ハッカソンは、新しい技術に触れたり、アイデアを形にしたりと、プログラマにとって魅力的な機会です。テーマの設定からチーム編成、評価基準の策定まで、運営側の負担は決して小さくありませんが、その分、得られるものも大きいです。
ソニックガーデンでも、プログラマの成長機会としてハッカソンを重視しており、業務時間内での社内ハッカソンを毎月開催しています。
今回の記事では、その運営方法を、運営を担当している野上に聞いてきました。負担を最小限に抑えながら社内ハッカソンを毎月開催する秘訣をご紹介します。
(執筆:広報グループ 小澤未花)
1. 若手プログラマの育成制度として、毎月開催
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多くの会社では、社内ハッカソンは年に1回あるかどうかのイベントです。そもそも、なぜソニックガーデンでは月に一度、業務時間内で社内ハッカソンを開催するのですか?

野上
これまでもソニックガーデンでは不定期に社内ハッカソンを行ってきていましたが、若手プログラマの入社が増えたことをきっかけに、毎月ハッカソンをやろうという話が持ち上がりました。ハッカソンで得られる経験が、ソニックガーデンでプログラマとして働く上では必要と考えたためです。

野上
背景には、ソニックガーデンが「納品のない受託開発」を提供していることにあります。
ソニックガーデンのベテランたちは、お客さまの「顧問プログラマ」として、事業の相談に乗るところから、システムの設計・開発・運用をワンストップで担っています。そんな「顧問プログラマ」を担うためには、お客様の事業に最適なシステムを提案する力や、お客さまの事業の相談に乗れる力があることが必須の条件です。
しかし当たり前ですが、若手はその力がまだ十分ではありません。ハッカソンで新しい技術に触れることを通し、進化する技術をキャッチアップすることで、良いシステムを提案する力を磨く。また、0からシステムを作るにあたって、今ある課題を抽出し、その解決策を考える経験も、お客さまの事業の相談に乗る力を磨く一助になります。
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ソニックガーデンでは、ハッカソンを若手プログラマの育成制度の一つに位置付けているから、毎月という頻度で行っているんですね。

野上
はい。ですから、ベテランは参加自由なんですが、弟子には必ず参加してもらうようにしています。
2. 継続の秘訣は、「決めないことを決める」こと
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今年1月のハッカソンは参加者36名と、社内プログラマの約7割が参加し、盛り上がりましたね。社内ハッカソンを、毎月1人で企画・運営をするのは大変ではないですか?

野上
運営が頑張らなくてもハッカソンを開催できるようにしていますので、大変でもないですし、自分が運営って感覚もなくやっています。
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運営が頑張らなくても開催できる仕組みについて、詳しく教えてください。

野上
決まっているのは発表会を毎月第一金曜日にやることだけで、テーマ、評価基準、チーム編成などは決めないことを基本にしていますね。そうなると、毎回開催前に絶対やることはテーマの告知と発表会のzoomを作ることくらいです。
決めなくても開催できるもの、決めないとできないものを区別した上で、気分が乗ったらテーマや評価基準なども決めています。評価基準は結局、決めることが多かったりもしますね。テーマは参加者や前回の優勝者に任せたりすることも多いです。チーム編成も、基本は「組みたいなら組んで良い」と任せています。
発表会の司会も、私が居なかったらその場にいる人に事前に声をかけて任せます。基本的に全て参加するので、私がやることが多いですが。
社内掲示板で出している、ハッカソン開催のお知らせ
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1人で毎月のハッカソンの企画・運営していると聞くと、オーバーワークで押し切っているのかなと勝手に思っていました。でも、野上さんは無理なく、頑張らず、運営ができているのですね。

野上
開催までにやらなきゃいけないことを最小限にして、習慣化するのが一番継続しやすいですからね。運営が頑張らないと回らない状態だと、毎月開催は難しいと思います。他の仕事もありますし。
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毎月の継続を目的に置いて、頑張らない仕組み化をされているんですね。ちなみに、制作にかける期間も決めていないと思うんですが、それはなぜですか?

野上
一つは、案件で忙しいソニックガーデン歴の長いベテランたちも参加しやすくするためです。彼らは、隙間時間で作るしかないですから。
もう一つは、「書きたい」という気持ちを妨げたくないからですね。弟子には発表会の日(第一金曜日)を丸一日ハッカソンに充てるよう伝えていますが、他の時間をどう使うかは任せています。いつ作り始めてもいいし、仕事外でやったっていい。開発期間を決めるってことは、開発しちゃダメな期間を作ることでもあると思うんです。書きたかったら、ずっと書いたらいいと思うし、その気持ちを止めたくないですね。
3. 結局、ハッカソンが楽しいから続けている
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こだわるところはこだわりながら、毎月のハッカソンを行っていることがこれまでの話から伝わりました。これからも社内ハッカソンは続けていくのでしょうか?

野上
誰が運営してもよいと思いますが、毎月のハッカソンを続けていきたい気持ちは強いです。成長するからという理由もありつつ、結局のところ、ハッカソンは楽しいんです。自分でゼロからアイデアを出してシステム作ったり、新しい技術に触れることが楽しくないプログラマは滅多にいません。実際、弟子を見ていても楽しんでいる様子が伝わってきます。
弟子ハッカソンでの発表の様子

野上
仕事でプログラミングをする時には、お客さんと一緒に悩んでつくる楽しさは得られる代わりに、0から作ったり、新しい技術で遊ぶことはできません。ハッカソンを通じて、そんなプログラミングの楽しさを感じて欲しいというのが、開催する目的の一番大きいところです。
ハッカソンを毎月やる中で、自然とソニックガーデンとして求めるプログラマとしての実力もつけば、業務でのプログラミングも、より楽しくなっていくとも思っています。
ハッカソンを「年に一度のイベント」ではなく、「月に一度の習慣」として続けるソニックガーデン。運営が頑張らなくても開催できるよう「決めないことを決める」こと。そして、純粋にハッカソンを楽しむ気持ちが社内ハッカソンの継続の秘訣だと知ることができました。
社内ハッカソンに取り組む際の参考になれば幸いです。