階層も評価もないけど、助け合うチームはあるってホント?―「管理ゼロ本」の会社の社員に聞いてみた!(後編)

2019年に出版された
『管理ゼロで成果はあがる~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』
その表紙には次のような刺激的な言葉が並んでいます。
▶上司なし
▶決済なし
▶副業OK
▶給与は一律
▶賞与は山分け
▶評価制度なし
▶売上目標なし
▶ノルマなし
▶経費は承認なく使える
▶休暇は取り放題
▶最高に自由に働ける会社の“究極のマネジメント”
表紙を読むだけで「本当なの~?そんなの不可能でしょう」と、首を捻りたくなる単語のオンパレード!これらの単語を読んで「まさか…」と思った方や、「本当ならぜひ詳しく知りたい!」と思った方に向けて、この本の内容の真偽を確かめるべく、管理ゼロ本の舞台であるソニックガーデンの皆さんにお話を聞いてきました。
前編:上司なし、評価なし、ノルマなし、働く時間と場所の縛りなし!「管理ゼロ本」の会社の本当のトコロ、社員に聞いてみました!
中編:「管理ゼロ」の会社が大事にしている「ザッソウ(雑談+相談)」って何だろう?管理されなくてもサボらない?
個人で働いているようにも見えますが、チームとして働くことのメリットは何ですか?
「メンバー全員がセルフマネジメントを体得して、自律的に働くようになるならば、 チームは要らないのではないか?」
そう考える人もいるかもしれません、 そうではありません。セルフマネジメントができることと、チームとして助け合うことは、相反するものではありません。
そもそも私たちが考えるチームは、能力の低い人やセルフマネジメントできない人を守るためのものではありません。一人ひとりのスキルが違っている中で、お互いの得意分野で最も力を発揮できる場所を見つけ、 より大きな成果につなげることが、チームになる目的です。
「管理ゼロで成果はあがる」127ページより抜粋

しかし一人の人間がやれることには限界があるので、それぞれのバックグラウンドとしてチームがあり会社があり、困ったときに他のメンバーに相談できたり、お互いに知見を共有できることはメリットですね。

やはり個人でやっていると孤独ですし、相談したくても相談できる相手がいないんです。調べれば情報は出てくるかもしないですが、それは本当に有効なのか検証から自分でやらなければいけません。

「階層」のある企業で働いていたときと今、どんな違いがありますか?
私達の会社でも、管理をなくすとともに、上司や部下、管理職をなくして、フラットな組織で経営をしています。創業時は5人だったので、その頃に上下関係がなかったのはもちろんのこと、そこから1人2人と人が増えていき創業から8年経過して35人を超えた今も、依然としてフラットな組織のままです。
「管理ゼロで成果はあがる」135ページより抜粋


基本的に誰かが決めてくれるわけではないので、自分で考えて自分で答えを出していくという働き方を望む人には、階層がない会社は面白いはずです。

今は自分がどんなことをやりたいのかその方向を選ぶ自由がありますし、その方向で伸ばしていけばいいと言ってもらえる環境なので、働き甲斐がありますね。
「評価」のある企業で働いていたときと今、どんな違いがありますか?
創造性が求められるような現代の仕事では、そう簡単に目標設定も評価もできません。単純に個人ごとの売り上げだけで評価をしようとすると、助け合うチームワークは崩れてしまいます。チーム全体のパフォーマンスを上げるような縁の下の力持ち的な仕事をすることの評価もできません。
(中略)
評価によって人のやる気をコントロールしようとするのは、大きな手間をかけて評価することの大変さに比べて、あまりにも得るものが少ないのではないでしょうか。
「管理ゼロで成果はあがる」144ページより抜粋


目標を立てる際にも、それは自分のために必要かどうかという視点になります。すべてのことが、「本当に自分に必要だったらやる、必要なかったらやらない」というように、無駄がそぎ落とされました。
掲示板上での経営者同士の議論に参加することに、どんな意味がありますか?
私たちの会社で使っているコミュニケーションツールでは、基本的にオープンにやりとりすることを基本にしています。特に、1対1でのプライベートのメッセージは使わずに、社員全員が見えるところでやり取りをするようにしています。
「オープン経営」と呼ばれる掲示板で、経営者どうしが考えていることや議論の内容を社員が見えるようになっています。そこに書かれている内容は決定事項ではないため、変わってしまうこと、決まらないこともありますが、そうした生々しい途中経過も共有しています。
「管理ゼロで成果はあがる」138ページより抜粋


経営者の掲示板で新しい提案がなされても、賛同する人がいなければ始まりません。みんなが「いいな」と思えばそこにコメントが集まって新しい何かがスタートしますし、始めてみたけれど良いと感じられなければ、続ける人がいなくなって消えていきます。本当に必要なもの以外はなかなか残らないですね。

SGの長い採用プロセス、どうでしたか?
「もし、入社する前にいっしょに働けるかどうかがわかって、信頼関係を築いておけたら、採用の問題が解決するのではないか」
私たちの会社では、そう発想を変えて信頼関係を築いてから入社してもらうようにしています。入社前の採用プロセスのうちに、互いに信頼を築けるようにしているのです。そのため、中途採用で応募されてから入社するまでに1年から1年半ほどの時間がかかります。
もちろん「無職になって」というわけではなく、現職を続けたままでの付き合いです。もし価値観や企業文化が合わずに入社しないということになっても、お互いに大きなリスクを負わなくてもいいようにするためです。
「管理ゼロで成果はあがる」174ページより抜粋

ただ受けている最中は評価の軸が分からず、何をしたら採用されるのか考えたりしたんですが、分からないので結局素の自分でいくしかないという結論で。後半は、霧の中を進んでいるような感じでしたね。





ソニックガーデンが独創的だなと感じるところを教えてください!


普通は納品のある受託開発の中でなんとかうまくいくように工夫するのですけれど、そもそもの納品をなくしてしまうという土俵から考え直すところが独創的ですよね。

最近であればリモートワークやホラクラシーで注目されることが増えてきましたが、それを目指したわけではなくて、改善を続けた結果そうなったという点が特徴的なところだと感じていますね。

納品がある場合は、納得できずとも納めるしかないですが、ソニックガーデンではそれまでかけた労力や時間があったとしても、本質的に必要ないと判断できれば、捨てることが可能です。
「管理ゼロ本」を読んで学びになったことや感想を教えてください!


もしソニックガーデンで働くという経験をせずに読んでいたら、「本当かな?」と疑うんじゃないかとは思いましたが、実際にここで仕事をしながら読んでみたら、目新しいことが書いてあるわけではなく、「現実のことがよくまとまっているな」という感想です。

今日は驚くような現実の話がたくさん聞けてとても楽しかったです。ありがとうございました!
『管理ゼロで成果はあがる~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』
https://www.amazon.co.jp/dp/4297103583/
「読者が選ぶビジネス書グランプリ2020」のマネジメント部門にエントリーされました
管理ゼロ本が、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2020」のマネジメント部門にエントリーされました。
1部門につき1人3票まで投票可能となっておりますので、どうぞよろしくお願い致します。
(投票期間:2020年1月上旬頃まで)
『管理ゼロで成果はあがる~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』
この表紙に書かれた刺激的な言葉の数々は、ソニックガーデンの真実を表した言葉たちでした。
「上司なし・決済なし・副業OK、給与は一律・賞与は山分け・評価制度なし、売上目標なし・ノルマなし、経費は承認なく使える、休暇は取り放題、最高に自由に働ける会社の“究極のマネジメント”」
自分の属する組織もこんな風になればいいのにと思った方も少なくないのではないでしょうか。
最後に「管理ゼロ本」の「はじめに」の部分を少しご紹介させてください。
自由に働く組織に変えるための3つのステップ
このようにお話すると「管理もやめて自由にして、個人ごとに好きに働けばいいのだ」と思うかもしれませんが、いきなりそのようなことをしても、きっとうまくいきません。私たちも、長い期間かけてここまでに至ったのですが、取り組んできたことを振り返ってみると、 大きく3つの段階があったように思います。
・第1段階:生産的に働く(楽に成果をあげるために見直す)
・第2段階:自律的に働く(人を支配しているものをなくす)
・第3段階:独創的に働く(常識や慣習に従うことをやめる)
この本には、ソニックガーデンが辿った旅路が記されています。同じ道を歩んでいくことで、どんな組織も働く社員にとってより幸せな場所になれるのではないかと思いました。
『管理ゼロで成果はあがる~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』
https://www.amazon.co.jp/dp/4297103583/

- ライティング:岡田由美子
- 早稲田大学第一文学部在学中より、物書きを目指してひたすらに原稿用紙に文字を埋める日々を過ごす。卒業後、EC系のベンチャーで新規事業の開発に取り組む。現在は二児の育児の傍ら、インタビュー記事や、商品紹介のキャッチなど、また文字の世界へと戻る。