【15期社史#3】この人と働きたい――「関係性」から生まれる、事業と資本のあたらしい形
育成、AIとの向き合い方、そして関係性から生まれる豊かさ。15期の「1年分の社史」をまとめました。
ソニックガーデンの1年をふりかえる「15期社史」シリーズ。全4回のうち、この記事でお届けするのは「関係と豊かさ」というテーマです。第2部では、AIによって効率化が進んだ1年をご紹介しました。では、そうして生まれた余裕を、ソニックガーデンは何に使ったのか。事業と資本のあたらしい形、思い出への投資、そして地域との関わりから見ていきます。
ソニックガーデンの事業の広がり方には、昔から変わらない特徴があります。それは、営業や買収で「獲得する」のではなく、関係性とタイミングが重なったときに、自然と仲間が増えていくということです。15期は、その特徴がいくつもの形で表れた1年でした。
まずは、kintone連携サービス「じぶんシリーズ」です。14期から役員として松村が関わりはじめたこの自社サービスは、15期、新しい仲間たちとともに大きく体制が変わりました。
松村印象的なのは、その経緯です。ソニックガーデンから積極的に仕掛けたわけではなく、相手の人生の節目と、それまで築いてきた関係性が重なって、自然と「一緒にやろう」となっていく。
松村新しい仲間を得たじぶんシリーズは、じぶんkintoneプラグインをはじめ、サービスラインナップも拡充。15期は「種まきの期間」だったと松村は振り返りますが、売上も例年通り伸び、16期に花開く土壌が整いました。
事業の新しい形という意味では、レベニューシェア(収益分配)型の案件も、15期に大きな成果を出しました。お客さまの事業の成長に応じて収益を分け合うこのモデルで手がけるサービスは、順調に成長を遂げています。
松村そして15期には、出版レーベル「倉貫書房」にも動きがありました。京都の出版社ミシマ社との業務提携、2冊目の書籍『新米マネージャー、最悪な未来を変える』の刊行です。プログラマ集団が文化を広めるために本をつくるというユニークな挑戦も、新たな仲間との協働によって、次の段階へ進みました。
さらにもう一つ、ソニックガーデンらしい「仲間の広がり」ともいえる出来事が、15期の幕開けに起こりました。株式会社クラシコムとの資本提携です。ソニックガーデンの歴史上、初めての資本提携でした。
とはいえ、この提携は、世の中の多くの資本提携とは似ていません。買収でも、支配でもない。資金需要があったわけでもない。両社が行ったのは、「法人同士でストックオプションを持ち合う」という、前例のないスキームでした。
倉貫関係性の継続そのものに、約束の形とお互いへのインセンティブを与える。タイミングと相性で仲間が増えていくソニックガーデンらしさを、資本提携というスキームで表現した象徴的な出来事です。
そして、この提携が示しているのは、ソニックガーデンが「関係資本」――お金には換算できない、人と人、会社と会社のつながりの豊かさ――を、経営の考え方として改めて重要視していくということでした。その考え方は、15期のもうひとつの大きなテーマへとつながっていきます。
効率の先にあるのは「思い出」。豊かさのために時間とお金を使う
「大切なのは豊かであるかどうか。そして、豊かさとは、思い出があるかどうか」
この1年、倉貫はこの言葉をたびたび口にするようになりました。AIによって、仕事は便利になり、効率化はどんどん進んでいく。だからこそ、その先で豊かに働くことを追い求めたい。そして豊かさとは、突き詰めれば、思い出があるかどうかなのではないか――。
この考えは、15期のソニックガーデンの意思決定に、はっきりと表れています。「思い出には積極的にお金を使おう。思い出にならないことにはお金を使わない」と倉貫は言います。思い出をつくること、そして豊かになることを目指していこうという考え方です。
その象徴が、2025年9月にまるまる1ヶ月かけて行われた「ハッケーション月間」でした。メンバーたちが気の合う仲間とグループをつくり、思い思いの場所へ出かけて、開発や交流の時間を過ごす。いわばソニックガーデン流の社員旅行です。全国各地で、たくさんの思い出が生まれました。
さらに15期には、「全体合宿を年2回行う」ことも決まりました。フルリモートを基本とするソニックガーデンにとって、全国からメンバーが集まる合宿は決して小さくないコストです。それでも、「コストはかかるけど、やろう」。思い出への投資を、惜しまないと決めたのです。
15期に入り、11月に全体合宿が行われました。これまで倉貫・藤原が主導することが多かった企画を、野上がリードして行いました。
野上
この合宿は、構成もユニークでした。まず弟子たちが1泊2日の合宿を行い、2日目の昼にベテランプログラマたちが合流。全員で集合写真を撮ると若手は帰路につき、そこから親方衆の合宿が始まる――世代のバトンをつなぐような、リレー形式の合宿です。ちなみに夜の恒例行事は、なぜか「イントロクイズ」。ここ最近のソニックガーデンの合宿で流行中なのだそうです。
合宿はほかにも、飛行機で集まりやすい羽田のホテルと会議室だけで完結させた「スーパービジネスマン」スタイルの親方合宿、岡山オフィスに弟子全員が集まった開発合宿など、さまざまな形で行われました。
AIで生産性が上がり、時間の余裕が生まれていく。その余裕を、さらなる効率化だけに注ぎ込むのではなく、仲間との思い出に使う。経済的な資本だけを追うなら、極端な話、誰と働いてもいいはずです。でもソニックガーデンは、一緒に思い出をつくりたい人と働く――。15期に見えてきたこの価値観は、ソニックガーデンの「豊かさ」にも直結しているのでした。
地域に根を張り、世代を超える。尾山台から広がるプログラミングの輪
思い出と関係資本を育てる場所は、社内にとどまりません。15期のソニックガーデンは、「地域」との関係においても、大きな一歩を踏み出しました。
そのひとつが、本社の移転です。
これまでのソニックガーデンにとって、「本社」は登記上の存在に過ぎませんでした。登記はシェアオフィスに置き、実際の活動拠点は自由が丘、田園調布と身軽に移り変わってきました。リモートワークを中心とする会社らしい、場所にとらわれない本社のあり方です。
それが15期の初月にあたる2025年7月、世田谷区の尾山台という街に、腰を据えて本社を構えることになりました。
藤原なぜ、尾山台なのか。そこには、藤原の数年にわたる物語があります。かつて藤原には、地方に「村」をつくろうと、土地の購入直前まで進めた構想がありました。しかしそのとき痛感したのは、「地域に求められていない状態で入っていっても、うまくいかない」ということ。
藤原そこから藤原は、地元・尾山台での活動を始めます。リモートワーカーと商店街をつなぐコワーキングスペースづくり。小学校のPTA会長。地域の困りごとの手伝い。少しずつ地縁を育てていったある日、前任のPTA会長から「ビルを譲り受けたので見てみないか」と声がかかります。その一室を見た瞬間、藤原はひらめきました。「ここを、ソニックガーデンで使おう」。
地域との関係性の中から、本社が生まれる。まさに、ソニックガーデンらしい移転でした。
そして、地域に根を張った会社だからこそできる挑戦が形になります。小中学生向けのプログラミング部活動「セタプロ」です。2025年12月に一般社団法人を設立し、2026年4月、正式に活動がスタートしました。
背景にあるのは、学校の部活動を取り巻く構造的な課題です。小学校でプログラミングに触れて興味を持つ子は増えているのに、公立中学校にプログラミング部はほとんどありません。教えられる先生がいないからです。一方で、先生の働き方改革により、部活動そのものを地域へ移行していく流れが生まれています。
藤原セタプロには、3つの柱があります。1つ目は「自分とつながる」。プログラミングは「試す、動かない、調べる、直す、動いた」といった試行錯誤が高速で回るため、学ぶことの面白さを体感しやすいのです。
藤原2つ目は「仲間とつながる」。学年に関係なく、入ったタイミングで1期生、2期生となっていく設計は、ソニックガーデンの徒弟制度に似ています。そして3つ目が「社会とつながる」。身につけた技術で、誰かに求められるものをつくる経験です。地域のお祭りで使う集計の仕組みづくりなど、子どもたちの技術が実際に誰かの役に立つ機会をつくっています。
気づけばソニックガーデンの周りには、若手が腕を磨く徒弟制度、大学生向けの合宿型インターンシップSonicGarden Camp、高卒採用者向けのユース、構想が進む通信制学校、そして小中学生向けのセタプロ……と、世代をつなぐ育成の道が縦に連なりはじめています。
藤原いいソフトウェアをつくれる人を、会社の中だけでなく、地域から、次の世代から育てていく。そして、その活動自体が地域との思い出と関係資本を育てていく。15期に姿を現したこの循環は、ソニックガーデンという会社の個性を、また一段とくっきりさせたのでした。
16期へ。効率化の先で「いいソフトウェアをつくれる人」を増やしていく
AIとのいい付き合い方を探り、生産性がかつてなく高まった15期。その傍らでソニックガーデンは、ユニークな資本提携という形で関係の継続を約束し、ハッケーションと合宿で思い出を重ね、部活を通じて地域に根を張りました。
効率化で生まれた余裕を、何に使うのか。ソニックガーデンの現時点での答えは、明快です。さらなる効率だけを追うのではなく、豊かさに使う。そして豊かさとは、一緒に働きたい仲間と、思い出をつくっていくことにほかなりません。
「いいソフトウェアをつくる。」という理念は、15期を経て、「いいソフトウェアをつくれる人を増やす」という広がりを見せはじめています。徒弟制度をはじめとした人と組織への取り組みは社外からも評価され、キャリアオーナーシップ経営AWARD 2026で優秀賞を受賞しています。
さて、2026年7月から始まった16期はどのような1年になるのか。
多くの美しい思い出が生まれることを願いながら、メンバーたちの言葉と共に、15期の社史を終えたいと思います。
野上
松村
安達
藤原
倉貫
(執筆: 長瀬光弘)