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【オフィスはオンライン上で再現できる?】オフィスをなくした会社が考えるリモートワークの課題

新型コロナウイルスが流行して以降、日本でも在宅勤務がいっきに広まりました。それに伴い働き方だけでなく人事評価のしくみを変えたりなど社会的変革と言っていいほど状況が変わってきています。一方で各社とも、さまざまな課題も浮き彫りになってきています。

そこで、今回はリモートワークやマネジメントについての疑問をソニックガーデン代表の倉貫に聞いてきました!

ソニックガーデンでは、リモートワークの先進企業としてずいぶん前から新しい働き方に取り組んできました。本日は、変わりつつある働き方について、どのようなところに課題があるのかいろいろ教えてほしいと思っています。


目次

    創業当時から離れて働くのが当たり前だった

    ソニックガーデンではずいぶん前からリモートでの働き方に取り組んでいるようですが、どういうきっかけでこれだけのレベルで在宅勤務を活用しようと思ったんですか?
    倉貫の顔倉貫
    創業メンバーの1人がワークホリデーで1年くらいアイルランドにいたので、その当時から離れて働くのが当たり前になっていました。また、はじめての採用の際に勤務地不問にしたら全国から応募が来て、そのときの社員第一号が結果的に在宅勤務になったんです。だから、特に初めは狙って在宅勤務を始めたわけではないんです。
    ということは全国に社員がいるんですか?ちなみに、一番遠い人はどこに住んでいるんでしょう?
    倉貫の顔倉貫
    全社員自宅で仕事が完結するので、全国に社員がいます。一番遠いところは、沖縄か北海道になると思います。仕事はリモートで完結するので、家から仕事をする必要もありません。旅行好きな社員がいて、新型コロナウイルスが流行する以前は海外を旅行しながら働く人もいました。オーストラリア一周しながらとか、アメリカ横断しながらとか。
    ソニックガーデンではソフトウェア開発が主要な仕事になると思いますが、完全リモートワークで不都合はないんですか?
    倉貫の顔倉貫
    完全リモートワークにして10年ほどこのスタイルで仕事をしてますが、特別困ったことはないですね。
    特に仕事をする上でチームワークが大事だと思いますが、遠隔でも問題ない?
    倉貫の顔倉貫
    うん、特に問題ないですね。
    それは10年前のリモートワーク開始当初から問題がなかったのですか?それとも、徐々にソニックガーデンの経験から蓄積されたものなのでしょうか?
    倉貫の顔倉貫
    徐々に人が増えていく中でコミュニケーションの取り方をどうしていくかの試行錯誤はありましたね。

    ソフトウェア開発の業態だからリモートワークがうまくいったわけではない

    2020年リモート入社式の様子(普段着ないスーツ着用)

    今の社員数はどれくらいですか?
    倉貫の顔倉貫
    今の社員数は約45人にまで増えました。
    最近社員の方々とリアルで直近会ったのはいつですか?
    倉貫の顔倉貫
    うーん、記憶がないくらい前ですね。年始くらいだったと思います。ただ、リアルでは会っていませんが、直接コミュニケーションを取るという意味であれば、ビデオ会議を通したオンライン上でのFaceToFaceのコミュニケーションは全社員が毎日かなり頻繁に行っています。我々にとって、コミュニケーションがリアルであるかオンラインであるかの違いはあまり感じていません。
    そうなんですね〜。ちなみに開発をしている人数は全体のどのくらいを占めるのですか?
    倉貫の顔倉貫
    割合でいうと、だいたい8割くらいが開発メンバーになります。
    営業の方もいらっしゃるんですよね?
    倉貫の顔倉貫
    ソニックガーデンの場合、案件はWebからのお問い合わせのみになるので、営業はいません。ソフトウェアの受託開発や、サービスの販売も行っていますが、いずれも基本的にはお問い合わせから始まります。ただ、お客様対応であったり、マーケティングに関わるメンバーはいます。
    そこはソニックガーデンの場合、ソフトウェア開発の業態が普通の会社と違って、リモートワークに適性があったということが言えると思いますか?
    倉貫の顔倉貫
    ソフトウェア開発だけでなく、マーケティングを中心にお問い合わせから始まる業種はたくさんあると思います。例えば、弁護士や税理士と同じで、彼らにも特別に営業に出向いたりはしていませんよね?ソニックガーデンが特別にリモートワークに適性があったというわけではないと思ってます。

    仮想オフィスでいつでも気軽に声をかけ合える「場」をつくる

    ソニックガーデンでは、仮想オフィスというオンラインのツールを使っていると聞きました。実際のリアルのオフィスは全くないんですか?
    倉貫の顔倉貫
    通勤や出社の義務があるオフィスはないですね。ただ、リアルの拠点として社員用のワークスペースをいくつか用意しています。といっても、その中にはオフィスというよりは、家族の状況により自宅で仕事しにくいときに書斎として使えるような、マンションの一室だったりするところもあります。そういう個別のワークスペースにかかる費用についても、一定額までは会社負担で支援してます。

    岡山県のワークプレイス。マンスリー契約のマンションです。

    それはすごいですね。ソニックガーデンで使っている仮想オフィスはいつから運用しているのですか?導入するきっかけはなんだったのでしょう?
    倉貫の顔倉貫
    使い始めたのは2014年くらいです。きっかけは在宅勤務の社員が増えてきたことで、オフィスにいるメンバーが在宅勤務のメンバーとも気軽にコミュニケーションをとるにはどうしたらいいのかを考えたことです。当時、在宅勤務が2人から3人に増えたくらいのタイミングで、メンバー同士のコミュニケーションの取り方について議論が起こったんです。
    倉貫の顔倉貫
    通常の仕事であればPCがあれば自席でできるし、打ち合わせはビデオ会議を使えば在宅勤務のメンバーとも問題なくできますよね。でも、会議室から戻るときの廊下や、オフィスでのちょっとした相談や雑談が実は大切なコミュニケーションの機会だったりします。するとそこで、同じ空間にいない在宅勤務のメンバーとはそういった「気軽に声をかけ合える機会がない」という問題がありました。
    倉貫の顔倉貫
    同じ空間に居ないことが問題なのであれば、仮想的に同じ空間を作ってもっと気軽に雑談ができる場ができればよいのではないかと考えて自分たちで仮想オフィスの開発を始めました。
    仮想オフィスってちょっとイメージ沸かないんですが…基本的に一つの画面に全員の顔が見えるようなものなんですか?
    倉貫の顔倉貫
    はい、勤務している人の顔がずらっと並びます。顔が映るのは監視目的ではなく、出社したときにできるだけ声をかけやすい状態を作ることが目的です。

    ソニックガーデンの仮想オフィス。出社しているメンバーの働いている様子が一覧で表示されます。

    仮想オフィスに映し出されるにはどういう操作が必要なんですか?
    倉貫の顔倉貫
    仮想オフィスツールにログインしたら自動的に顔が見えるようになります。リアルのオフィスに出社したら、お互いの顔が見えるのと同じイメージですね。ソニックガーデンで勤務するときは、この仮想オフィスにログインする必要があります。
    たとえば、Office365などでも出社しているかどうかのステータスがお互い確認できたりするような機能はありますよね。こういった類似システムと仮想オフィスの違いは何ですか?
    倉貫の顔倉貫
    Office365などの類似システムでは緑のマークなどがついて、出社などを表現していますが、本当にそこにいるのかいないのかが結局分かりづらいんです。緑のマークはついているけど席を立っていたり、家事をやっているかもしれない。声をかけても反応がなかったりすると次第に声をかけづらくなってしまいます。
    倉貫の顔倉貫
    実現したかったのは、今この瞬間にリアクションがほしいときに、できるだけ声をかけやすい状況をつくりたかったんです。メールやチャットのような多少タイムラグがあって良いやりとりではなく、すぐにリアクションがほしいときには自席にいて顔が見えると、オフィスの同じ空間にいるのと同じように声がかけやすくなるんです。
    その仮想オフィスにもチャットのような会話ができる仕組みがあったりするんですか?
    倉貫の顔倉貫
    チャットのような仕組みもあります。「ちょっといいですか」と、誰かが私の自席に声をかけてくると、私と声をかけた本人に通知がいきます。ただ、話している内容はオープンになっていて、横のスレッドに流れていく仕組みになっています。仮想オフィス内の誰でもその雑談内容を読めるようになってます。ざっくりいうとTwitterのような感じに近いかも知れません。当人以外に通知は行かないけれど、みんなの見ている前でやり取りをしている、というイメージです。
    なるほど。そのチャットの対話以外にちょっとした会議やコミュニケーションを取る仕組みは仮想オフィスにあるのですか?
    倉貫の顔倉貫
    「ちょっといいですか」のチャットで済む場合も多いけど、やっぱり喋った方が早いよねという場合は、そこからすぐにワンクリックでビデオ会議が始められるようになっています。
    そういう仕組みが自社システムで実装されているのですね。そのツールは売ってないのですか?
    倉貫の顔倉貫
    仮想オフィスの「Remotty(リモティー)」というサービスで販売してます。
    そうなんですね!仮想オフィスを開発し始めたのは2014年とのことでしたが、そのころからRemottyの仕様はこの形だったのですか?
    倉貫の顔倉貫
    最初からではありません。最初はほんとにプロトタイプとして自社で使って実験するというだけでした。本格的に販売し始めたのはここ1,2年です。価格は10名で2万/月〜です。
    実際の実体験から生まれたプロダクトなので、開発者だけの思い入れでつくられたものと違って、いろいろな試行錯誤の結果が詰まっている気がしますね。Remottyにとても興味が湧きました。今Remottyで求められている要望や、追加予定の機能はありますか?
    倉貫の顔倉貫
    オフィスの代わりなので自社っぽい背景をつけられるようになりたいなどのニーズはいただいているので、少しずつ対応しています。また、大手企業などの社員数が多い企業様からの問い合わせも多くいただいていて、その場合の使用方法として、オフィスのフロアを分けられるようになる機能は近々リリース予定です。

    リアルオフィスをなくして仮想オフィスだけの会社へ

    ソニックガーデンも元々のマジョリティはオフィス勤務だったとのことですが、オフィスをなくしたのはいつ頃ですか?
    倉貫の顔倉貫
    2016年の夏です。その頃には、在宅勤務がマジョリティの状態になってました。
    オフィスをなくすことのデメリットは考えなかったのですか?
    倉貫の顔倉貫
    オフィス内で行われていたコミュニケーションを仮想オフィス上に再現することに成功したからオフィスを撤廃したんです。オフィスコミュニケーションの問題解決が先でした。仮想オフィスというセーフティーネットを構築した上でのオフィス撤廃だったので、デメリットは感じませんでしたね。
    今多くの企業が抱えているリモートワークの問題をソニックガーデンは既にこの時期に解決してきたってことですね?
    倉貫の顔倉貫
    そうですね。今多くの企業はセーフティーネットなしで、いきなりぶっつけ本番でリモートワークに挑んでいるために多くの問題を一気に抱えているという印象を持っています。ソニックガーデンでは、オフィスを撤廃する前にかなり時間をかけて準備をしていました。
    倉貫の顔倉貫
    創業当時から在宅勤務はあったし、在宅勤務メンバーが増えていく中で、オフィスでのコミュニケーションをオンライン上で再現するために、仮想オフィスを導入しました。その他にも物理的な書類をペーパーレスにするための基盤も構築しました。こういった準備に5年ほどの時間をかけています。

    ソニックガーデンの「全社員リモートワーク」に向けた取り組み。

    それはその通りですね。やむを得ずリモートワークに取り組んでいる企業とソニックガーデンでは取り組みの順序が逆なんですね。
    倉貫の顔倉貫
    そうですね。リモートワークについての事前準備がまったくない中で、リモートワークにいきなり取り掛かる大変さがあるのだろうと想像しています。
    すると、今のお話を聞いていると、オフィスをなくすときに一番懸念したのはコミュニケーションだったということですか?雑談だったり一体感を醸し出す雰囲気づくりのようなものがリモートワーク導入の最後のハードルということになるんですかね?
    倉貫の顔倉貫
    コミュニケーションはハードルとなる要素の一つではあると思います。もうひとつ、セルフマネジメントというキーワードがあります。ソニックガーデンには、上司が部下を指示管理するのではなく自主的に自分の仕事を管理しつつ、且つチームで協力しあうカルチャーがあります。そういったマネジメントの体制やカルチャーを育んできたのでオフィスをなくしてもハレーションが起きなかったんだと思います。
    全社員リモートワークという働き方に至った背景には、たくさんの試行錯誤や時間をかけた取り組みがあったのですね。後編ではリモートワークにかかせないセルフマネジメントや「管理職がない」「目標管理がない」などのソニックガーデンならではのカルチャーについて教えてもらいながら、リモートワークの前に考えたい会社のあり方や採用について迫ります!

    <後編はこちら>
    【それって本当にリモートのせいなの?】リモートワークの前に考え直したい組織や事業の在り方

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