「作業の委託」ではなく「チームで一緒に働く」リモートワーク!~フルリモートでも成果を上げる秘訣とは?~
ソニックガーデンでは、現在日本全国にいる約40名の社員がフルリモートで勤務しています。「いつ・どこで働くか」は自由です。始業時間・就業時間・勤務日数にも規定はありません。だいたい週5日1日8時間を個人ごとに判断して、各自が成果を出せるように働きます。時間や場所だけでなく、上司も売上目標もない「管理のない会社」です。
そういった働き方が注目され「どうすればリモートワークは成功するのか?」というお問合せを頂くことも増えてきました。しかしソニックガーデンも最初はオフィスを構え、社員は出勤するという普通の働き方をしていました。数年前に一人の在宅勤務をイレギュラーながらも始めた結果、今では全社員フルリモートでも成果を出せる組織となったのです。
オフィス勤務からフルリモートへと変化する過程では、様々な仕組みやツールを試し、欲しいものがなければ自社で開発するなど、数多の試行錯誤を経て、今では「オフィスに集まって働いていたときと同じ働き方」を実現しています。
一般的に「リモートワーク」という言葉から想像する働き方と、ソニックガーデンの「リモートワーク」はどこが違うのか、リモートワーク専門メディア「Remote Work Labo」の編集長 野本に聞きました。 聞き手は、ソニックガーデンにて「仮想オフィスRemotty」の責任者/リモートワークのコンサルティングをしている八角です。
目次
仕事を小さいタスクに分けて、物理的に外部にいる人に委託するのが、一般的に想像しやすいリモートワークの形
八角
最近リモートワークという言葉をよく聞くようになってきましたが、リモートワークという言葉から、どういう職種を思い浮かべる人が多いですか?
野本
ライター、デザイナー、デジタルマーケティング系、広告運用などがリモートワークとして想定されやすい職種ですね。
左:「Remote Work Labo」編集長 野本/右:「仮想オフィスRemotty」責任者・リモートワークコンサルタント 八角
八角
なるほど。経理などのバックオフィス系はどうですか?
野本
そういった職種をイメージする方は、まだ少ないかもしれないですね。
八角
どうしてでしょうか?
野本
リモートワークには、会社にいる人たちと、会社から離れている人たちがいるという前提が一般的です。両者は離れた場所で仕事をしているので、共に働くのではなく、外部にいる人に作業を任せるだけになってしまうのです。
ある仕事をしようとしたときに、それを小さいタスクに分けて、物理的に外部にいる人に委託してやってもらうというのが、一般的に想像しやすいリモートワークの形です。
タスクに分けにくい職種であったり、一人では完結しない職種の場合、リモートワークに向いていないと思われてしまうのではないでしょうか。
ある仕事をしようとしたときに、それを小さいタスクに分けて、物理的に外部にいる人に委託してやってもらうというのが、一般的に想像しやすいリモートワークの形です。
タスクに分けにくい職種であったり、一人では完結しない職種の場合、リモートワークに向いていないと思われてしまうのではないでしょうか。
八角
なるほど。クラウドソーシングのように、タスク単位で仕事をお任せするのがリモートワークのイメージなんですね。
野本
そうですね。例えばプログラミングやデザインであれば、「この機能を作る」「このデザインを整える」のように細かい作業に分けた上でタスクをお願いする形です。
八角
しかし、ソニックガーデンでは、そのタスク分けであったり、今後何をするか決めるところから、離れている人も一緒に全フェーズをリモートワークでしていますね。
野本
そうなんです。オフィスで働く人もリモートワークしている人も同じ内容の仕事をする。働き方はどこにいても変わらない。
デジタル上のオフィスで、人間関係を育むことができる
野本
八角さんはリモートワークを始めて1年ほど経ちますが、やってみていかがですか?
八角
ツールがあることで、僕自身、実は「リモートワークしている」という感覚がそれほどないんです。
ソニックガーデンが普通のオフィスにいるような働き方を実現できているのは、「デジタル上のオフィス」というツールがあるからだと感じています。
ソニックガーデンが普通のオフィスにいるような働き方を実現できているのは、「デジタル上のオフィス」というツールがあるからだと感じています。
仮想オフィスRemotty
野本
Remotty(リモティ)は実際のオフィスがもつ機能(会議室、座席等)をオンライン上に実現したものなので、オフィスで働いているのとリモートワークの差が生まれにくいですよね。
野本
「リモートワークなのに、どうして横のつながりがそんなに生まれるんですか?」と外部の人から聞かれることもあります。それに対しての答ですが、「普通のオフィスと同じで、オフィスにいるからと言って、それだけで横のつながりが生まれるわけではない」んですよね。実際にオフィスがあったとしても、一緒に仕事をしているとか、飲み会で意気投合したとか、合宿を共にしたというような経験を経ないと、親しみは抱けない。
八角
メンバーは40人いますからね。僕も社内に親しい人と、まだあまり親しくない人がいます。仕事上で関わりが深かったり、合宿などで一緒になって色々な話をできた人とは、親しくなって、雑談もできるようになります。
野本
オフラインでもオンラインでも関わりを作っていくことは大事ですよね。
八角
そういった機会があった上で、仮想オフィスであるRemottyを通じて共に働いているという実感が得られるので、人間関係を育み、まるで同じオフィスにいるように働けているのだと思います。
仮想オフィスがあることで、同じ会社の仲間だという感覚が生まれる
野本
先ほどから話に出ているRemottyについてもう少し聞かせてください。
八角
チーム内のつながりを育てるためのツールとして、常に顔が見えているとか、一緒にいる感じを与えてくれるのがRemotty(リモティ)という仮想オフィスツールです。リモティだけが正解ではないですが、ソニックガーデンでは、Remottyがあるからコミュニケーションが生まれていると思います。
2分間隔でカメラがメンバーの写真を自動撮影
野本
確かにRemottyでなくとも、極論、SlackとZoomで実現できますよね。今のソニックガーデンの人数では難しいかもしれないけれど、5人くらいであればZoomを就業時間中はずっと繋いでおけばいい。
八角
人数が少なければテレビ会議をずっと繋ぎっぱなしの方が、コミュニケーションという観点から見ればむしろ有効かもしれません。けれど5人くらいが限度ですよね。それ以上増えると誰が誰に話しているのか分からないし、うるさくなってしまう。10人超えたら難しい気がします。
野本
場所がオンライン上になっただけで、働き方は昔のまま
八角
野本
オフィスと同じですよね。同じ空間で働いていると、例えばお昼の時間に「あっちの席の人、いつもカレー食べてるな」という情報を得られます。そうすると、たまたまエレベーターで一緒になったとき、「お昼いつもカレーですね。好きなんですか?」と会話が生まれるきっかけになる。
メールだけでやりとりしていては、場を共有しているからこその情報やコミュニケーションは生まれませんよね。
メールだけでやりとりしていては、場を共有しているからこその情報やコミュニケーションは生まれませんよね。
八角
昨日ちょうど、場を共有しているからこその光景がありました。
エンプラス部(デジタルカードを開発運営する部活)の活動において、昨日・今日とお客様からのお問合せがたくさん来ていて、プロダクトオーナーの若手社員が調査や返信を頑張ってくれていました。その様子をRemotty上で知ったベテラン社員が、「大丈夫?」と声を掛けてくれたんです。
エンプラス部(デジタルカードを開発運営する部活)の活動において、昨日・今日とお客様からのお問合せがたくさん来ていて、プロダクトオーナーの若手社員が調査や返信を頑張ってくれていました。その様子をRemotty上で知ったベテラン社員が、「大丈夫?」と声を掛けてくれたんです。
野本
今社内で起きていることが、掲示板に流れるコメントから見て取れるからこそですよね。普通のオフィスで起こる「あっちの方で若手が慌ててるな、様子を見てくるか」という光景が、仮想オフィス内でも再現できていますね。
八角
メールや、グループ内のクローズな場でしかコミュニケーションがとれていなかったとしたら、そういう光景は起こりえないですよね。若手が慌てていることは、ベテラン社員には知る由もありません。今回のようにベテランの人から声をかけてもらえるのは本当に助かります。
野本
そういうコミュニケーションの積み重ねで、「人のつながり」ができますよね。結局のところ、ソニックガーデンは働き方を変えてはいないと思うんです。古風な働き方をしている。
八角
そうですね。実はソニックガーデンの働き方はオフィスに通っていた頃と何も変わらず、働く場所をただオンラインに移行したに過ぎません。オフィスにある機能を、適切なツールに置き換えて、それぞれの場所から以前と同じように働いています。
会社がコミュニケーションコストを払ってくれて、ソニックガーデンらしさが醸成されている
野本
八角さんは、もともとあったオフィスの機能はすべて何らかのツールに置き換わっているし、オフィスに通っていたときにあってリモートワークになって失われたものはないと感じていますか?
八角
そうですね。仕事での相談、ちょっとした雑談、チームとしての一体感。ハード面で言えば自席、会議室、ホワイトボードなど、リモートワークになったからと言って、失ったものはありませんね。
野本
ソフト面でもハード面でも、オフィスに通っていたときと変わらないということですね。
八角
強いて言えば、「リモート飲み会」と「実際に顔を合わせての飲み会」に、僕はまだ差を感じています。これは僕が単純に慣れていないせいもあるのかもしれないけれど、実際に会って隣で話す方がより深い話ができるように今は感じています。
野本
慣れてきたら、リモートで深い話もできるのかもしれないですよね。
八角
そうですね。でも、だからと言ってソニックガーデンは「深い話」ができていないのかと言えばそうではなくて、合宿のときにそれをやっていると思うんです。リアルなところを捨てているのではなく、そういう場を、きちんと特別感のある合宿みたいなもので頻繁に提供している。
野本
それはもしかしたら、ソニックガーデンが円滑にリモートワークで働けている理由のひとつかもしれませんね。
八角
そう思いますね。人との関わりや、濃密な時間を過ごすいう意味だと、そこは全然負けていないというか、かなりそういう時間は持てています。
リモートワークは、「新しい働き方の発明」ではない
八角
今、リモートワークというのは、そういった濃密な人間的関わりを排除した働き方だと認識している人も多いですよね。
野本
そうですね。「リモートワークを導入するぞ!」と言って、「今までの働き方」そのものを変えようとする企業もありますが、リモートワークを失敗してしまう要因のひつとは「働き方そのものを変えるから」だと思います。
八角
それだと「新しい働き方の発明」になってしまいますよね。
野本
そうなんです。「発明」ではなくて、今オフィスでやっていることをどんなツールに「置き換える」か試行錯誤していく方が安心だと思います。
八角
ソニックガーデンは10年かけてフルリモートになった会社なので、その辺りのノウハウは豊富です。今、ウイルスや天災時のBCP対策であったり、働き方改革や東京オリンピックに向けて、リモートワークは注目を集めているので、これまで蓄積してきたノウハウをシェアしていきたいですね。
野本
「Remote Work Labo」でも、引き続き専門メディアとして、情報公開を続けていきます。
八角
僕の方では、セミナーや個別コンサルティングも引き続きやっていきたいと思っています。一足飛びにフルリモート・フルフレックスにすることは難しいかもしれませんが、組織ごとにリモートワークに挑戦していくことは、これからの時代必要な動きかもしれません。
今日は有意義なお話ありがとうございました!
今日は有意義なお話ありがとうございました!