受け継いでゆく価値観 〜 永和システムマネジメント社長 平鍋 健児

倉貫です。先日、永和システムマネジメントの社長に就任された平鍋健児さんですが、私とは随分と長い付き合いになります。
私が社会人になってまだ2年目の頃に、大きなシステム開発会社の中にいてプログラマとしての働き方やキャリアについてビジョンが見えていなかった私に最初に「アジャイル」を教えてくれたのが平鍋さんでした。
以来ずっと、ロールモデルの一人として尊敬し、時に相談に乗ってもらっています。今回もしばらくぶりに会ってじっくりと話をさせてもらうことができました。せっかくの機会なので、このブログで対談記事として公開します。
コミュニティと会社の新しい関係、ソフトウェア開発の本質とコモディティ化について、これからの仕事や働き方に対する考え方、もちろん永和システムマネジメントへの思い、といったことまで多岐に渡って話をしてきました。
目次
第1話 プロローグ:対談シリーズを始めたワケ

今日はありがとうございます。今回、会社ブログで経営者の方々との対談記事の連載をスタートすることになって、その第1弾で平鍋さんにお願いしました。

よろしくお願いします。

私自身がいろいろな経営者の方の話を聞きたいと思っていて、ちょうど先日、平鍋さんが永和システムマネジメントの社長に就任されたので、これは久しぶりにお話したいな、と。

久しぶりですよね。

ええ、久しぶりです。定期的に平鍋さんとは、サシで話をさせてもらってる気がします。前回は沖縄で。

確か、美味しい肉を食べましたね(笑)。

最近の問題意識なんですが、ソニックガーデン自体は今は一応は順調に、徐々に人が増えて、徐々に成長しているのでいいんですけど・・・

すごくいいことですよね。

そうです。とてもありがたいことなんです。ただ、かといって一気にスケールするモデルではないし、そもそも急成長を目指しているわけでもなく、採用も慎重に時間をかけてるし、社員を酷使するような会社でもなくて。ただ、自分のやりたいこととしては、今僕らが考えていることをもっと広げていきたいなと思う。

分かる。いいことをやってるって自分で思ったら、それをもっと広げたいって思うのはたぶん社会的な、責任とまでは言わないけど、そうしたいのは自然ですよね。それはお金ということとはあんまり無関係に。

そう。とはいえ、今の会社はこれ以上はスピードアップはできないし。じゃあ、もうちょっと他にできることはないのかなって、手探り中です。

うん、僕も同じようなことを思って、いろんな人とビデオ撮りをしたりしてる(笑)。以前に倉貫さんに、ビデオを撮りに行ったじゃないですか。

ありましたね。

結構いろんな人にインタビューとかやって、自分が持っている言いたいことを広げることはやりたいことだけど、でも、それって速度も限られるし。

ええ。

むしろ、言いたいことを持っている人に言ってもらう場をつくることも非常に意義があって、そういう広げ方がいいなと最近ちょっと思うんですよね。だから、昔アジャイル宣言にも署名し、Rubyを海外に広めた人が、出版社を立ち上げたじゃないですか(*1)。すごく気持ちが分かる。
*1:Dave Thomas と Andy Hunt のPragmatic Bookshelf
*1:Dave Thomas と Andy Hunt のPragmatic Bookshelf

(笑)。そうか。自分の発信したいことを世に出すために自ら出版社をつくったんだ。

たぶんね。そして、同じように考えを広げたい人が書いた本を出版しているんですよね。だから、ある意味プラットフォーム側にまわったというか。

でも、それはちょっと面白いですね。僕も今回、いろんな方と話をして対談記事にするとして、それをどこに出すのかを考えたときに、どこかのメディアと企画を立ち上げるかって考えたら少し面倒くさくなっちゃって。今はもう自分でこうやって収録して編集して。

そういう時代だもんね。

そう。自分のブログがあるので、そこを拡張していく形で、自分自身でやるメディア、パーソナルメディアをちょっと試してみようかなと。

すごくいいことですね。僕も同じことを思ってました。というのは、自分の強みを考えると、昔は設計手法だったりソフトウェアを良くすることだと思っていたんですけど、この歳になってくると自分の強みって、人とのつながりのほうが大きくなって、自分のメディア力みたいな自分の話を聞いてくれる人の数かな、と。

影響力ですよね。

そう。あるいは、この人だったらしゃべってくれるっていう人の数のほうが、もしかしたら財産かもしれないなと思って。それを、うまく世界を変えるために使えるんだったらやりたいって僕も思った。だから、同じことを思ってましたという感じですね(笑)。

(笑)。ありがとうございます。では、始めましょうか。