど、そこで得られるものってあくまで一部だと思う。座学で学ぶ知識ももちろん大事なんだけど、それさえあればプログラミングで価値を生み出せるか、というとまた違うから。
野上の顔野上
サッカースクールで、座学だけってことはないからね。むしろ、まずはボールを蹴ってみようってところから始まるし。だから、とりあえずコードを書いてみようっていうことかな。
倉貫の顔倉貫
ところで、野上さんがそうやって日々プログラミングをするようになったのって、どういう経緯からなのかな。最初からそうだったの?
野上の顔野上
うーん、どうだったかなぁ。最初の頃は身近な人が、自分が書いたコードを褒めてくれたのがうれしかったのが大きいかもしれない。ほぼ同じタイミングでプログラミングを始めた仲間がいて、彼にコードを見せるといいリアクションしてくれるんですよ。最初の頃はそれが楽しくて、毎週何かしら作っては見せていたかな。
倉貫の顔倉貫
ああ、なるほど。身近な人を楽しませる喜びがスタートか。
野上の顔野上
そういう小さな成功体験で、プログラミングが楽しくなっていったし、自信もついていったかな。それで次第に、自分で作ったソフトやアプリを公開するようになって、いい評価をもらうとこれがまたうれしくて。

昔、Androidが出たばかりの頃に、アプリをたくさん作って公開していたんです。その頃はまだ黎明期ということもあってかアプリに対する反応も穏やかで、星5つとか、優しいコメントとかが多かった。そういうのがうれしくて、ずっと続けてきたってのはあるかな。
倉貫の顔倉貫
なるほどね。作って、公開して、いい反応をもらうってのをずっと繰り返しているのか。
野上の顔野上
そう。それが目的と言ってもいいかな。作って、公開して、ドヤる。このサイクルをずっと続けているだけなんですよ。特に、遊びでするプログラミングは、ドヤれば、勝ち(笑)。
倉貫の顔倉貫
そのサイクルを続けていくうちに、自然とプログラミングに必要な筋力がついていくってことだよね。ドヤれば勝ちだから、例えば他の人が似たようなアプリを作っていたとしても関係ない。
野上の顔野上
うん、関係ない。そもそも他の人が何作っているかは調べないし、調べない方がいい。そういうことを意識しすぎると、途端につまんなくなっちゃうから。作って、見せられれば、自分にとっては満足。

ギャップのある場所を見つけてみよう

倉貫の顔倉貫
野上さんの例で言うと、身近な同僚からスタートして、黎明期のAndroidアプリといった場所で、いいサイクルにハマっていった。でも、今はAndroidアプリは溢れていて、シビアな反応をもらうことも多いよね。iOSも同じだと思う。

野上の顔野上
今はそうだね。
倉貫の顔倉貫
じゃあ、今の若い人たちがどういう場所で、サイクルにハマるきっかけを掴むのがいいと思う? 身近な同僚だけだと、筋力トレーニングとしては少し物足りないだろうし。
野上の顔野上
うーん、難しいお題だね。今は、ネットの世界が良くも悪くもフラットで、オープンになっているからね。僕が若手だった頃とは変わってきているのは間違いない。そのうえで、もし僕が今若かったら、限定的なコミュニティを探してそこでドヤるかなぁ。
倉貫の顔倉貫
うん、それは僕も近いことは考えている。ちょっとしたプログラミングでも驚かれるコミュニティってあると思う。極端かもしれないけど、どこかの町内会でおじいちゃんおばあちゃんに向けて、簡単なプログラミングで何か作るだけでも、すごくいいリアクションしてくれるはずなんだよね。そういうギャップのある場所を探すっていうのは、1つの道なのかなと思う。
野上の顔野上
いいね。そういう場所で、小さな成功体験を得ていけば、いいサイクルにハマれるかもね。あ、あともし僕が若手だったら、最近任天堂が出したSwitchのソフト「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」で、ゲームを作りまくって公開しているかな。ああいう、新しい場所はきっかけを掴むには持ってこい。
倉貫の顔倉貫
作り“まくる”ってのもいい表現だね。量が大事ってことだよね。
野上の顔野上
うん、どこで何を作るにせよ、量はめちゃくちゃ大事。たくさん作って、どんどん公開していく。そして、それを続けていく。これは、ずっと変わらない普遍的なポイントじゃないかな。
倉貫の顔倉貫
それも、まさにスポーツ選手のトレーニングと同じ考えだね。「プログラミングとは、スポーツだ」といういい話ができたところで、ぼちぼちプロフェッショナルとは何か、について語っていこうか。

プログラミングをスポーツに例えるという新たな視点で進んだ対談。「遊ぶように働く」の言葉の裏には、真剣になる重要性やトレーニング的な観点でのプログラミングとの向き合い方など、多くのポイントが潜んでいることもわかってきました。

若手プログラマの活躍の場まで話が広がったところで、話題は「プロフェッショナル」に。2人がたどり着いたプログラマの第三の道とは?

(第三回に続きます)

文=長瀬光弘

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