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「徒弟制度」って実際は何をしているの?——モダンな育成の場で成長する弟子たちのリアル

ソニックガーデンには若手プログラマが「弟子」として、「親方」のもとで技術力や様々なスキルを磨く「徒弟制度」があります。

徒弟制度と聞くと、厳しい修行といった昔ながらの育成の場を思い浮かべるかもしれません。しかし、ソニックガーデンの徒弟制度は、そうしたイメージとは一線を画す、モダンな育成の場です。

日々の進捗を共有する朝会や日報、親方と二人一組で開発を行うペアプログラミング、勉強会や社内ハッカソン、全国に広がる「親方ハウス」といったユニークなオフィス……など、思い切って技術と向き合い、多様なスキルを習得するための環境や文化がそろっています。

とはいえ、弟子たちはいったい何をしているのか、実態がわからない……という声もよく届きます。そこで、本記事では弟子たちが日々どのような取り組みをし、どのような環境の中で成長をしているのか、そのリアルな実態をご紹介します。


目次

    技術力を磨く

    一人前のプログラマになるために、技術力の向上は必要不可欠。ソニックガーデンの弟子たちは、あらゆる機会を通じて、技術力を磨いています。

    コードレビュー:対面で「なぜ」を学ぶ

    一般的なコードレビューは、GitHub上で非同期にコメントを付け合う形式が多いですが、ソニックガーデンの弟子と親方は、対面(オンライン含む)でのリアルタイムレビューを基本とします。これは、コードレビューを単なる品質チェックではなく、教育の機会と捉えているためです。

    テキストの指摘だけでは、「なぜその修正が必要なのか」という本質が伝わりにくいことがあります。対面でコードを見ながら「ここはなぜこう書いたの?」「こういう書き方の方が、将来の変更に強くなるよ」と対話することで、いいコードとは何か、その背景にある設計思想まで深く学べます。また、親方はその場でコードを見ながらレビューするため、思考のプロセスを追体験できる重要な時間にもなっています。

    関連リンク:ソニックガーデンのコードレビューの様子を配信や動画で公開する「いいコード研究会」

    ペアプログラミング:思考のプロセスをリアルタイムで学ぶ

    ソニックガーデンのペアプログラミングは、弟子が一人で悩み続ける時間をなくし、成長の機会とするための重要な取り組みです。親方と弟子が同じ画面を共有し、リアルタイムで一緒にコードを書いていきます。この活動の最大の利点は、リアルタイムでのフィードバックです。

    完成したコードを後からレビューするのではなく、設計の意図やコーディングの思考プロセスそのものを、その場で共有し、学ぶことができます。時には、まず親方が手本を見せ、「まずは俺がやるから、横で見てて」という形で、プロの仕事の流れを体感してもらうこともあります。

    LT会:アウトプットを通じて学びを深める

    LT(ライトニングトーク)会は、1人5分程度で関心のある技術などを発表し、学びへと繋げる活動です。岡山ワークプレイスでは、毎月1回、親方も含めた全員参加でLT会を実施し、学びとアウトプットの場としています。時には、社外の人もゲスト参加することもあり、多様な視点で技術について語り合う時間にもなっています。

    就業時間の終わり頃から開始し、それぞれの発表が終わった後は食事をしながら発表の感想を話し合ったり、技術についての知見を共有しあったりすることもあります。

    関連リンク:岡山LT会、新ワークプレイスで初開催! 技術や考え方をにぎやかにシェアした勉強会レポート

    ランチ勉強会:知的好奇心を刺激する昼休み

    ソニックガーデンのエンジニアは、昼食を共にしながら自然と技術の話を始めます。これは昔からの文化であり、弟子育成にも活かされています。親方と弟子がランチを囲み、業務とは直接関係のない新しい技術や、参加者が興味を持つテーマについて自由に議論します。

    親方によっては、技術的な話題だけでなく、「消費税が増えたらどうなるか?」といった、物事の背景や仕組みを考える「思考の遊び」が行われることもあります。これは、表層的な知識だけでなく、「なぜそうなのか」を深く考える思考の訓練にもなっています。

    セルフマネジメントスキルを磨く

    自立し、自分自身を“いい感じ”にして働くために必要なセルフマネジメントスキルを磨く取り組みです。セルフマネジメントスキルは、ソニックガーデンの一人前のプログラマとして自由に働き、活躍するために欠かせないスキルです。

    関連リンク:セルフマネジメントで自由に働くまでの5段階ロードマップ 〜 自己管理だけではない

    朝会:一日の始まりに認識を合わせる

    弟子と親方との一日は、毎朝の「朝会」から始まります。ここでは前日の進捗状況を報告し、その日に取り組むタスクを確認・整理します。これにより、親方は弟子の状況をリアルタイムで正確に把握できます。弟子期間の初期は毎日行い、成長に合わせて週一回へと頻度を調整するなど、柔軟に運用されています。

    日報:学びと心情の見える化

    業務の終わりには、社内開発された日報システム「Seicho」に日報を記録します。内容は「やったこと」「次にやること」「所感」など、単なる業務報告に留まらないのが特徴で、特に「所感」の共有が重視されています。仕事を通じて何を感じ、何を考えたかを言語化することで、弟子自身の内省を促すと同時に、親方は弟子のメンタルコンディションを把握できます。

    日報はAIによって要約され、弟子と親方が参加する社内チャットに毎日自動で投稿されます。これにより、他の弟子がどんなことに挑戦し、何に悩み、どう感じているかを知ることができます。離れた場所で修練に励む兄弟弟子たちの存在を、身近に感じられるこの仕組みは、互いに刺激し合い、共に成長していく連帯感を生み出しています。

    ザッソウ:気軽に相談できる文化

    ザッソウとは、「雑談・相談」を合わせた造語で、ソニックガーデンが会社全体で大切にしている文化です。まだ考えが固まっていないことや、ちょっとした疑問でも、気軽に親方に相談することが推奨されています。親方側から「どう?」と声をかけることも多く、双方向のコミュニケーションが活発です。

    同じオフィスで働く「親方ハウス」では、このザッソウがごく自然に、一日の中で何度も行われます。問題が小さいうちに解決できるため、手戻りが少なく、弟子の心理的な安全性も確保されます。

    関連リンク:ホウレンソウからザッソウ(雑談・相談)へ

    タスクばらし:セルフマネジメントの基礎を身につける

    「タスクばらし」は、一つの仕事を細かい作業単位に分解するスキルであり、プログラマのセルフマネジメントの根幹をなします。ソニックガーデンのプログラマは、このタスクばらしを常に意識しています。

    初心者が陥りがちなのが、開発のタスクだけを洗い出し、動作確認や顧客への連絡といった付随業務を忘れてしまうことです。朝会での進捗報告やミーティングでの見積もりなど、あらゆる場面でタスクばらしの能力が問われるため、自然と実践的なセルフマネジメントスキルが養われます。

    ふりかえり:対話による深い内省

    親方と弟子による1対1の面談(1on1)が、少なくとも週に一度、一時間程度かけて行われます。これは親方にとって大きな時間的コストですが、弟子の成長に不可欠なものとして非常に重要視されています。数ヶ月先までの育成テーマを事前に設定し、それに対して今週はどうだったかを深く振り返ります。日々の業務で流されがちな課題や学びを、対話を通じて言語化し、次へのステップを明確にするための大切な時間です。

    お客さまと向き合う力を磨く

    ソニックガーデンの軸となる「納品のない受託開発」では、ただコードを書くだけでなく、お客さまの事業理解や課題抽出、企画、設計、運用など幅広い業務を行っていきます。一連の仕事ができるようになってはじめて、一人前のプログラマと言えるのです。弟子たちは、成長段階が進むにつれ、幅広く開発を担うために、お客さまとの対話力や、プロジェクトマネジメントスキルの向上にもチャレンジしていきます。

    顧客ミーティング:実践で対話力を磨く

    弟子は成長段階に応じて顧客とのミーティングに参加しますが、その関わり方は成長に応じて変化します。最初は、先輩のミーティングに同席して議事録を取ることから始め、場の雰囲気や議論の流れを学びます。

    その後、徐々に自分が開発を担当した機能のデモンストレーションや説明を行うようになります。そして最終的には、顧客との対話の中で要件を詰め、次週の開発タスクの設計や見積もりまで、ミーティング中に行えるようになることを目指します。

    ミーティングの「前打ち」「後打ち」

    ミーティングの効果を最大化するため、短時間の「前打ち」と「後打ち」を行うようにしています。ミーティング前には、親方とそのミーティングでのゴールや話す内容について認識を合わせます(前打ち)。終了後には、決定事項や次のアクションについて再度確認し、親方からフィードバックを受けます(後打ち)。この丁寧なプロセスが、弟子のミーティングにおけるパフォーマンスと学びの質を飛躍的に高めます。

    弟子プロジェクト:社内システム開発で実践練習

    「弟子プロジェクト」は、社内で使うツールやシステムを、弟子たちが主体となって開発するプロジェクトです。これは、ソニックガーデンの主事業である「納品のない受託開発」の形式を体験できる機会ともなっており、実践的なプロジェクトマネジメントの練習の場となります。

    親方の一人が顧客役(プロダクトオーナー)となり、弟子チームと週次の定例ミーティングを行いながら開発を進めます。最近では、アプリケーション開発だけでなく、インフラの構築・運用まで弟子たちが担うこともあり、よりチャレンジングな経験を積む機会となっています。

    成長を後押しする環境や文化

    ソニックガーデンでは弟子たちが思う存分、技術にのめり込み、成長できるように環境を整えています。また、これまで培ってきた「プログラマによる、プログラマのための文化」も、弟子の成長の大きな土台となっています。

    親方ハウス:職住近接がもたらす密な育成環境

    「親方ハウス」は、全国に点在する親方が住む地域に設けられたオフィスです。リモートワークが中心のソニックガーデンですが、弟子は基本的に親方の近くに引っ越し、この親方ハウスに出社して働きます。親方ハウスは、愛知県、兵庫県、岡山県、広島県など各地に存在します(2025年7月時点)。

    同じオフィスで働くという物理的な近さにより、前述のザッソウや対面でのコードレビューといった、親方との頻度の高いコミュニケーションやフィードバックを可能にしています。会社は引っ越し費用や家賃の一部を補助し、弟子が安心して新しい環境に飛び込めるよう支援しています。

    遊びの中で人間関係を育てる

    育成は、かしこまった場だけで行われるわけではありません。親方が弟子にコーヒーをおごったり、散歩やキャッチボールをしながら振り返りを行ったり。オフィスで一緒にバーベキューをしたり、誕生日を祝ったり。こうした日常的な交流が、師弟間の信頼関係を深め、より円滑なコミュニケーションの土台となっています。

    社内ハッカソン:ベテランも若手も混ざり合い腕を競い合う

    毎月一回程度の頻度で、丸一日を使い、業務時間内に社内ハッカソンが開催されます。毎回異なるテーマが設定され、個人戦やチーム戦など形式も様々です。成果はランキング形式で発表され、上位者には景品も用意されるなど、遊び心と競争心を持って開発に取り組めるイベントです。ベテランプログラマから若手プログラマまで多くのメンバーが参加します。

    テーマによって、一日で作りきる場合もあれば、1ヶ月かけて少しずつ開発を進めていくこともあります。弟子もベテランも関係なく参加し、普段の業務では使わない技術に挑戦したり、短時間でプロトタイプを作り上げる腕を磨いたりします。

    課外活動への参加:外の世界で腕試し

    ソニックガーデンは、社員が社外の技術コミュニティで活動することを積極的に支援、推奨しています。外部のハッカソンに参加して賞を獲得したり、自分で技術書を書いて「技術書典」に出展したり、地域のエンジニア向け勉強会を運営したり……。これらの活動には、業務時間扱いとして参加することも認められています。会社の外に出て腕試しをすることは、技術力を高めるだけでなく、広い視野を持つことにも繋がります。

    会社全体活動への参加:教えることで学びを深める

    会社の採用活動や勉強会も、弟子にとって重要な成長の機会です。例えば、学生向けインターンシップ「ソニックガーデンキャンプ」では、弟子が参加者のメンター役を務めます。人に教える経験を通じて、自身の理解度を再確認し、技術をより深く定着させることができます。また、外部のエンジニアも参加する勉強会「いいコード研究会」や「ソニックガーデンジム」といったトレーニングに、参加者として関わることもあります。

    人事のフォローアップ面談:親方以外の視点からのケア

    育成の責任は親方一人だけが負うものではありません。親方とは別に、人事担当者による定期的なフォローアップ面談が実施されます。ここでは、親方には直接言いにくい悩みやキャリアに関する相談など、心理的なケアを中心に行われます。多角的な視点で弟子を支える体制が整っています。

    全体会:会社の一員としての自覚を育む

    月に一度、全社員がオンラインで集まる「全体会」が開催されます。会社の経営状況や各プロジェクトの進捗が共有されるこの場で、入社して半年が経った弟子は、自己紹介とこれまでの成果を発表する機会が与えられます。会社全体の動きを把握したり、全社員の前で発表したりといった経験は、ソニックガーデンの一員としての自覚を促し、連帯感を生み出します。

    合宿:集中と交流の機会

    会社主催の合宿も定期的に開催されます。会社の理念や文化について深く学んだり、ハッカソン形式で集中的に開発に取り組んだりと、テーマは様々です。オンラインで開催されることもあり、普段は別の親方ハウスで働く弟子同士が交流する貴重な機会にもなっています。

    関連リンク:リアルの場で語り合う──職人合宿・弟子合宿を実施しました

    ソニックガーデン全体で育成に力を注ぐ

    以上のように、ソニックガーデンの徒弟制度では、弟子が成長するための様々な取り組みがあります。徒弟制度というと、厳しいイメージが先行しがちですが、ソニックガーデンでは弟子が思い切って、のびのびと成長することを重視しています。そのために、親方や会社のリソースは惜しみなく使い、一人でも多くの一人前のプログラマが誕生するように、力を注いでいます。

    弟子からすれば、“技術漬け”な毎日を過ごしながら、セルフマネジメントやプロジェクトマネジメントなどの多様なスキルも身につけられる環境です。

    そして、大切なのはこの徒弟制度は常にアップデートされ続けるということです。今、この瞬間も、親方をはじめソニックガーデン全体で、弟子にとってよりよい取り組み方法や環境を探り続けています。この記事を読んでいる“未来の弟子”たちのために、徒弟制度自体も常に変化、成長を続けているのです。

    ソニックガーデンの採用情報はこちら:https://www.sonicgarden.jp/join_us

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